若者の「テレビ離れ」が進む中、テレビを根強く支持してきた中高年層がNetflixやYouTubeといった媒体に流出し始めている。中高年層はテレビの黎明期から黄金期までを経験し、いわばテレビとともに人生を過ごした。ところが、最近は制作側の方針転換もあり、作り手と受け手の意識の差が拡大している。
テレビとともに過ごした青春時代
NHKのホームページによると、NHKが日本で初めてテレビの公開実験を実施したのが1939年。本放送を始めたのが1953年だった。1958年には受信契約が100万件を超え、1960年にはカラー放送を開始した。
2022年に60歳を迎える人は1962年生まれで、70歳を迎える人は1952年生まれ。ちょうど高度経済成長や東京五輪に合わせてテレビが普及する時期に、幼少期~青春期を過ごした世代だ。
若者の「テレビ離れ」がささやかれる中、中高年層は比較的テレビへの親近感が高いとされてきた。その証拠に、制作側は近年、昭和を懐かしむような番組を好んで作り、放送することが多かった。
テレビのターゲットが変化
ところが、こうした状況が変わりつつある。
経済誌「プレジデント」のオンラインサイトに掲載されたコラムによると、いわゆる「団塊の世代」は一方で「アクティブシニア」とも呼ばれて購買力の高さが注目されてきた。だからこそ、マーケティングの分野でも消費の主役として扱われてきた。
しかし、実際の消費面では、当初に期待されたほどの存在感がなかった。そこで、北野武、タモリといった年配芸能人が前面に出ていた番組では、スポンサー企業がターゲット層の見直しを余儀なくされる。若返りを図る中、それら大物芸能人が第一線を退いていく構図ができあがっているという。
放送される番組が自分たちの世代向けでなければ、見ないのは当然だ。中高年向けコンテンツばかりになって若者が流出し、今度はコンテンツや出演者の若返りに伴って中高年が距離を置く事態になっている。
向かった先がインターネット
今のシニアは、現役時代からパソコンや携帯電話に親しんだ人も少なくない。テレビから離れた世代が向かう先はインターネットだった。YouTubeなら、自分の好きなコンテンツを、自分の好きな時間に、好きな場所で視聴できる。そうしたメリットを、中高年が実感し始めているのだ。
若者を見て分かる通り、この流れは止まりにくい。折しも、新型コロナウイルス禍の長期化によって、特に重症化しやすいとされる年配者にとって外出しにくい状況が続いている。そのような中、これからは中高年がインターネット通販や他のネット媒体に急速に手を広げていくだろうことは、容易に想像できる。
文・MONEY TIMES編集部
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