新型コロナウイルスの感染が世界各地で確認され始めた2020年2月。異例の感染者「ゼロ」が続いていたインドネシアでは、政府がこれを「祈りのおかげ」と発言し、話題となった。結局、祈りの効果はあったのだろうか。感染状況がどのように変化していったのかを探る。

根拠不明の感染者ゼロ

「神のおかげ、私たちの祈りのおかげだ」——。テラワン・アグス・プトラント保健相は2月初め、感染が拡大するアジア周辺国を「対岸の火事」のように楽観視し、インドネシアには新型コロナは存在しないとの見解を示した。

保健当局は感染の疑いがある約100人を検査したが、全て陰性だったと発表。国内では「高温多湿な気候が影響した」「国民に免疫力がある」など、根拠のない主張も出ていた。

世界4位の人口を抱え、貿易や観光でも中国との往来は多い。それでも、テラワン保健相は「他国が(私たちのやり方に)抗議してきても放っておけばいい。神に頼ることを、なぜ恥じる必要があるのか」との姿勢を崩さなかった。

世界最大のムスリム国家

インドネシアは、人口2億7,000万人のうち約9割がムスリム(イスラム教徒)だ。お祈りは1日5回行われ、人々にとって生活の一部となっている。

国民の多くが信者とはいえ、新型コロナの抑制に自信を示す政府に対し、実際には不安や懐疑的な目を向ける人も少なくなかった。

感染爆発と集まる批判

国内で感染が初めて確認されたのは3月2日になってからだ。感染の波は瞬く間に広まり、4月には累計感染者数が東南アジア最多を記録した。

経済活動の停滞を恐れた政府は当初、厳しい措置に踏み切れず感染対策が後手になる。しばらくして政府と各地方自治体は入国制限や移動制限などの措置にかじを切ったが、政策は一貫性に欠けていた。感染者数は右肩上がりで増えていったのだ。

感染対策への批判から、ジョコ・ウィドド大統領は同年12月、第2期政権発足後初となる内閣改造を発表。新型コロナ対策を担ったテラワン保健相など6閣僚が交代した。

経済への影響も避けられなかった。2020年通年の国内総生産(GDP)成長率はマイナス2.07%と、アジア通貨危機直後の1998年以来初めてのマイナス成長となった。

警戒は続く一方で・・・

感染者数は2021年1月、累計100万人を超えた。感染力の強い変異株であるデルタ株の出現により、医療は崩壊寸前にまで陥った。

2022年8月中旬時点で、累計感染者数は約628万人、死者数は東南アジアで最多の15万7,000人を超えるなど、依然として新型コロナは猛威を振るっている。政府は新たに、公共交通機関や自家用車を利用して移動する際、新型コロナワクチンのブースター接種(追加接種)を義務付ける措置も加えた。

一方、ワクチンの追加接種が都市部を中心に進み、経済が堅調な回復を見せているのも事実だ。外国人観光客も徐々に戻り始めている。コロナ禍をいかに制するか、もはや「神」だけに頼れないインドネシア政府の手腕が問われている。

文・MONEY TIMES編集部

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