「おとり広告」で炎上し、消費者庁から措置命令を受けた回転寿司大手「スシロー」が、また大炎上した。2022年7月中旬から実施した「生ビール半額」キャンペーンで、品切れが続いた店舗やキャンペーン開始前にポスターを掲出した店舗があったためだ。度重なる炎上は、株価や業績にも影響を及ぼし始めている。

キャンペーン開始直後に品切れ

共同通信の報道によると、スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESは7月21日、同13日から実施した生ビール半額キャンペーンで、一部店舗が開始直後から品切れ状態だったことを明らかにした。キャンペーンをきっかけに来店した客が、目当ての生ビールを注文できなかったということだ。

同社によると、13~18日に全国の少なくとも17店舗で生ビールが品切れだった。通常価格528円の生ビールを半額で提供するキャンペーンのため、想定を上回る需要があったとしている。

そもそも、スシローは6月9日付で消費者庁から景品表示法に基づいて措置命令を受けている。このときに問題となったのは、キャンペーンのコマーシャルで該当商品がたくさんあるかのように見せておきながら、実際はキャンペーン開始当初から「品切れ」が続き、提供できなかった店舗が多数あったことだ。つまり、今回の生ビールと類似の内容だった。

消費者からすると、「またスシローがやったのか」というネガティブな気持ちが大きい。インターネット上では、「店舗のジョッキが小さくなった。半額にする一方、量も減らしたのではないか」というような書き込みが出てきて、スシロー側が「ジョッキの形は違うが、内容量は同じ」と火消しに走り回る事態となった。消費者の不信感が高まっている1つの証しといえそうだ。

株価は年初来高値から半値に下落

ところで、FOOD & LIFE COMPANIESの株価は年初来高値(2022年に入ってからの最高値)が4,370円で、1月4日につけた。一方、8月9日には年初来安値(同最安値)は2,152円をつけている。この間は基本的に右肩下がりの値動きだ。

もちろん、株価はさまざまな要因を織り込むので、値下がりは新型コロナウイルスの再拡大で外食産業に逆風が吹いていることも大きな要因と見られる。

しかし、例えば、同じ回転寿司業のくら寿司の株価は1月12日に年初来高値の3,910円となった後に下落したものの、5月27日に年初来安値の2,843円をつけてからじわじわと上昇。8月中旬時点では、3,300円前後で推移している。

そこから考えると、FOOD & LIFE COMPANIESの株価がとりわけ大きく落ち込んでいるのが分かる。コロナ禍で同社の株価が大きく値上がりしていた反動もあるにはあるだろう。しかし、同業他社と比べた値動きがあまりに違うあたり、消費者の不信感を織り込んで値下がりしている側面もありそうだ。

株価は「人気投票」の性格があるといわれる。株価が上げ下げしたからといって、それが直接的に経営へ及ぼす影響はそれほど大きくない。だが、回転寿司業がBtoC(消費者向けに商売をするビジネスのこと)ということから、人気投票の点を考えると、安穏とはしていられないだろう。

今期は純利益を50億円超の下方修正

それでは、業績への影響はどうだろうか。

FOOD & LIFE COMPANIESは8月4日、2022年9月期(今期)の業績予想を下方修正している。修正後の最終利益を見てみると、5月に示した前回予想と比べて57億円減の30億円とした。実はこの5月に公表した予想も期初予想を下方修正したもの。期初予想(2021年11月公表)の最終利益は120億円であり、今回の下方修正後の予想値は当初の見通しから75%も下がっている。

日本経済新聞の記事によると、業績予想を下方修正した背景には、水産物の仕入れコストの増加、足元の売り上げ低迷が響くという。「おとり広告」など相次ぐ不祥事によるイメージ悪化も、販売の不振につながっているらしい。

同社は1年前の2021年9月期、売上高、各利益とも過去最高を記録していた。今回修正後の予想は、前期実績比で売上高が16.3%増となるものの、営業利益、経常利益、最終利益は60~80%の大幅減になる見込みだ。

財務には余裕も…

もっとも、だからといってすぐに同社がつぶれるような可能性は低そうだ。現状の自己資本比率は20%ほどで目立って高くはないが、自己資本は600億円以上あり、剰余金は500億円近く持っている。

確かに、2022年4~6月期の3ヵ月間は最終赤字に転落しているが、まだ通年では数十億円の黒字を維持できている。多少の赤字を出したとしても、倒産うんぬんという話にはならないと見られる。

しかし、これまで再三述べてきたように、客商売である以上、経営を継続する上で来店客の信用は重要だ。回転寿司業界は同業他社が多く、競争が熾烈だ。いったん客離れが始まって他社に流れると、雪崩をうって顧客が流出しかねない。「また?」と思われているうちに「炎上」しがちな企業体質を改善しないと、マーケットでの存在感が薄れ、炎上すらしない企業になってしまう可能性もある。

文・MONEY TIMES編集部

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