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YouTubeアカウント・チャンネルの売買で想定されるトラブル
YouTubeアカウント・チャンネルの売買で気をつけるべきこと
YouTubeアカウント・チャンネルの売買で想定されるトラブル
ぽな:
現状、YouTubeアカウント・チャンネルの売買そのものに法的・規約的な問題はないとして、実際の売買時に想定されるトラブルにはどのようなものがあるでしょうか?
河野:
まずは著作権の問題ですよね。
チャンネルの譲渡って、契約の性質的に「これまでの動画の著作権も譲渡する」という内容が含まれるものだと思うんですよ。
でも、ここに1つ落とし穴があって。投稿済み動画の二次的著作物や翻案に関する権利についても、きちんと契約書に「それも譲渡します」という旨を書かないと、新しいチャンネルの運営者に譲渡できないんですね。
それをやっていないと、動画の続編を出したり、動画に出てくるキャラクターを使ったりといったことができなくなる。
ぽな:
そうなると、たとえYouTubeアカウントを購入したとしても、今後の運用ができなくなりますよね……。
河野:
そうですね。とくにVTuberやマンガ動画については、著作権関係の問題が多く出てくると思います。
元のチャンネル運営者が、絵師さんから著作権譲渡を受けていなかった場合、利用許諾契約を絵師さんと結んで絵を使わせてもらうわけですけど、チャンネル譲渡があった場合にその契約が新しいチャンネルの運営者に引き継がれるのかどうか……これはケースバイケース、絵師さんとの契約によるとしかいいようがないです。
「マンガやイラスト制作の委託を、引き続き委託先にお願いできる」という形なら、比較的トラブルになりにくいとは思いますが。
ぽな:
チャンネル運営に必要な関係者とのやりとりも大事になってくるんですね。
河野:
また、著作権という視点で考えると、買ったチャンネルの動画に実は第三者の著作権を侵害しているものがあったとか……。これも問題になりやすいケースですよね。
ぽな:
そうですよね。実際、切り抜き動画で、元の動画配信者に許可を取っていなくて、トラブルになるというケースは結構あるみたいです。
河野:
こういったケースでは、買った側も同じチャンネルを運営している以上は「自分は関係ないです」とは言いにくいところもあって、本当にややこしいことになります。
あとはお金、具体的には未払いトラブルですよね。代金を支払ったのに、ID・パスワードを教えてもらえないとか。
YouTubeアカウント・チャンネルの売買で気をつけるべきこと
YouTubeアカウント・チャンネルの売買は違法? 弁護士が解説 YouTubeアカウント・チャンネルの売買は違法?弁護士解説 SPONSORED紀村まり(ぽな)2022.09.29 2022.09.29 YouTube 法律 「YouTubeで稼ぎたい、でも収益化までのハードルが高すぎて……」と困っている方も多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが、YouTubeアカウント・チャンネルの売買です。YouTube側の求める基準を満たしたアカウント・チャンネルを購入することで、すぐに収益化が可能になります。
YouTubeチャンネル運営から引退したい人にとっては、ほしい人にチャンネル売却することでまとまったキャッシュが手に入るというメリットも。
でも、そもそもYouTubeのアカウント・チャンネル売買って、やってもいいものなのでしょうか? 法的問題やYouTube規約違反などの心配はないのでしょうか?
そこで今回は、クリエイターの法律問題に詳しい河野冬樹弁護士に、YouTubeアカウント売買をめぐる問題について伺いました。
河野 冬樹(かわの ふゆき) 河野 冬樹(かわの ふゆき) 法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けにリーガルサービスを提供している。ミステリをこよなく愛する活字中毒者。(Twitter:@kawano_lawyer)
聞き手:ぽな 聞き手:ぽな こたつとお布団、コーヒーをこよなく愛するフリーライター。法学部出身のはずが、なぜか卒論のテーマは村上春樹であった。やれやれ。(Twitter:@ponapona_levi)
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YouTubeアカウント・チャンネルの売買は合法? 違法? YouTubeアカウント・チャンネルの売買は規約違反ではない? YouTubeアカウント・チャンネルの売買で想定されるトラブル YouTubeアカウント・チャンネルの売買で気をつけるべきこと YouTubeアカウント・チャンネルの売買を安全に行うために YouTubeアカウント・チャンネルの相場 売買されやすいYouTubeアカウント・チャンネルの特徴 YouTubeアカウント・チャンネルの売買は合法? 違法?
ぽな:
YouTubeアカウント・チャンネルの売買について検索すると、「問題ない!」「アウトだ!」と意見が入り乱れているようですが、実際どうなんでしょうか?
河野:
現状、いまの日本でYouTubeアカウント・チャンネルの売買そのものを規制する法律はありません。取り締まるものがない以上、合法といえるでしょうね。
あとは、YouTube側との契約・規約の問題ということになります。
ぽな:
法律うんぬんというより、YouTube側の問題なんですね。
河野:
そういうことになりますね!
YouTubeアカウント・チャンネルの売買は規約違反ではない?
ぽな:
では、YouTubeの規約面での問題はないのでしょうか?
河野:
そうですね。売買禁止説の根拠はおそらく、「他人の名前を使ってはいけない」という内容を定めたコミュニティガイドラインにあるのかな、と思います。
下記の説明のいずれかに該当するコンテンツは、YouTube に投稿しないでください。
チャンネルのなりすまし: 他人のチャンネルであるかのように見せかける方法でそのチャンネルのプロフィール、背景、または全体的なデザインをコピーしたチャンネル。別のチャンネルをコピーするという意図が明確であれば、チャンネルが完全に同一でなくてもこれに該当します。
個人のなりすまし: 他人が投稿しているように見せることを意図したコンテンツ。
(出典:YouTube なりすましに関するポリシー)
ぽな:
アカウント・チャンネルのなりすましを禁止する的な感じのアレでしょうか?
