北海道札幌市に本社を置く国内家具大手のニトリは、35期連続で増収増益を達成している。同社は2023年3月期も増収増益を見込んでいるが、足元の経営環境は厳しい。連続記録は今期で途絶えてしまうのだろうか。

巣ごもり需要後退でニトリとしては減収減益

ニトリの2022年2月期連結業績は、売上高8,115億円、営業利益1,382億円だった。それぞれ前期比で13%、0.4%増と増収増益を確保し、連続記録を更新した。しかし、その決算内容は、ニトリの今後の見通しが決して明るいものではないことを示唆していた。

2022年2月期の決算では、ニトリの既存店の売上高が前年比で約10%減少し、ニトリ事業全体で見ても、売上高は6,792億円と前年比で5.3%減少した。連結で増収となったのは、2021年に子会社化したホームセンター大手「島忠」の売上約1,500億円が上乗せされていたからだ。

ニトリの2021年2月期の業績は好調だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、消費者が自宅で過ごす時間が増え、巣ごもり需要が生まれた。ニトリはコロナ禍で生じた巣ごもり需要を取り込み、同期は売上高、営業利益のいずれも2桁アップだった。

ところが、2021年度は巣ごもり需要が後退し、ニトリ事業としては減収減益だった。売上増に寄与した巣ごもり需要が今後、回復する可能性はとぼしく、加えてニトリはもう1つの悩ましい課題に直面している。

円安1円で20億円減益

ニトリの増収増益を困難にしているのが急速に進む円安だ。ニトリは商品の9割以上を海外で生産し、対ドルで1円の円安が年間で約20億円の減益につながるとされている。

ニトリはこうしたリスクを回避するため、為替予約を利用している。為替予約とは、将来の決済時に用いる為替レートを事前に決めておくことで、2022年9月分までは1ドル114円90銭で予約している。問題はこの年の10月以降だ。

ニトリの似鳥昭雄会長は、円安は2022年後半から反転すると見込んでいた。ところが、現下の情勢では、円安の反転は見通しにくい。似鳥氏は同年7月1日の記者会見で「(円安反転の見通しは)間違っていた」「会社が始まって以来の苦い失敗」と反省を口にし、増収増益に暗雲が漂っていることを示唆した。

円安は原材料価格や物流費の高騰も伴うため、今期のニトリを取り巻く経営環境は極めて厳しいものとなっている。

「製造物流小売業」というビジネスモデル

ニトリはこれまで、なぜ連続で増収増益を達成できたのか。

その歴史は1967年に、似鳥氏が札幌市で「似鳥家具店」を創業したところから始まる。1989年に札幌証券取引所に上場し、増収増益を積み重ねてきた。

ニトリの躍進を支えてきたのは、その優れたビジネスモデルとされる。ニトリは自らを「製造物流小売業」と呼んでいるように、商品の企画から原材料の調達、さらには製造・物流・販売に至るまで、一連のプロセスを自社で手がけている。

これにより、一連のプロセスで生じる中間コストを極力削減して、高い利益率を維持しているのだ。

巧みな出店戦略 島忠の子会社化で大都市圏強化

ニトリ成功のもう1つの鍵は、巧みな出店戦略だ。ニトリは出店に際して、特定地域に店舗を集中させて経営効率を高める「ドミナント戦略」をとっている。配送の効率化などを通じて全体のコストを下げられ、その地域で認知度が高まってブランド力が向上するメリットがある。

2021年の島忠の子会社化もニトリの出店戦略と深く結びついている。ニトリは島忠に対してTOB(株式公開買い付け)を仕掛け、成立させた。ニトリが狙っていたのは、島忠が店舗を展開していた国道16号線の内側エリアだ。

国道16号線は、横浜市を起点に東京都町田市、八王子市、埼玉県さいたま市、千葉県柏市、千葉市などを結ぶ環状道路だ。国道16号線の外側は、北関東を地盤とするホームセンター「カインズ」などが勢力を広げている。

ニトリが目をつけたのは、この国道16号線外側エリアではなく、人口が密集する大都市圏で島忠が根を張っていた内側エリアだ。内側エリアは外側エリアに比べて人口減少に伴うマーケット縮小の影響が限定的で、ニトリにとっては大都市圏をカバーする上で欠かせない。

海外にも事業拡大

ニトリは海外進出にも積極的で、台湾、中国、米国、マレーシアに計93店舗(2022年2月20日現在)を構える。

韓国では、韓国最大のインターネット通販企業と提携し、韓国向けに寝具や生活雑貨などを販売している。国内市場で大きな成長が見込めない中、海外拠点の拡大が不可欠と認識しているからだ。

円安の進行度合いが業績左右

にもかかわらず、足元の経営環境は厳しく、2023年3月期の増収増益には黄信号がともる。特に急速に進行している円安の影響は大きく、今期の業績の成否を左右するだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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