楽天グループが3期連続で赤字を計上している。多くのユーザーを有し、「楽天経済圏」とも呼ばれるほどさまざまなサービスを展開している同社だが、モバイル事業が足を引っ張っている状況で、モバイル事業の営業損失が拡大している。
楽天グループの決算、売上は右肩上がりだが…
楽天グループの決算を見てみよう。2018年12月期(2018年1〜12月)の当期利益は1,422億8,200万円の黒字だったが、2019年12月期(2019年1〜12月)は318億8,800万円の赤字に転落し、2020年12月期は1,141億9,900億円の赤字、2021年12月期は赤字額が1,338億2,800億円まで拡大している。
一方で、売上収益(売上高)は右肩上がりだ。2018年12月期は1兆1,014億8,000万円、2019年12月期は1兆2,639億3,200万円、2020年12月期は1兆4,555億3,800万円、2021年12月期は1兆6,817億5,700万円だ。 売上高が伸び続けているのに赤字が拡大しているのは、モバイル事業が足を引っ張っているからだ。
モバイル事業の赤字が年々膨らみ続けている
楽天は2017年末にモバイル事業への参入を発表し、2018年から本格的に事業展開を開始した。楽天は決算説明会の資料として、モバイル事業の営業損失額を投資家に向けて公開している。営業損失額の推移は以下のとおりだ。
2019年12月期第4四半期 | ▲315億2,400万円 |
2020年12月期第1四半期 | ▲354億0,700万円 |
2020年12月期第2四半期 | ▲538億2,500万円 |
2020年12月期第3四半期 | ▲614億5,000万円 |
2020年12月期第4四半期 | ▲765億7,600万円 |
2021年12月期第1四半期 | ▲975億9,700万円 |
2021年12月期第2四半期 | ▲996億8,600万円 |
2021年12月期第3四半期 | ▲1,052億3,700万円 |
2021年12月期第4四半期 | ▲1,186億5,300万円 |
2022年12月期第1四半期 | ▲1,350億4,600万円 |
営業損失は、2019年12月期第4四半期は315億2,400万円だったが、2020年12月期第4四半期は765億7,600万円、2021年12月期第4四半期は1,186億5,300万円まで拡大している。 楽天のモバイル事業は、2019年10月に先行サービスを開始し、2020年4月に正式にサービスを開始したが、なぜモバイル事業の営業損失が膨らみ続けているのだろうか。
赤字額が膨らみ続ける2つの理由
モバイル事業の営業損失が膨らみ続けている理由は、主に2つある。
基地局関連コストの負担
最も大きな要因は、基地局の整備などに多額の費用がかかっていることだ。しかも、楽天は基地局の整備について、当初立てていた計画を4年前倒しで進めたため、赤字額が一気に拡大した。 しかし、基地局の整備が終われば、設備の維持コストなどはかかるものの、現在のような巨額の営業損失を計上することはなくなるだろう。
破格の格安プランの展開
楽天はモバイル事業では後発組なので、他社よりも魅力的なプランを打ち出す必要がある。そこで楽天は価格面での差別化を図り、月額2,980円という格安プランを打ち出した。 ところが、ドコモが楽天に対抗してさらなる格安プランを打ち出したため、楽天はこれに打ち勝つために「1GB以内なら料金を0円にする」という破格のプランを設けた。これが、業績に大きなマイナスインパクトを与えたと考えられる。
三木谷氏がモバイル事業を続ける理由
このように赤字が膨らみ続けているモバイル事業だが、楽天の三木谷浩史会長兼社長はこれをある程度予想していたはずだ。多額の基地局設置コストや、ユーザー獲得に向けた価格競争などは、参入前に容易に予想できる。 それでも三木谷氏がモバイル事業に取り組むのは、他のサービスとのシナジーを見込んでのことだろう。 楽天の一部サービスでは、使用するサービスが増えるほどユーザーへのポイント付与率が高くなる仕組みが導入されている。そのため、あるサービスで獲得したユーザーを他のサービスに誘導しやすい。 もちろんモバイル事業単体での黒字化も目指しているはずだが、背景にはこうした狙いがあるわけだ。
2022年12月期第2四半期以降は回復の見込み
楽天モバイルでは、2022年7月から新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」がスタートし、それまで設けていた0円で使える範囲を撤廃した。
これにより、第2四半期以降は、増え続けていた営業損失が減少する見込みだ。ただし、この発表によるユーザー減少がどの程度まで影響するのか懸念点も残る。
まずは、次の決算発表におけるモバイル事業の営業損失額に注目したい。
文・MONEY TIMES編集部
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