河野:
はい。チャンネルを売っているということは、他人の名前を使っているわけだから、このガイドラインに引っかかるだろうと考えて「規約違反」といっている人がいるのかもしれません。
あと、YouTubeではそもそも動画やコンテンツをYouTube上で販売することを禁止しているんですね。その延長でチャンネル売買もダメ!と捉えている人がいる可能性もありますね。
本サービス(編集部注:YouTubeのこと)の利用には制限があり、以下の行為が禁止されています。
本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても、アクセス、複製、ダウンロード、配信、送信、放送、展示、販売、ライセンス供与、改変、修正、またはその他の方法での使用を行うこと。ただし、(a)本サービスによって明示的に承認されている場合、または(b)YouTube および(適用される場合)各権利所持者が事前に書面で許可している場合を除きます。
(出典:YouTube 利用規約)
ぽな:
なるほど。一方で、YouTubeには他のアカウントにチャンネルを移す機能も公式であるんですよね。これは、チャンネルが誰かに譲渡されることを前提とした機能なのかな、と思うのですが……。
河野:
はい。そういう現状もあるので、コミュニティガイドラインや規約から「チャンネル売買を禁止する」と解釈するのはおそらく難しいのではないかと思います。「動画の販売はダメだけど、チャンネルの売買までは禁止していない」と読むのが自然な解釈ではないでしょうか。禁止なら、規約にも直接そう書くと思いますので。
ぽな:
ちなみにYouTube側は、チャンネル売買については明確なコメントを避けているようですが。
河野:
これはYouTube側としては難しいところで、表立って「いい」とはいえないと思います。でも、明確に禁止しているかというと、そうともいえない。今後YouTube側が規約を変える可能性はありますが、現状では問題ないということになるのではないでしょうか。
たとえば、YouTubeのチャンネルを運営している会社が事業を譲渡して、それにともなってチャンネルも新しい会社に譲渡するということもあると思うんです。チャンネルの売買が禁止されていると解釈すると、こういったこともできなくなってしまうわけですから。
その意味でも、売買自体が禁止されていると解釈するのは合理的ではないと思います。
YouTubeアカウント・チャンネルの売買で想定されるトラブル
ぽな:
現状、YouTubeアカウント・チャンネルの売買そのものに法的・規約的な問題はないとして、実際の売買時に想定されるトラブルにはどのようなものがあるでしょうか?
河野:
まずは著作権の問題ですよね。
チャンネルの譲渡って、契約の性質的に「これまでの動画の著作権も譲渡する」という内容が含まれるものだと思うんですよ。
でも、ここに1つ落とし穴があって。投稿済み動画の二次的著作物や翻案に関する権利についても、きちんと契約書に「それも譲渡します」という旨を書かないと、新しいチャンネルの運営者に譲渡できないんですね。
それをやっていないと、動画の続編を出したり、動画に出てくるキャラクターを使ったりといったことができなくなる。
ぽな:
そうなると、たとえYouTubeアカウントを購入したとしても、今後の運用ができなくなりますよね……。
河野:
そうですね。とくにVTuberやマンガ動画については、著作権関係の問題が多く出てくると思います。
元のチャンネル運営者が、絵師さんから著作権譲渡を受けていなかった場合、利用許諾契約を絵師さんと結んで絵を使わせてもらうわけですけど、チャンネル譲渡があった場合にその契約が新しいチャンネルの運営者に引き継がれるのかどうか……これはケースバイケース、絵師さんとの契約によるとしかいいようがないです。
「マンガやイラスト制作の委託を、引き続き委託先にお願いできる」という形なら、比較的トラブルになりにくいとは思いますが。
ぽな:
チャンネル運営に必要な関係者とのやりとりも大事になってくるんですね。
河野:
また、著作権という視点で考えると、買ったチャンネルの動画に実は第三者の著作権を侵害しているものがあったとか……。これも問題になりやすいケースですよね。
ぽな:
そうですよね。実際、切り抜き動画で、元の動画配信者に許可を取っていなくて、トラブルになるというケースは結構あるみたいです。
河野:
こういったケースでは、買った側も同じチャンネルを運営している以上は「自分は関係ないです」とは言いにくいところもあって、本当にややこしいことになります。
あとはお金、具体的には未払いトラブルですよね。代金を支払ったのに、ID・パスワードを教えてもらえないとか。
YouTubeアカウント・チャンネルの売買で気をつけるべきこと
ぽな:
YouTubeアカウント・チャンネルの売買については悪質な方もいるらしくて。実際、チャンネルを高値で売るために再生数やチャンネル登録数を水増しするといったケースもあるようです。
河野:
もしかしたら、「売買は違法だ」と主張している方は、そういった悪質なケースを念頭に置いているのかもしれませんね。
売買されたチャンネルに問題がないか、トラブルが起きた際に元の運営者と連絡が取れるか、といった点には気をつけたほうがいいと思います。
ぽな:
買う側も事前に調査して、慎重に売買する必要がありそうですね。
河野:
そうですね。あと、これまで買う側の話をしてきましたが、売る側にもリスクはあるんですよ。チャンネルの名前って自分の分身、お店の看板のようなものなので、それを売るということはリスクがある。
たとえば、アカウントを売った相手が悪い人で、そのアカウントを使って詐欺まがいの行為を働いた場合。これは、元のチャンネルを運営していた人の信用問題にもなりかねないわけです。
ひどい場合には、元の運営者も責任に問われるということもあるかもしれません。まだ裁判例があるわけではないのですが、これから問題になる可能性は十分にあると思います。