不動産売却で生じる税金

【2022年最新】不動産売却の基礎知識を解説!タイミングや囲い込み対策・税金で知るべきこと
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

ここからは、不動産売却にかかる税金を解説する。

譲渡所得と税率

個人が不動産を売却すると譲渡所得が発生し、税金が生じる。

譲渡所得とは、給与所得や事業所得などの個人が得る所得の名称の一つであり、不動産を売ったときの売却益のことを指す。

譲渡所得は、具体的には以下の計算式で求められる。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額とは売却価額を指す。

取得費は、土地は購入額、建物は購入額から減価償却費(会計上の費用)を控除した価額のこと。

譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費などの売却に直接要した費用のこと。

譲渡所得は売却益のことであるため、売却価額のことではない点がポイントだ。

例えば、バブル時代に購入した不動産などは取得費が高いため、譲渡所得がマイナスとして計算されることが多い。

譲渡所得がマイナスとなれば、売却しても不動産所得は発生していないものとされ、税金は発生しない。

したがって、不動産を売却したときの税金は、「発生するとき」と「発生しないとき」があるということになる。

譲渡所得がプラスの場合、税金は譲渡所得に税率を乗じて求められる。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は、不動産の所有期間によって異なる。

売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは長期譲渡所得、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは短期譲渡所得と分類され、それぞれの税率は下表の通りだ。

所得の種類所有期間所得税率住民税率
短期譲渡所得5年以下30%9%
長期譲渡所得5年超15%5%

土地等を譲渡した場合、譲渡所得(※譲渡の対価の額-譲渡経費)に対し、表のとおり課税されます。
引用:国土交通省

税金の計算方法

マイホームを売却したときの税金の計算方法について解説する。

税金を計算では、取得費を求めることがポイントだ。取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額のこと。

そのため、取得費を計算するには、購入当時の売買契約書より購入額の土地と建物の内訳価格を調べておく必要がある。

以下の条件で取得費を計算する。

【前提条件】

不動産の種類:マンション
建物構造:鉄筋コンクリート造
購入価額:5,000万円(消費税別)
内訳 土地購入価額:3,000万円
  建物購入価額:2,000万円(消費税別)
経過年数:15年(購入から売却までの所有期間のこと)

マイホームは非事業用不動産と呼ばれ、減価償却の計算式は以下のものを用いる。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率には、建物の構造によって下表のように決まっている。

鉄筋コンクリート造の場合は、「0.015」を用いる。

構造非事業用の償却率
木造0.031
木造モルタル0.034
鉄骨造(3mm以下)0.036
鉄骨造(3mm超4mm以下)0.025
鉄骨造(4mm超)0.020
鉄筋コンクリート造0.015
鉄骨鉄筋コンクリート造0.015

経過年数は築年数ではなく、購入から売却までの所有期間を指す。

あくまでも売主が保有していた所有期間であるため、中古マンションを購入していたとしても過去の築年数は関係しない。

経過年数は年単位で表し、6ヶ月以上の端数が出た場合は切上げ、6ヶ月未満の端数が出た場合は切捨てとなる。

上記の条件で取得費を求めると、以下の通りである。

最初に減価償却費を求める。 減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数       = 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 15年       = 405万円 よって取得費は以下のようになる。 取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)     = 3,000万円 + (2,000万円 - 405万円)     = 3,000万円 + 1,595万円     = 4,595万円

取得費を求めることができたら、譲渡所得と税金を計算する。

税率は長期譲渡所得(所有期間5年超)のものを用いる。

(前提条件) 売却価額:4,900万円 取得費:4,595万円 譲渡費用:145万円 (税金) 譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用      = 4,900万円 - 4,595万円 - 145万円      = 160万円 所得税 = 譲渡所得 × 所得税率     = 160万円 × 15%     = 24万円 復興特別所得税 = 所得税 × 復興特別所得税率         = 24万円 × 2.1%         ≒ 0.5万円 住民税 = 譲渡所得 × 住民税率     = 160万円 × 5%     = 8万円 税金 = 所得税 + 住民税 + 復興特別所得税    = 24万円 + 8万円 + 0.5万円    = 32.5万円

確定申告

【2022年最新】不動産売却の基礎知識を解説!タイミングや囲い込み対策・税金で知るべきこと
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ここからは、売却終了後の確定申告について解説する。

確定申告が必要な人と不要な人

不動産売却では、原則として譲渡所得が発生している人は確定申告が必要だ。確定申告では譲渡所得を申告し、所得税を納税する。

譲渡所得が発生していない人は、原則として確定申告は不要。

ただし、不動産の売却では節税や税金還付を受けることができる特例がある。特例を利用する場合には、例外的に譲渡所得が発生していない場合でも確定申告が必要となる。

マイホームの売却では5つの特例が定められており、一定の条件を満たすと特例が利用できる。

特例の性質特例名称国税庁HP
譲渡所得が生じたときの特例3,000万円特別控除No.3302 マイホームを売ったときの特例
所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
特定の居住用財産の買換え特例No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡所得が発生しなかったときの特例居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームの売却では、譲渡所得が発生しなかったときに一定の要件を満たすと、「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」等の税金還付を受けられる特例が利用できる。

そのため、譲渡所得が発生しない場合でも、特例を利用するなら確定申告が必要。

確定申告が必要なケースと不要なケースをまとめると、以下のようになる。

確定申告が必要なケース確定申告が不要なケース
・譲渡所得が生じている場合 ・特例を利用する場合・譲渡所得が発生しておらず、かつ、特例を利用しない場合

尚、買い替えで購入した家で新たに住宅ローン控除を利用する場合、住宅ローン控除の適用を受けるために確定申告が必要だ。

確定申告をしないと「お尋ね」が来るときがある

少し不安に感じるかもしれないが、何もしなくても特に問題ない。

売却で譲渡所得が発生しないなら、特例を利用しない限り売却にかかる確定申告はしなくてよい。

ただし、確定申告しない人のうち、一部の人に対して売却後に税務署から「お尋ね」というアンケート調査が届くことがある。

お尋ねとは、税務署が譲渡所得を発生させている可能性のある人に対して、念のために売却価額等の確認をするための調査のこと。

税務署は、法務局から所有権の移転情報を得ているため、確定申告をしない人も不動産の売買があったことを把握している。

また、税務署は不動産の価格相場も把握しており、購入時期や売却時期から譲渡所得の発生の有無を推測することもできる。そのため、譲渡所得を発生させている可能性のある人を絞りこんで、念のため、申告漏れがないかの確認をしているのだ。

譲渡所得が発生していないことで確定申告をしていない場合、特に悪いことをしているわけではないので、お尋ねに正直に回答すれば問題はない。

回答して譲渡所得がマイナスであることを証明すれば、それで終了である。

また、お尋ねが来ない人もたくさんいる。

お尋ねが来ない人は、税務署が恐らく譲渡所得は発生していないのだろうと把握されている人たちなので、お尋ねによる事後確認すらない。

いずれにしろ、確定申告の必要性を把握するためにも譲渡所得の計算は必要なので、売却が終了したら必ず譲渡所得の有無の確認は行ってほしい。