目次
売上高300万円のフリーランスの、インボイス制度開始後の手取り金額シミュレーション
登録事業者/免税事業者のメリット・デメリット

売上高300万円のフリーランスの、インボイス制度開始後の手取り金額シミュレーション

大きな影響があるとされるインボイス制度。正式に開始すれば、フリーランスの収入に響く可能性があります。現実的にフリーランスの稼ぎは、どのように変化するでしょうか。

売上高300万円の免税事業者を例に、以下の3パターンで現在の手取りとの差を比べてみましょう。

  1. パターン1:
    課税事業者になって消費税を納税する
  2. パターン2:
    免税事業者のまま売り上げが10%ダウンする
  3. パターン3:
    課税事業者になって簡易課税制度を適用して消費税を納税する(フリーランスエンジニアで簡易課税制度の第五種事業に該当する場合)

【インボイス制度開始前:売上330万円、仕入55万円(ともに税込)= 手取り約262万円】

売上(A)3,300,000円
仕入(B)550,000円
所得税及び復興特別所得税(C)132,200円
手取り金額(A-B-C)
*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。
2,617,800円

【インボイス制度実施後 パターン1:課税事業者になって消費税を納税するケース = 手取り約239万円】

売上(A)/売上に係る消費税額(10%)3,300,000円(300,000円)
仕入(B)/仕入に係る消費税額(10%)550,000円(50,000円)
所得税及び復興特別所得税(C)106,600円
納める消費税(D)250,000円
手取り金額(A-B-CーD)
*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。
2,393,400円

課税事業者は基準期間における課税売上高が1,000万円超となった年度のほか、1,000万円以下の場合でも任意でなることもできます。

【インボイス制度実施後 パターン2:免税事業者のまま売上10%ダウンするケース = 手取り約234万円】

売上(A)3,000,000円
仕入(B)550,000円
所得税(C)101,500円
収入(A-B-C)
*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。
2,348,500円

課税事業者になる場合、納める消費税分の約22万円が手取り額から減ります。一方で免税事業者を続けた場合は、売上減少により約27万円のマイナスです。

上記のとおり、フリーランスの収入に影響が生じるでしょう。

また、簡易課税制度(※3)という消費税の計算の方法を使用することで、消費税の納税額を上記より抑えられる場合もあります。

(※3 簡易課税制度:中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、「売上げに係る消費税額」を基礎として「仕入れに係る消費税額」を算出できる制度です。「売上げに係る消費税額」に、事業の種類の区分に応じて定められた「みなし仕入率」を乗じて算出した金額を「仕入れに係る消費税額」として、納税する消費税額を計算する方法です。基準期間における課税売上高が5,000万円以下となる場合に適用が可能となります)

【インボイス制度実施後 パターン3:課税事業者になって簡易課税制度を適用して消費税を納税するケース(フリーランスエンジニアで簡易課税制度の第五種事業に該当する場合。) = 手取り約248万円】

売上(A)/売上に係る消費税額(10%)3,300,000円(300,000円)
仕入(B)/仕入に係る消費税額(10%)550,000円(売上に係る消費税額300,000円×50%(第五種事業のみなし仕入率)=150,000円)
所得税及び復興特別所得税(C)116,900円
納める消費税(D)150,000円
手取り金額収入(A-B-C-D)
*個人住民税・個人事業税・社会保険料は計算上考慮していません。
2,483,100円

簡易課税制度は状況によって、原則的な消費税の計算(パターン1)よりも、消費税額の納付税額が少なくなる場合があります。今回の例では、パターン3はパターン1より手取り額が約9万円多くなりますね。

さらに簡易課税制度は、原則的な消費税額の計算と比較して、簡便な計算となります。

このように、簡易課税制度にはメリットがある場合がありますので、課税事業者になる場合には、簡易課税制度の適用を検討するのも良いでしょう。

登録事業者/免税事業者のメリット・デメリット

2023年10月のインボイス制度で、課税事業者(登録事業者)になるのか、免税事業者で居続けるのか。

それぞれのメリット・デメリットをまとめました。

インボイス制度が開始したらメリットデメリット
適格請求書発行事業者になるインボイスの発行ができるので、発注元で仕入税額控除のの制限がない。そのためインボイスが発行できないことによる値下げや取引排除を避けられる消費税の納税義務が発生する分、手取り金額が下がる
消費税申告書の作成・提出の手間がかかる
免税事業者を続ける消費税の納税の必要がないため、売上が下がらなければ手取り金額をキープできる
消費税申告書の作成、提出が不要
インボイスの発行ができないことから、発注元で仕入税額控除が制限されるため、取引先から値引きや取引排除されるリスクがある