2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会をめぐる汚職事件で、複数の企業幹部や政府関係者の関与が明らかになっている。事件の経緯や東京大会のスポンサー企業についてまとめた。
五輪組織委汚職事件とは
2022年8月、東京五輪大会組織委員の高橋治之元理事が受託収賄容疑で東京地検に逮捕された。紳士服大手「AOKIホールディングス」や出版大手「KADOKAWA」の幹部らも贈賄容疑で逮捕され、その他の企業に関する捜査も報じられている。
事件をめぐる捜査・逮捕の経緯
事件の発覚から2022年9月11日現在までの捜査状況を振り返る。
元理事とAOKIホールディングス側を贈収賄容疑で逮捕
2022年7月、高橋元理事が代表を務める会社が、大会スポンサーのAOKIホールディングス側から金銭を受け取った疑惑があり、東京地検特捜部が捜査を進めていることが報道各社によって報じられた。
その後8月17日、高橋元理事が受託収賄容疑で、AOKIホールディングスの創業者で前会長の青木拡憲氏ら3人が贈収賄容疑で逮捕される。いずれも9月6日起訴された。起訴状によると、高橋元理事は2017年、五輪のスポンサー選定やライセンス商品の製造・販売に有利な計らいを受けたいとAOKIホールディングス側から依頼され、計約5,100万円の賄賂を受け取ったとしている。
高橋元理事は広告大手「電通」で顧問、専務を務めた。組織委は「専任代理店」として電通にスポンサー集めを受託していた。
KADOKAWA関係者も逮捕
高橋元理事は起訴された同日、KADOKAWAから計約7,600万円の賄賂を受け取った疑いで再逮捕された。同社の顧問が贈賄容疑で、同社から送金を受けたとされるコンサルティング会社「コモンズ2」の社長も受託収賄容疑でそれぞれ逮捕された。
高橋元理事側への金銭の流れは、AOKIホールディングスをめぐる贈収賄の「AOKIルート」だけでなく、「KADOKAWAルート」の疑惑もあぶり出された形だ。
森喜朗元首相を参考人聴取と報道
9月9日には、東京地検特捜部が、元首相で組織委元会長の森喜朗氏に参考人として事情を聴いていると報道された。首相経験者の聴取は異例の事態だ。
家宅捜索を報じられた企業も
逮捕・起訴された関係者らの他にも、東京地検特捜部による複数の企業の家宅捜索や任意事情聴取が報じられている。7月には大会のスポンサー集めを請け負っていた電通や、広告代理店の「ADKホールディングス」の捜索が、9月には広告会社「大広」と駐車場サービス事業の「パーク24」の捜索がそれぞれ報道された。
事件の影響は?
今回の事件によって、どのような影響が及んでいるのか。
業界2位のAOKI、ブランドイメージに傷も
紳士服業界で「青山商事」に次ぐ第2位の座にあるAOKIホールディングスは、紳士服の他にもブライダル事業「アニヴェルセル」やカラオケ店「コート・ダジュール」など、幅広い分野で事業を手がけている。前会長らの逮捕によってこれらの商品やサービスのイメージを大きく損ないかねない。
2030年冬季五輪札幌誘致に悪影響か
札幌市は2030年冬季オリンピック・パラリンピックの招致を目指している。しかし、東京五輪をめぐる今回の事件が、招致に悪影響を及ぼすのではないかと懸念されている。
札幌市の秋元克広市長は、国際オリンピック委員会(IOC)の訪問を9月に予定していたが、日程の調整がつかなかったことを理由に中止した。東京大会の事件発覚後、札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は大会運営の透明性・公平性確保の決意を示した「宣誓文」を公表している。
五輪の「スポンサー企業」とは
今回の事件では、五輪組織委側とスポンサー企業である「オフィシャルサポーター」のAOKI・KADOKAWAとの間の「カネ」の流れが問題になった。五輪のスポンサー企業とは、どのようなものなのか。
五輪のスポンサー企業には、大会の呼称・映像などの使用や、会場でのプロモーション活動の権利が与えられている。IOCと契約する「ワールドワイドオリンピックパートナー」や、組織委との契約である「ゴールドパートナー」などランクがあり、権利の利用に差がある。ただし、東京大会では、ワールドワイドオリンピックパートナーとゴールドパートナーは同列に扱われた。
東京五輪での国内スポンサーは68社あり、ランクと企業の一例は以下の通りだ。
呼称 | 企業例 |
---|---|
ワールドワイド オリンピックパートナー |
トヨタ自動車、パナソニック、 ブリヂストン、コカ・コーラ、P&Gなど |
ゴールドパートナー | エネオス、三井不動産、NEC、日本生命など |
オフィシャルパートナー | 味の素、JTB、ANA、リクルートなど |
オフィシャルサポーター | AOKI、KADOKAWA、パーク24など |
続く捜査、全貌解明に期待
IOCが2020年の夏季五輪の開催地を東京に選定し、発表したのは、2013年9月だった。56年ぶりの東京開催決定に喜び、期待を膨らませた瞬間を、つい最近のことのように思い出せる人も多いだろう。
コロナ禍による開催延期の試練もあったが、日本全体にとって忘れられない出来事となった。今回の汚職事件は、その記憶に大きな汚点をつけることになる。華やかな祭典の舞台裏で、「五輪マネー」をめぐってどのような問題があったのか。捜査は続き、全貌の解明が急がれる。
文・MONEY TIMES編集部
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