住みなれた街を歩いているときに、いつも前を通り過ぎるだけの客のいない小さな電気店を見て、「なぜこの店はつぶれないのか」と思ったことはないだろうか。電器屋に限らず、街中の古びた小さな商店がつぶれないのには、それなりの理由とからくりがある。

地域に根差す街の電器屋

「〇〇電器」などと看板を掲げ、店内には洗濯機やエアコン、丸型の照明が無造作に置かれている——。客らしき姿を目にとめるのはまれで、いつも閑古鳥が鳴いているように見える——。こうした小さな街の電器屋は、どのようにして収益を上げているのだろうか。

もちろん、店内に雑然と並ぶ電気製品の売り上げだけで商売を維持しているわけではない。むしろ、街の電器屋は商機を店の外に見いだしている。

街の電器屋が重視しているのは、地域に暮らす常連客との関係だ。大型の家電量販店が増え、個人経営の商店が姿を消しつつあるとはいえ、誰もが大型店だけで買い物をしているわけではない。

地域の中には大型店まで足を運べず、買い物に苦慮している高齢者もいる。そうした高齢者らが頼りにしているのは街の電器屋。頼まれれば、電球1つでも自宅まで持って行き、取り付けまで済ましてしまうのだ。

電球1つで大きな利益は生み出せないが、自宅を訪問した際に身の回りの困ったことなどをつぶさに聞く。調子が悪い電子レンジは修理するのがよいのか、買い替えるのがよいのか、親身に話を聞いて解決策を提案し、次の商機につなげているのだ。

大口の顧客を持つ文房具店

昔ながらの文房具屋も、そのビジネスモデルが気になる「つぶれそうでつぶれない店」の1つだ。

鉛筆や消しゴムなどの値段は高いものではなく、文房具はそれほど頻繁に買い替えるわけでもない。ましてや文房具屋が客で混み合うこともまれで、こうした文房具屋は何で稼いでいるのか。

つぶれない文房具屋の共通点の1つが、大口の顧客を持っていることだ。通っている学校の近くに古びた文房具屋があったことを記憶している人もいるだろう。こうした店は、学校に商品を卸しているケースが多く、一度にある程度のまとまった取引が可能である。

企業や役所も重要な取引先だ。銀行を訪れた際に、「◯◯銀行」とラベルされたボールペンやメモ帳がカウンターなどに置かれていることがある。

こうした文具の製造を企業と契約できれば、安定した収入源になるだろう。役所などが作るクリアファイルをはじめとするノベルティの受注も貴重な収益機会だ。

大型スーパーの近くでも生き残る青果店

大型スーパーの近くで営業を続ける青果店もある。もちろん、独自の仕入れルートでオーガニック野菜などを取りそろえ、大型スーパーと差別化して顧客を集めているケースもあるだろう。

しかし、見かける青果店や八百屋の全てがそのような業態ではない。価格や商品の品ぞろえにそれほどの違いが見当たらないにもかかわらず、そうした店が生き残れているのはなぜか。

街中の青果店や八百屋の中には、飲食店と契約して日々野菜を納入している店もある。店舗以外に倉庫も兼ね備え、営業終了後の飲食店から送られてくる発注に基づいて、すぐに商品を納入するのだ。

中には400の飲食店と契約をし、年商10億円を上げている青果店もあるという。

和菓子店は高齢者施設や斎場に商品を納入

つぶれそうでつぶれない店はまだまだある。近所に「ここはもうかっているのだろうか」と心配になる和菓子店はないだろうか。

食べてみると、確かにおいしい。味も価格も納得できるものだ。しかし、客足はまばらで繁盛している様子もない。

和菓子店を続けられる理由の1つとして、和菓子が洋菓子に比べて原価率が低いことが考えられる。一般的に、和菓子のほうが洋菓子よりも少ない機材で作れて、牛乳や生クリームなどをあまり使わないために商品が長持ちする。

賞味期限の長さは贈り物に向いており、通信販売を展開している和菓子店もある。高齢者施設や斎場、学校などと契約し、定期的に商品を納入できれば、安定した収入機会を得られる。

街のカーテン販売店は窓の数だけもうかる?

街のカーテン屋のビジネスモデルも気になるところだ。

カーテンは一度買えば、そうそう買い替えるものではなく、あまりもうかるようには思えない。しかし、新築戸建てが一軒できると、窓の数だけカーテンはもうかるといわれる。リフォームなどで内装とあわせて受注すると、一度に数十万円単位で契約できることも珍しくない。

大型マンションができる際のオプション販売会なども、まとまった契約がもらえる収益機会だ。

表から見ているだけでは分からない

「つぶれそうでつぶれない店」が生き残っているのは、表から見ているだけでは分からない地域とのつながりや独自のビジネスモデルがあるからだ。

そうした店の前を通り過ぎる際にふと、どのようなからくりがあるのかと想像してみるのも面白いかもしれない。

文・MONEY TIMES編集部

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