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土地の特徴により評価額が増減される
使いにくい宅地などの減額補正

土地の特徴により評価額が増減される

土地の相続で重要な路線価。知らないと損する「補正率」とは
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

土地の相続税評価額は、路線価に地積を掛けて算出しますが、土地の特徴によっては、各種補正率を掛けて補正を行います。「補正率」を用いることで、より適正な土地の価値を算出できるのです。

画地補正率による調整

「画地補正率」とは、土地の形状・奥行・法律上の利用制限などによって路線価を調整する補正率です。

国税庁が定める路線価は、土地の形状が整形地※で、かつその一辺が道路に面している状況に基づきます。しかし、実際は道路に面していなかったり、いびつな形状をしていたりと、必ずしも整形地であるとは限りません。

現状に応じて路線価を算出するため、用途地区ごとに定められた画地補正率を適用させる必要があります。以下は、画地補正率の一例です。

  • 奥行価格補正率
  • 側方路線影響加算率
  • 二方路線影響加算率
  • 間口狭小補正率
  • 奥行長大補正率
  • 無道路地補正率
  • 袋地補正率
  • 不整形地補正率

※整形地:長方形または正方形に整った形状の敷地

参考:画地補正率表|東京都主税局

規模格差補正率による調整

財産評価基本通達の「地積規模の大きな宅地」に該当する場合、「規模格差補正率」による調整が行われ、土地の評価額が減額される可能性があります。

  • 地積規模の大きな宅地の評価額=路線価×奥行価格補正率×各種画地補正率×規模格差補正率×地積 規模格差補正率の具体的な算出方法は、国税庁のウェブサイトで確認しましょう。地積規模の大きな宅地は以下のように定義されています(一部例外あり)。

  • 三大都市圏:500m2以上の地積の宅地

  • 三大都市圏以外の地域:1,000m2以上の地積の宅地

参考:No.4609 地積規模の大きな宅地の評価|国税庁
参考:「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました|国税局・税務署

使いにくい宅地などの減額補正

土地の相続で重要な路線価。知らないと損する「補正率」とは
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

いびつな形状の土地は使い勝手が悪く、整形地に比べて土地の評価額が下がります。画地補正率にはさまざまな種類がありますが、ここでは「使いにくい宅地」に適用される代表的な補正率を紹介します。

奥行価格補正率

「奥行価格補正率」は、土地の「奥行の長さ」に応じて路線価を減額する補正率です。道路からの奥行が極端に短い、あるいは長い土地は使い勝手が悪く、土地の評価が下がります。

路線価に奥行価格補正率を掛けることで、奥行価格補正後の土地の評価額が算出できます。奥行価格補正率の詳細は、国税庁のウェブサイトにある「奥行価格補正率表」を確認しましょう。「地区区分」と「奥行距離」によって異なる補正率が設定されています。

参考:奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁

不整形地補正率

「不整形地補正率」とは、いびつな形状の土地に適用される補正率です。長方形や正方形でない土地は、住宅を建てる際に間取りを考えるのが困難だったり、敷地全体を有効活用できなかったりするため、土地の価値が低くなるのが一般的です。

不整形地の評価は、不整形地を区分したり、近似整形地を求めたりして算出した価額に不整形の程度や土地面積の大小などの補正を乗じて求めます。

不整形地補正率を調べるには、「かげ地割合(整形地で囲った場合にはみ出る部分の割合)」を求めなければならないため、素人には少しハードルが高いかもしれません。

参考:不整形地補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁

間口狭小補正率

「間口狭小補正率」とは、間口が狭い土地に適用される補正率です。道路に接する間口が狭く、細い路地の先に土地がある「旗竿地(はたざおち)」などを評価する際に用いられます。

間口が狭い土地は「建物が建てにくい」「車の出入りがしにくい」「採光や通風の確保がしにくい」などの理由から、価値が下がります。

旗竿地を評価する際は、路線価に間口狭小補正率と奥行長大補正率を掛け合わせるのが一般的です。「間口狭小補正率」は、地区区分と間口距離(m)によって決まります。

参考:間口狭小補正率(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁

奥行長大補正率

「奥行長大補正率」とは、間口が狭く、奥行が長い土地の評価額を減額するための補正率です。奥行長大補正率は、間口距離・奥行距離・地区区分によって定められており、奥行距離を間口距離で割った値が2以上の場合に適用できます。

例えば、間口距離が5m、奥行距離が20mの土地は奥行長大補正率が使えますが、間口距離が5m、奥行距離が9mの土地では使えません。

また、「ビル街地区」と「大工場地区」は、奥行長大補正率がすべて1.00となっており、土地の評価額に影響がない点にも留意しましょう。

参考:奥行長大補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁

がけ地補正率

「がけ地補正率」とは、がけ地を有する土地の評価額を減額するものです。地盤が傾斜している土地は、平らな土地に比べて利用用途が制限されます。がけ崩れの危険性もあるため、土地の価値は低く見積もられます。

がけ地補正率は「総地積におけるがけ地地積の割合」と「がけ地の方位」によって決定されます。計算の手順としては、がけ地などの部分ががけ地などでないとした場合の価額を算出してから、がけ地補正率を乗じます。

なお、がけ地は「通常の用途に供することができないと認められる部分」とされており、明確な定義があるわけではありません。がけ地かどうかの判断が難しい場合は、税理士に相談しましょう。

参考:がけ地補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁
参考:がけ地等を有する宅地の評価|国税庁

私道が公衆用道路と認められる場合

私道には以下の2パターンがあります。

  • 通り抜け道路のように「不特定多数の者の通行の用」に供されているもの(公共の用)
  • 袋小路のように「特定の者の通行の用」に供されているもの

不特定多数の者の通行の用に供されている私道の価額は評価されません(非課税)。一方、特定の者しか利用しない私道は、路線価方式または倍率方式によって評価した価額の30%相当として評価します。

なお、隣接する宅地へと続く「所有者専用の通路」は、私道ではなく宅地の一部とみなされます。

参考:No.4622 私道の評価|国税庁