ここ数年で、日本を支える巨大企業の工場閉鎖や縮小などのニュースが増えている。本記事で、有名企業の工場閉鎖の理由や、日本を代表する企業の最新動向、コロナ禍の飲食店など、近年の経済関連ニュースをまとめて確認しよう。

有名企業の工場閉鎖の発表が相次ぐ

JT、キユーピー、ホンダ、京セラ……。2021年、有名企業の工場閉鎖の発表が相次いでいる。新型コロナウイルスの影響だろうか。各社の工場閉鎖の理由に迫る。

理由1:工場の老朽化

日本では1950〜1970年代の高度経済成長期に製造業が大きく発展し、この時期に設立され現在も稼働している工場は少なくない。しかし操業開始から時間が経つと、工場の経年劣化は避けられない。

キユーピーが閉鎖する挙母工場は1958年に設立され、操業開始からすでに60年以上が経過している。日本では、今後も老朽化を理由とする工場閉鎖が相次ぐだろう。

理由2:市場の変化

自動車業界には、電動化の波が押し寄せている。現在主流のガソリン車は減り、環境に配慮したEV(電気自動車)が普及するだろう。このような市場の変化によって、ホンダの栃木県真岡市の工場も閉鎖に至ったのだ。

JTの田川工場閉鎖の背景も、たばこ市場の縮小だ。市場の変化や消費者のニーズの移り変わりによる工場の閉鎖は、企業によっては避けられないだろう。

鍵となるのはモバイル事業 赤字が続く楽天グループ

楽天グループが3期連続で赤字を計上している。多くのユーザーを有し、「楽天経済圏」とも呼ばれるほどさまざまなサービスを展開している同社だが、モバイル事業が足を引っ張っている状況で、モバイル事業の営業損失が拡大している。

楽天は2017年末にモバイル事業への参入を発表し、2018年から本格的に事業展開を開始した。楽天は決算説明会の資料として、モバイル事業の営業損失額を投資家に向けて公開している。営業損失額の推移は以下のとおりだ。

<モバイル事業の営業損失の推移>
2019年12月期第4四半期 ▲315億2,400万円
2020年12月期第1四半期 ▲354億0,700万円
2020年12月期第2四半期 ▲538億2,500万円
2020年12月期第3四半期 ▲614億5,000万円
2020年12月期第4四半期 ▲765億7,600万円
2021年12月期第1四半期 ▲975億9,700万円
2021年12月期第2四半期 ▲996億8,600万円
2021年12月期第3四半期 ▲1,052億3,700万円
2021年12月期第4四半期 ▲1,186億5,300万円
2022年12月期第1四半期 ▲1,350億4,600万円
※出典:楽天「2021年度通期及び第4四半期決算説明会」「2022年度第1四半期決算説明会」資料

営業損失は、2019年12月期第4四半期は315億2,400万円だったが、2020年12月期第4四半期は765億7,600万円、2021年12月期第4四半期は1,186億5,300万円まで拡大している。

このように赤字が膨らみ続けているモバイル事業だが、楽天の三木谷浩史会長兼社長はこれをある程度予想していたはずだ。多額の基地局設置コストや、ユーザー獲得に向けた価格競争などは、参入前に容易に予想できる。 それでも三木谷氏がモバイル事業に取り組むのは、他のサービスとのシナジーを見込んでのことだろう。 楽天の一部サービスでは、使用するサービスが増えるほどユーザーへのポイント付与率が高くなる仕組みが導入されている。そのため、あるサービスで獲得したユーザーを他のサービスに誘導しやすい。 もちろんモバイル事業単体での黒字化も目指しているはずだが、背景にはこうした狙いがあるわけだ。

コロナ禍で泣いたラーメン店に光?倒産件数、大幅減

新型コロナウイルスの感染拡大はまだ収束していない。しかし、緊急事態宣言のような行動制約のない日々が続き、ラーメン店の客足が徐々に戻ってきたようにも感じる。

東京商工リサーチの調べによれば、2021年度のラーメン店の倒産件数は36件から22件へと急減した。倒産企業の負債総額も50億円台から20億円台に下がっている。

帝国データバンクは報道発表で2021年のラーメンチェーン単独の倒産件数を公表していないものの、飲食店の倒産件数が780件から569件に減ったことを明らかにしている。そこから考えると、ラーメンチェーンの倒産件数も減ったと見ていいだろう。

では、2021年は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がたびたび発出されたにもかかわらず、なぜこのような状況となっているのか。その理由として考えられるのが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に協力した店舗への給付金などが一定の効果をあげたことなどだ。

東京商工リサーチは「ゼロ・ゼロ融資や雇用調整助成金、持続化協力金などのコロナ関連支援が大きかった」としている。ゼロ・ゼロ融資とは、コロナ禍で売上が落ちた企業に対する「実質無利子・無担保」の融資の仕組みのことだ。

帝国データバンクも同様に、飲食店の倒産が大きく減ったことについて、「休業・時短協力金や休業補償など、給付型マネーを中心としたコロナ関連支援策の効果がうかがえる」としている。

市場の変化に敏感になろう

ここ数年は、コロナ禍に振り回された業種・業界も多いだろう。しかし、企業動向はその他さまざまな要因が絡み合っている。資産運用に取り組む際や転職を考えているときには特に市場の変化に敏感になり、現状を把握した上で未来予測に取り組むようにしよう。

文・MONEY TIMES編集部