Androidスマホの「Amazonアプリ」「Kindleアプリ」から直接本が買えなくなった。その背景にはGoogle側のポリシー改定があるという。これはどういうことなのか。アプリがなくなる可能性もあるのか、という疑問について解説しよう。
手数料を回避したいAmazon側
2022年4月から5月にかけてAndroidの「Amazonアプリ」「Kindleアプリ」からKindle本(電子書籍)の購入ができなくなった。
アプリでは、これまで購入ボタンのあったところに「リストに追加」とあり、その下の「アプリで購入できないのはなぜですか?」をタップすると、「Google Play Storeのポリシーに準拠するため、このアプリ内から新しいコンテンツを購入することができなくなりました」と表示されるのだ。
購入する場合は、アプリ上でリストに追加した上でブラウザーから購入手続きを行い、アプリに戻るように指示されている。これまでアプリ上で購入してそのまま読めたことを考えると非常に手間が増えたことになる。
これは、Google Play Store(Androidのアプリ購入ショップ)で提供されるアプリにおいて、アプリ内の機能やデジタルコンテンツに対する支払いにはGoogle Playの課金システムを使用しなければならないGoogle側のポリシー改定が起因となっている。
ポリシー改定は2020年9月に発表され、1年後までに各アプリが対応するように求めていた。その後、新型コロナウイルス感染症の状況を考慮してタイムリミットが2022年3月末まで延長されていた。
Google Playの課金システムを経由させて、Google側が手数料を受け取るための改定だが、どうしても手数料を支払いたくないらしいAmazon側は苦肉の策として、ブラウザー経由で課金させるようにしたわけだ。
これら「Amazonアプリ」「Kindleアプリ」と同様、「Prime Videoアプリ」やAmazonのオーディオブックプラットフォーム「Audible」のアプリでもブラウザーからコンテンツを購入する形となっている。
なお、iPhoneなどiOS版の「Amazonアプリ」や「Kindleアプリ」では、継続して以前からアプリ内でのKindle本購入はできない仕様であった。
代金決済を巡る「GAFA」のバトル
これは、アメリカのネット大企業「GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字を取ったもの)」間のコンテンツ代金決済を巡るバトルといえる。しかし、ユーザーが不便を強いられるため、批判も多い。
そうしたこともあり、Googleは新ポリシー実施前にGoogle Playの課金システム以外も選べるようにする試験的な取り組みを行うと発表した。これは直接的には、GoogleとAppleに対し自社決済システムの利用の義務付けを禁止する法案が韓国で成立したことを受けての動きだ。
一方、Appleも、雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオなどを閲覧・視聴するアプリに関して、アプリ内から外部ウェブサイト上のアカウント管理へ直接リンクすることを許容すると発表した。つまり、アプリ上でのタップにより、Apple側ではなくアプリ側が提供する課金システムを利用したコンテンツ購入へ移行できることになる。
アプリ内のブラウザーを使えば、ユーザーはアプリを離れることなく購入できる操作感覚となるだろう。
課金システムを巡りストアから削除されたゲームも
Androidの「Kindleアプリ」がユーザーの操作性を損ねてまで、Google Playの課金システムを利用しないのは、課金周りのさらなる改定(Amazon側にとっては改善)を求めてのGoogle側への圧力と考えていいだろう。
改善を強く求めるAmazonが「Kindleアプリ」自体をなくす可能性は皆無といっていい。ただ、Google側の十分な譲歩を得られるまでは、このままアプリ内での購入ができない可能性はある。それは、iOSの「Kindleアプリ」が同じ状況にあることからも明らかだ。
なお、Appleは韓国だけでなく日本でも、公正取引委員会から独占禁止法違反の疑いで調査を受けたことがきっかけとなり課金システムの改定に乗り出している。今後、こうした法的な整備により、スマホアプリの課金システムをユーザーが自由に選べるように変化していくものと思われる。
文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
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