中国のアフリカ支援をめぐっては、「債務のわな」「新植民地主義」などとさまざまな問題点が指摘されている。にもかかわらず、中国のアフリカ支援は勢いを増している。その背景には、アフリカの独裁者の心理を巧みに利用する中国ならではの外交戦術があった。
支援対象国を借金漬けにする「債務のわな」
中国のアフリカ支援に関して、指摘されている問題点の1つが「債務のわな」だ。
これは、国際援助として中国の融資を受けた国が債務の返済に行き詰まり、結果としてインフラの権益を譲り渡したり、軍事的な協力を行ったりする事態に追い込まれることだ。
例えば、ヨーロッパとアジア、アフリカを結ぶ紅海の出入り口に位置する海上交通路の要衝、ジブチは中国に対して国内総生産(GDP)比で4割に上る債務を抱えている。ジブチには中国軍の基地が建設された。
このように、支援対象国を借金漬けにし、自国に有利に従わせるような中国の方法に対しては、「新植民地主義」との批判が上がっている。
コロナ禍でも中国の対アフリカ投資は増加
ところが、中国のアフリカ投資は衰えていない。
新型コロナウイルスの感染拡大で2020年は世界的に対外直接投資が落ち込む中、中国の投資額は1,329億ドルで、前年比で増加した。
アフリカに対する投資額も2019年の27億ドルから2020年は42億ドルまで増えており、中国だけで世界全体の対アフリカ投資の11%を占めた。
中国のアフリカ支援が拡大している理由
問題が指摘されているにもかかわらず、中国のアフリカ支援が拡大しているのには、いくつかの理由がある。
独裁国家でもお構いなし
1つ目は、中国がアフリカの国を支援するに際し、政治的な条件をつけていないことだ。
アフリカには今なお、独裁国家は存在する。そうした独裁国家では腐敗が横行し、深刻な人権侵害も起きている。欧米や日本などの民主主義国は、そのような独裁国家に対する経済支援には慎重だ。
ところが、中国は独裁政治や人権侵害を問題視していない。欧米や日本から支援を得られない独裁国家にして見れば、中国は数少ない大口の支援提供国というわけだ。
インフラ建設などでの価格競争力
インフラ建設などを中国が安く受注していることも、アフリカ支援を拡大している理由の1つだ。なぜ、中国によるインフラ建設は欧米や日本と比べて安いのか。
そのからくりの1つが中国からアフリカへ送る大量の労働者だ。中国はインフラ建設などを受注すると、現地の労働者を雇用するのではなく、本国から安価な労働力をアフリカ大陸へ大量に送り込んでいる。
アフリカはまだまだインフラが未整備な一方、大卒者の給与は高い。自国から人件費が安い労働者を現地に送ったほうが割安だという。
もっとも、自国から労働者を送る方法では、現地の雇用環境の改善に役立たないばかりか、技術の移転も進まない。中国資本が手がけるインフラの質が低いことも問題視されており、完成直前に橋が崩落するなどトラブルが相次いでいる。
娯楽で民衆の反感をそらす独裁者
それでもなお、インフラ建設の受注となると、中国は強い。特に独裁国家に関しては、欧米や日本が手を出しにくいだけでなく、中国は独裁者の心理を巧みに利用してアフリカへの進出を拡大している。
その手法がインフラ建設とあわせて行うスタジアムの建設だ。スタジアムは権力者の威勢を示す象徴となるだけでなく、国民に娯楽を提供する。
独裁者の権力基盤は強固なようで、実はもろいところがある。ひとたび国内世論の反感を買い、大規模なデモなどが起きれば権力の座は危うくなる。政情が不安定化すれば、クーデターにもつながりかねない。
政情不安を回避する方法として、古くからとられてきた手法が「パンとサーカス」だ。パンは食料、サーカスは娯楽を意味し、この2つがそろっていれば権力者は民衆を統治しやすい。
特に娯楽の提供は為政者に向かう民衆の反感をそらすのにうってつけで、アフリカはサッカー熱が高い。中国はスタジアムの建設を約束することで、独裁者の心をくすぐっているのだ。
中国は「最悪の独裁者」とも蜜月関係
例えば、中国はアフリカ南部の国ジンバブエと蜜月関係を築いてきた。ジンバブエといえば、「最悪の独裁者」とも呼ばれたムガベ氏が2017年に失脚するまで独裁政治を続けてきた。
中国はジンバブエに対して、国際空港や国防大学の建設、さらには軍事的な支援も行ってきた。その中にはもちろん、スタジアムの建設も含まれている。
失われる日本企業のビジネスチャンス
中国はあの手この手を使ってアフリカへの支援を拡大させている。インフラの質や雇用の問題など、中国が手がける開発の手法にはさまざまな批判が向けられている。しかし、有効な対策を打たなければ、日本企業のビジネスチャンスは失われていくばかりではないだろうか。
文・MONEY TIMES編集部
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