2022年8月、全国に「脱毛ラボ」を展開する「セドナエンタープライズ」が東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。債権者は一般会員を中心に約3万人おり、会員が前納した施術代は返還の見込みが小さいという。振り返ると、消費者を激怒させた倒産劇はこれまで何度もあった。
施術代の返還は見込みにくい
東京商工リサーチによると、往時のセドナエンタープライズは全国に80店以上の脱毛サロンを展開し、若い女性を中心に支持を得ていた。2017年6月期の売上高は75億円を超えたものの、内実は広告費がかさんで赤字を計上し、同時点で24億円以上の債務超過だった。
2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、店舗の休業や営業時間短縮を余儀なくされた。起死回生の一手として家庭用美容器のEC(電子商取引)事業に参入したが、消費者庁から景品表示法違反で措置命令を受け、信用を損なった。ここに来て売り上げの減少もあって資金繰りが厳しくなり、事業継続を断念した。
負債総額は約60億円。セドナエンタープライズの公式サイトによると、予約は全てキャンセル扱いになるという。すでに納められた施術代の返還請求権は配当手続きで返金に至る仕組みになる。ただ、現有の資産を換金しても、配当で会員に返還できる可能性は低いという。
また、施術代をクレジットカード決済で分割払いにしている場合は、今後も支払いを続けなければいけないとされている。
これはそもそもカード会社が会員(契約者)に代わってセドナエンタープライズ側にすでに支払いをしてしまっているため、会員はセドナエンタープライズではなくカード会社に対して支払い債務を負っている。よって、セドナエンタープライズが倒産したことを理由に支払いをやめられないという理屈だ。
「社員は悪くありません」
企業の倒産と聞き、思い浮かぶ会社は世代により異なるだろう。そのような中、今の30代以上で一貫して記憶が色濃いだろう事案の1つは、1997年11月、当時は四大証券会社の一角だった山一證券が経営破綻したことだろう。大手証券会社の社長が会見し、カメラの前で「社員は悪くありませんから」と泣きじゃくる姿は社会に衝撃を与えた。
20年後の2017年に当時を振り返った朝日新聞の記事によると、破綻の原因は約2,600億円に上る「簿外債務」だった。バブル経済が崩壊してから株価が下落する中、顧客の有価証券の含み損が表面化しないように損失を簿外に隠し、虚偽の有価証券報告書を作成していた。問題を隠し続けたものの、表面化とともに自主廃業に追い込まれた。
バブル期に初めて株式に手を出した一般消費者も多かったはず。全国の支店では取り付け騒ぎが起きた。もっとも、現場の社員も自社の不正は寝耳に水で、自主廃業発表の翌日から残務整理に追われた。顧客それぞれに事情を説明し、いったん帰宅してもらってから順に対応したという。
多くの消費者にとって証券会社よりも身近であろう百貨店業界では、2000年7月、大手百貨店そごうグループが経営破綻した。
そごうといえば、かつては売上高で日本一に上りつめた流通大手。破綻の背景には新規出店した土地を担保に融資を受け、それを次の出店に充てて再び融資を引き出す手法が、地価の急落で行き詰まったことにある。そごうは西武百貨店と業務提携。民事再生法の手続きを経て、現在はセブン&アイ・ホールディングス傘下で営業を続けている。
成人式に振袖が来ない
記憶に新しいところでは、着物レンタルの「はれのひ」の騒動がある。「はれのひ」は2008年に個人創業し、2013年から店舗網を拡大。ところが、2016年から一部仕入れ先への支払いが遅れ始めた。2017年夏からは従業員への給与支払いも遅れ始め、従業員の退職が続いたとされる。後に粉飾決算が明らかになっている。
そして、「はれのひ」は成人の日に当たる2018年1月8日、突如として休業。翌9日に事業を停止したため、成人式で着ようと予約していた客のもとに振袖は届かなかった。同26日には横浜地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。休業直後は社長の所在が分からず、「夜逃げ」「詐欺」との声が上がった。実際、金融機関から融資金をだましとったとして、社長は詐欺の有罪となっている。
2017年3月には、旅行会社「てるみくらぶ」が破産手続きに入っている。負債総額は151億円と旅行業としては、戦後第4位の規模の倒産劇だった。
「てるみくらぶ」は1998年創設で、主に若者向けの海外パックツアーを格安で提供してきた。当時の社長の説明では、大型航空機の余った座席を安く活用する形で割安な料金を設定してきたが、航空機の小型化が進んで余剰席がなくなり、事業に行き詰まったらしい。航空会社から直接チケットを買う若者が増える中、高齢層に目先を移して広告などを打ったが、費用がかさむ割に成果が乏しかった。
最終的には、「てるみくらぶ」の手配で海外に行ったものの、支払い済みのはずのホテル代を請求されたり、帰りの航空チケットがなかったりというトラブルが起こるようになった。
消費者としての倒産の察知はかなり難しい
こうして見ると、企業は規模や業態にかかわらず、急につぶれることがあると分かる。同時に、残念ながらそれを一消費者として察知するのがとても難しいことも分かる。そのような中、せめて消費者として、できる限り細心の注意を払って企業を観察し、十分に納得できる形で代金を支払うことを心掛けたい。
文・MONEY TIMES編集部
【関連記事】
・サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
・退職金の相場は?会社員は平均いくらもらえるのか
・後悔必至...株価「爆上げ」銘柄3選コロナが追い風で15倍に...!?
・【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
・1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!