生命保険大手4社が、新型コロナウイルスに感染した場合に医療保険加入者に支払ってきた入院給付金について、9月26日から入院給付金の支払い対象者を限定すると発表した。この対応に、ネット上では怒りの声が続々と上がっている。

9月26日以降は入院給付金の支払いを65歳以上の高齢者などに限定

入院給付金の支払い対象者を限定すると発表したのは、以下の4社だ。

・日本生命
・第一生命
・明治安田生命
・住友生命

このほかにも、支払い対象者を限定する対応は広がりそうだ。これまで生命保険各社は、医療保険の加入者が新型コロナに感染した際に、自宅やホテルで療養した場合でも、療養証明書などがあれば「入院」とみなして入院給付金を支払ってきた。

ところが、9月26日からは、この「みなし入院」に関して、入院給付金の支払い対象を65歳以上の高齢者などに絞る。具体的に「みなし入院」で給付金がもらえる対象者は、以下の通りだ。

・65歳以上の高齢者
・本来、入院が必要な患者
・妊婦
・新型コロナの治療薬を投与する必要がある患者など

つまり、65歳未満で無症状、または症状が軽い医療保険加入者は、対象から外れることになる。

金融庁の要請で入院給付金の支払総額は急増

そもそも、生命保険各社が「みなし入院」に対しても入院給付金を支払ってきたのは、新型コロナの感染拡大で医療機関がひっ迫する事態を回避するためである。金融庁が2020年春から生保業界に要請してきたからだ。

ところが、金融庁は2022年9月1日に、「みなし入院」に対する入院給付金の支払いについて、支払い対象を見直すように生命保険協会などに要請した。

この措置は、2022年9月26日から全国一律で新型コロナ感染者の「全数把握」を見直し、報告を簡略化する運用に切り替えることと連動している。9月26日から、医療機関が保健所に提出する「発生届」の対象は、重症化リスクが高い高齢者などに限られる。

入院給付金をめぐっては、新型コロナ感染者が増える中で、支払総額が急増している現実もある。生命保険協会に加盟している42社が2022年6月に支払った入院給付金の総額は約640億3,300万円で、前年同月の約12倍だった。そのほとんどを「みなし入院」への支払いが占めていた。

こうした事情も、今回の入院給付金の支払い対象者を限定する対応に影響したと見られる。

不公平、医療機関がひっ迫する…ネット上では怒りの声

もっとも、入院給付金の支払い対象者の限定に利用者が納得しているとは言い難い。

Twitter(ツイッター)上では、「65歳以下は休むと給料が減るのに、年金は休んでも減らない。給付金対象外の範囲、間違っていない?」などと制度の不公平さを指摘する声が上がっている。

「(9月26日までに)必死にコロナにかかって、入院給付金を勝ち取るゲームが始まった」と感染者が増える可能性を指摘する声や、入院給付金欲しさに入院を希望する人が増え、医療機関がひっ迫することを危惧する声も散見される。

「みなし入院」で入院給付金はいくら受け取れる?

実際、「みなし入院」で受け取れる給付金はいくらになるのだろうか。

ニッセイ基礎研究所によると、自宅療養で入院給付金を支払う場合の支払い対象期間は、「新型コロナ陽性と診断された日」から療養期間終了日までとしているケースが多いという。

仮に陽性と診断された日を0日とカウントし、10日目まで自宅療養したならば、支払い対象期間は11日間となる。

加入している医療保険の入院給付金が1日1万円であれば、受け取れる総額は11万円だ。入院に際して一時金が支払われるタイプのものであれば、10万〜40万円ほどを受け取れる場合もある。

入院給付金を不正に請求するケースも

このように、新型コロナの入院給付金で受け取れる額は少なくない。それだけに、不正に入院給付金を得ようとする事例も確認されているようだ。

例えば、高額の医療保険に新規に加入し、加入直後に入院給付金を申請するケースだ。加入時に発熱などの症状がなく、告知義務に違反していなければ問題はない。

ただし、加入時に熱があったり濃厚接触が疑われたりするにもかかわらず、告知義務に反して契約すると、後に契約が取り消される可能性がある。入院給付金をめぐる不正請求も、生命保険会社側は悩ましい問題だ。

支払い対象の見直し、混乱なく移行できるか

生命保険会社が新型コロナに関する入院給付金の支払い対象を限定するのには、入院給付金の支払総額が急増しているなど、一定の理由がある。

とはいえ、支払い対象を限定するばかりに、あえて新型コロナに感染して入院給付金を得ようとする人が増えたり、給付金欲しさに入院を希望する人が増えて医療機関がひっ迫したりすれば元も子もない。今後、混乱なく移行できるかが焦点だ。

文・MONEY TIMES編集部

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