米アップルが開発を進めている自動運転に関する企業秘密を盗んだとして、米連邦捜査局(FBI)が逮捕、起訴した中国人技術者が司法取引で罪を認めた。中国による先端技術の盗用は今に始まったことではない。問題になっている中国の盗用事例をまとめた。

アップル自動運転車の技術文書をダウンロード

まずは今回の、アップルの自動運転に関する企業秘密窃盗事件を振り返る。

FBIに逮捕、起訴されたのは中国人技術者の張暁浪被告で、張被告は2015年12月にアップルに入社した。アップルは「プロジェクト・タイタン」と名付けた完全自動運転システムの開発を進めており、張被告は自動運転車のハードウェアとソフトウェアを開発するチームに加わった。

張被告は2018年4月に育児休暇を取得して中国に一時帰国した。中国から戻ると、母親の看病を理由に退職を申し出て、帰国後は中国の新興企業「小鵬汽車」に入社すると告げた。

不審に思った当時の上司がアップルのセキュリティーチームに通報。アップルが会社貸与のスマートフォンなどを回収して調査したところ、秘密情報のデータベースにアクセスし、自動運転車のプロトタイプに関する技術文書のファイルをダウンロードした疑いがあることが分かった。

FBIが張被告を逮捕したのは2018年7月で、張被告は2022年8月、司法取引に応じて罪を認めた。小鵬汽車は「当社は事件とは無関係だ」と主張している。

日本で起きたヤマザキマザック事件

これと同じような事件は、日本でも起きている。

2012年3月、愛知県警は工作機械大手ヤマザキマザックの秘密情報を複製したとして、当時社員だった中国人を不正競争防止法違反容疑で逮捕した。

この中国人は2012年3月に「中国に住む父親の体調が悪い」と退職を申し出て、その後に本社のサーバーコンピューターにアクセスし、営業秘密の図面情報を私物のハードディスクに複製した。

退職が決まった後に大量のデータをダウンロードしていることを同僚が不審に思い、事件が発覚した。

ポケモンのモバイルゲームはキャラクター丸パクリ

中国による技術などの盗用をめぐっては、中国で配信されているモバイルゲーム「Pocket Monster Reissue」(日本語で「ポケットモンスター復刻版」)も問題になっている。

「Pocket Monster Reissue」には、日本でおなじみのポケモンキャラクター、サトシやピカチュウなどと同一と思われるキャラクターが登場する。

しかし、ポケモン関連事業を展開する日本の株式会社ポケモンには許可を取っておらず、株式会社ポケモンは同ゲームの開発にかかわった中国企業6社に対し、5億元(約103億円)の損害賠償を求める訴訟を起こした。

「Pocket Monster Reissue」は2015年から配信されており、最初1年の総売上高は約3億元(約62億円)に上った。株式会社ポケモンは賠償金だけでなく、人気ウェブサイトやSNS上などでの謝罪も要求している。

シャインマスカットの種苗流出で年間損失額は100億円超

中国が盗用するのは工業製品やゲームといったソフトばかりではない。日本の果物農家を悩ませているのが種苗流出の問題だ。

30年以上の開発期間を経て、シャインマスカットは高級フルーツとして知られるようになった。日本では1房数千円から、高い場合で1万円を超えるものもある。

シャインマスカットの種苗が中国に無断で持ち出され、現地で栽培されているのだ。栽培規模はすでにオリジナルの日本を上回り、栽培面積は2020年時点で日本の30倍に相当する5万3,000ヘクタールに達している。

日本であれば数百円では手に入らない高級マスカットも、中国で大規模生産され市場に流れれば破格の価格となる。日本で登録されている商標名を無断で使用するあり様だ。

こうした損失額を合計すると年間で100億円以上に上るといい、種苗の流出も深刻な問題になっている。

最新ステルス戦略爆撃機も盗用か

中国の技術盗用は軍事分野にも及ぶ。

中国が開発を進めている最新ステルス戦略爆撃機「轟-20(H-20)」は、外観が米空軍のステルス戦略爆撃機B-2にうり二つだと指摘されている。

どちらも胴体部がなく、1枚の主翼によって機体が構成される全翼機と呼ばれる作りだが、B-2の初飛行は1989年、運用開始は1997年とかなり古い。

米軍関係者は諜報活動やハッキングなどによって米国から秘密情報を盗み出し、開発・製造に転用したと見ている。中国のステルス戦闘機「殲-31(J-31)」も、米ロッキード・マーチン製のステルス戦闘機F-35の技術を盗用したと指摘されている。

重要技術の盗用を防ぐ対策急務

中国による盗用は種苗からゲーム、はては軍事技術に至るまで広範に及ぶ。今後、こうした盗用が行われない保証はなく、開発に費用を投じてきた重要な技術などをいかに守るのか、対策が求められている。

文・MONEY TIMES編集部

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