韓国で急速なウォン安ドル高が進んでいる。2022年9月下旬時点の為替レートは1ドル=1,400ウォン前後で推移し、2009年以来の低水準である。同じ東アジアに位置する日本でも、円は対ドルで下落基調にあり、アジア各国の通貨が軒並み安値水準だ。

1年半で3割の下落

韓国の通貨であるウォンは、新型コロナウイルス感染が世界的に拡大し始め、しばらくは少しずつ下落し、2020年5月に1ドル=1,200ウォン台となった。それを境にトレンドが反転して対ドルで上昇を続け、2020年11月には1ドル=1,084ウォンの高値を付けた。

ところが、2021年に入ると、再びウォン安基調が強くなり、2022年に入って1ドル=1,200ドル台を突破。そのまま1,300ドル台に突入し、1,400ウォン前後で推移する状況となっている。

この間、韓国市場の株価も低調な動きだ。韓国総合株価指数(KOSPI)は2021年6月25日に史上最高値を更新し、場中で3316.08ポイントの高値を付けた。しかし、その後は長期の下落トレンドに入り、2022年7月4日には安値2276.63ポイントを記録した。最高値からの下落率は3割を超えており、その後も安値を更新しそうな展開である。

一方、日本円は対ドルで2020年末から2021年初頭にかけて1ドル=103円前後の水準で横ばいだった。しかし、その後、じわりじわりと円安方向に動き出した。2022年3月からは半年間で30円の急落となり、2022年9月には1ドル=140円台が定着している。

そのような中、日本では毎日のように「円安」「物価高」のニュースが流れている。この状況は韓国でも同様のようで、現地のマスコミは止まらないウォン安に伴う外国為替当局の動きなどを報じている。

金融緩和の縮小も下落

それでは、なぜアジアで通貨安が進行しているのか。

新型コロナウイルス禍では、各国が経済へのダメージを抑えるため、金融緩和政策によって世の中に出回るカネの量を増やした。その後、感染拡大の落ち着きと経済活動の回復ぶりを見て、各国は緩和の縮小(引き締め)に動き始める中、日本はそうした流れに逆行して金融緩和を継続している。

政策金利を引き上げて金融引き締めを行うと、その国の国債の利回りが上昇する。例えば、日本国債を買うよりも、金融引き締めによりインフレを抑制しようと動いているアメリカ国債を買うほうが金利を多くもらえるので、資金は日本からアメリカへ流れる。

だから、緩和策をとったままの日本の通貨は人気がなくなり、他国の通貨と比べると安くなる。今の日本の円安は、このメカニズムに従っているところがある。

それでは韓国も同じ背景なのかというと、そうではない。韓国は2021年8月以降、断続的に利上げに動いており、日本とは政策のスタンスが大きく異なる。どちらかというと、各国の流れに沿っているのだ。

一般的に、金利を上げると企業は返済の負担が増すことから借り入れをためらう。その結果、借入金を活用した設備投資を尻込みするようになり、経済成長が鈍化したり、景気が停滞したりする可能性がある。韓国の中央銀行は2022年7月に大幅な利上げに踏み切ったものの、景気の不透明感が強まる中、8月には利上げ幅を縮小させている。

人民元とウォンが連動

2022年9月6日に韓国の通信社「聯合ニュース」が配信した記事によると、最近のウォンは、中国の通貨「人民元」に連動して動く傾向があるという。

人民元は2020年5月から対ドルで上昇傾向に入ったが、2022年2月には1ドル=6.3人民元の水準で推移すると反転。2022年9月時点では、1ドル=7人民元を超えて下落している。これは2020年夏と同水準となる。

日本の外務省の公式サイトによると、韓国は輸出、輸入とも最大の貿易相手国が中国である。長期的には、中国の状況に引っ張られる面もあるようだ。

「アジア通貨危機と酷似」

ウォール・ストリート・ジャーナルが2022年9月21日に配信した記事によると、一部のアナリストや投資家は、歯止めのきかないウォン安を、韓国などから資金が流出して市場が不安定化した1997~98年のアジア通貨危機と酷似していると警戒している。

資金の流出が続けば、韓国では通貨や株式、債券に新たな圧力がかかる。ウォンが他の通貨と比べて相対的に弱くなることは、商品の輸入コストはウォンベースだと上昇することになる。家計にとっては支出が増大し、企業にとっては資金調達の負担が高まることにつながる。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、韓国は家計や企業の債務が多く、中央銀行がインフレ抑制や通貨を支えるために、さらに積極的に政策を引き締めることは難しい。アメリカが強硬に「インフレ退治」を主張して利上げに踏み切る中、その政策スタンスの違いや中国依存度の高さなどから、難しいかじ取りを迫られているのが韓国なのだ。

文・MONEY TIMES編集部

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