1996年の発売以来、何度かのブームを繰り返し、今なお人気を維持するバンダイのおもちゃ「たまごっち」。かつて、大人も子どもトリコにし、狂騒曲といっていいほどの大ブームを起こした伝説のおもちゃはどのようにして生まれたのだろうか?

たまごっち誕生秘話――たまごっちが「死ぬ」理由

初代のたまごっちは1996年11月23日に“デジタル携帯ペット”として発売され、まず女子高生を中心に大ブームとなる。

犬でも猫でもない、不思議な生き物が小さな卵型ケースの中で育てられ、実際のペットのようにお世話の仕方によって様子が変わる。しかも、世話をサボると死んでしまう……リアル寄りのコンセプトが人気を博し、一時は社会現象にもなった。

こうしたたまごっちのコンセプトは、生みの親である横井昭裕氏が海水魚の飼育の中でたびたび魚を死なせてしまうことがあり、生き物を育てる大変さを痛感するとともに、大変だからこそかわいさを感じると気づいたことに端を発している。

横井氏は、世話を怠ると死ぬリアルさがヒットの理由と考えており、会社から「たまごっちが死ぬ」という設定に反対されても、そこは譲らなかったという。

なお、たまごっちは当初「たまご型をした腕時計」として企画されたという。たまごっちの公式サイトには企画段階のイラストが紹介され、それを見ると確かに腕時計型が原型であったことが分かる。ただその後、メインとなるターゲットや開発上の理由から、最終的にはキーチェーン型に決まった。

転売ヤーが現れ、末端価格は7万~8万円にも

たまごっちは空前の大ヒット商品となり、漫画やアニメも展開。品薄状態が続いたことから転売で利益を得る者、今でいう“転売ヤー”も現れた。ブーム当時、入荷情報のあったおもちゃ屋には早朝から行列ができ、人を安く雇って並ばせる業者もいたという。

中にはたまごっちを組み立てていた韓国の工場から直接調達したたまごっちを日本に持ってきて、パチンコの景品として転売して荒稼ぎしていた者もいた。

当時普及の始まったインターネットを使った個人レベルでの転売や、おもちゃ店自体による転売などもあり、1996年当時、人気の高かった白色のたまごっちの末端価格は定価の40倍ほどの7万~8万円にもなっていたという。

“たまごっち狂騒曲”といっていいほどの社会現象が起きており、このブームは海を越えて広く海外にも波及していくことになる。

そうしたことから、横井氏は1997年、ノーベル賞のパロディ「イグノーベル賞」の経済学賞を、数百万人分の労働時間を仮想ペットの養育に費やさせた功績により受賞している。ジョークとしての賞ではあるものの、当時たまごっちが世界的なブームを巻き起こしていたことをうかがわせるものといっていいだろう。

ブーム沈静化からの復活と新展開

しかし、1998年に入るといったんブームが沈静化する。その後、2004年に赤外線通信機能の付いた「かえってきた!たまごっちプラス」として復活を果たし、2017年9月末時点で全世界累計販売数8,200万個を達成。同年11月には初代たまごっち完全復刻盤となる「祝20しゅーねん!たまごっち/新種発見!!たまごっち」が発売され話題を呼ぶ。

スマホ時代に入ると、たまごっちのスマホアプリも登場し、2018年にはBluetooth通信でスマホアプリと連携できる「たまごっちみーつ」が発売された。

そして、25年目の節目を迎える2021年11月には、腕時計型の「たまごっちスマート」が発売。当初の企画案にあった腕時計型のたまごっちが25年を経て実現することになる。

現在、たまごっちは「ワンピース」「SPY×FAMILY」「東京リベンジャーズ」「トイ・ストーリー」「鬼滅の刃」など人気アニメとのコラボバージョンも多数販売されており、ブームを超えた定番おもちゃとして再びそのすそ野を広げつつある。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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