狭い世界で完結しがちの情報収集
——アスリートはどのようなキャリア課題を抱えているのでしょうか。
木村:「自分がやってきたスポーツ以外の仕事ができるのか」「就職先があるのか、ないのか」など、“自分が持ってる能力が活かせるのか”といった点が課題だと思っています。
スポーツ経験のなかで培った能力を自覚していない人や、培った能力をスポーツ以外で活用できることに気付いていない人が多いですね。
——アスリートが自分では気づいていないけれど、仕事を探すときにアピールポイントになるような能力はありますか。
木村:やはり「結果をどういうものにしたいのか」と目標設定をして 「目標を達成するために、どんなプロセスを経たらいいのか」と計画し、実行する能力はどの仕事にも通用するのではないでしょうか。
もちろん、医師や看護師、薬剤師などの専門職は仕事に就いてから、あるいは勉強してなし得る職業だと思うので、その場合は勉強しなければなりません。とはいえ、下地になっているものは、どの職業の人も能力的には一緒だと思います。
ただ、専門的なスキルがなく、スポーツしかやってなかったことが原因で「スポーツ以外の仕事ができないのでは」と悩む人は、やはり多いようですね。その誤解を解いて、背中を押してあげなきゃいけないと感じています。
——アスリートはキャリアに関する情報をどのように収集しているのでしょうか。
木村:基本的には、身近な人たちから話を聞くことが多いようです。スポーツの生活が中心になっていると、ほかのコミュニティとの接点がありません。
今はインターネットで情報を収集できるはずですが、たくさんの情報から取捨選択をすることが難しいので、狭い世界で完結しがちですね。
——現場のスポーツ関係者の問題意識についてはどう考えていますか。
木村:人によって認識が違うのですが、挙げるならコーチや監督が雇い主に求められている成果に応じて、選手に対して話すことが変わるという点でしょうか。
勝利を求められて雇用契約をしているコーチや監督はとにかく勝利を求めるので、勝利以外のことについて関心がない状態になることがあります。
そのため「練習はこうしよう、試合ではこうしよう」と、スポーツに関する話が中心になってしまうのです。
「引退した後、どういう風にしていこうか」「今のスポーツを通じて、引退後にも活かせるようなことを取り入れていこうか」と考える人が少ないのが現状です。