会社員にとって毎月の生活の基になるのが、給料の手取り額。しかし、10月からその手取りが減少するという。これは、雇用保険料の増加が原因だ。

今回は、10月から始まる雇用保険料の増加で手取りがどうなるのか解説する。

そもそも雇用保険とは

はじめに、そもそも雇用保険とはどのようなものかを簡単に見ていこう。

雇用保険とは、労働者のための保険である。具体的には、労働者が支払った保険料を使って次のような事業を行っている。

・労働者が失業した場合に、労働者が安心して生活できるように失業保険を給付する
・雇用を安定するために、育児休業給付を行う
・就職の促進のために職業訓練を行う

どれも、労働者にとっては重要な事項である。雇用保険は、労働者自身が上記の給付などを受けるために、互助的に毎月の給料から天引きという形で支払っている。

雇用保険の仕組み

雇用保険は、労働者が安心して働くために重要な保険である。雇用保険の仕組みを知るためには、加入義務者と計算方法を理解することが必要だ。それぞれについて、詳しく見ていこう。

雇用保険の加入義務者

雇用保険の加入義務者には、事業所(会社)と被保険者(従業員)それぞれに次の要件を満たす必要がある。

要件
事業所 適用事業所:法人は強制加入※、個人事業主の場合は従業員5人以上
任意適用事業所:従業員5人未満の個人事業主であっても、
従業員の2分の1以上の賛成があれば、雇用保険に加入を申請しなければならない
被保険者 下記のいずれかに該当する場合
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
※農林水産の事業のうち一部の事業を除く

加入義務者の要件を見ると、多くの会社や従業員が、雇用保険に加入する義務があることが分かる。例えば、会社員(正社員)だけでなく、パートやアルバイトの多くも雇用保険に加入する必要がある。

雇用保険の計算方法

次に、雇用保険料の計算方法について見ていこう。雇用保険料は、次の計算式で求める。

雇用保険料=給料支給額(交通費を含む)×雇用保険料率

雇用保険は、雇用主と従業員の両者が負担することになっているため、それぞれで保険料率が定められている。2022年9月までの雇用保険料率は、次の通り。

事業の種類 従業員負担 会社負担
一般の事業 3/1,000 6.5/1,000
農林水産業・清酒製造業 4/1,000 7.5/1,000
建設の事業 4/1,000 8.5/1,000

例えば、毎月の給料が40万円(交通費を含む)の場合、雇用保険料は次のようになる(一般の事業の会社勤務の場合)。

雇用保険料=給料支給額40万円×雇用保険料率3/1,000=1,200円

1,200円は、あくまで1ヵ月の給料に対する雇用保険料のため、年間にすると1,200円×12ヵ月=14,400円になる。また、賞与がある場合は、雇用保険は賞与からも徴収されるので注意が必要だ。

10月から雇用保険料が増加する!

実は、2022年10月から、雇用保険料が増加する。2022年10月以降の雇用保険料率は、次の通り。

事業の種類 従業員負担 会社負担
一般の事業 5/1,000 8.5/1,000
農林水産業・清酒製造業 6/1,000 9.5/1,000
建設の事業 6/1,000 10.5/1,000

2022年9月までと比べて、従業員・会社どちらも保険料率にして2/1,000の負担が増加したことになる。

例えば、上記と同じく毎月の給料が40万円(交通費を含む)の場合、雇用保険料は10月以降、次のようになる(一般の事業の会社勤務の場合)。

雇用保険料=給料支給額40万円×雇用保険料率5/1,000=2,000円

9月までよりも雇用保険料が800円増加する。つまり、その分の手取り額が減少することになる。年間にすると、800円×12か月=9,600円の手取り額が減少する。また、賞与がある場合は、賞与分の雇用保険料も同様に増加するため、注意が必要だ。

今後も雇用保険料の引き上げに注意

2022年10月から雇用保険料率が引き上げられるため、給料の手取り額はその分減少となる。

実は、雇用保険料は過去にも少しずつ引き上げが行われてきた。今回の雇用保険料率も2022年3月31日までのものであるため、それ以降に雇用保険料率がさらに引き上げられる可能性もある。今後も、雇用保険料の引き上げに注意が必要だ。

文・はせがわあきこ

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