教育現場の労働環境が問題視されている。部活指導があるなど長時間労働にもかかわらず、残業代はほとんど出ないからだ。教職員の給料を時給に換算すると、コンビニのアルバイト並みとの指摘もある。実際、教職員の給料は、時給に換算するといくら位なのだろうか。

月の労働時間は250時間超

教職員のおおよその時給を把握するために、まずは教職員の労働時間を確認したい。

10年間で小・中学校教諭の勤務時間は増加

教職員の労働時間を知る上で参考になるのは、文部科学省が2016年度に行った教員勤務実態調査だ。同調査は2016年度に10年ぶりに実施され、6年を経て2022年度にも行われている。2022年度分の結果はまだ公表されていない。

2016年度の分析結果によると、校長や教頭を除く小学校の教諭が平日に仕事をしている時間(学内勤務時間)は1日あたり11時間15分だった。中学校の教諭は11時間32分と、小学校の教諭よりわずかに長い。

土日の学内勤務時間を比較すると顕著な差がみられ、小学校教諭は1日あたり1時間7分だったのに対し、中学校教諭は3時間22分だった。

2006年度の教員勤務実態調査では、小学校教諭の平日1日あたりの学内勤務時間は10時間32分、土日は18分で、いずれも10年間で増加した。増加傾向は中学校教諭も同様で、2006年度の平日1日あたりの学内勤務時間は11時間、土日は1時間33分だった。

過労死ラインを超える可能性も

2016年度調査は、教員の1週間あたりの学内勤務時間も公表しており、小学校教諭は57時間29分、中学校教諭は63時間20分だった。

1カ月の労働時間を計算するために、1週間あたりの勤務時間を4倍すると、小学校教諭は月229時間56分、中学校教諭は253時間20分になる。月250時間以上の労働は過労死ラインを超える可能性があり、健康管理上、危険な水準だ。

小・中学校教員の月平均は41万円

次に教職員の給料を確認する。

教職員の給料は、役職、勤続年数、都道府県によって異なる。東京都教育委員会は教職員給料表を公式サイトに公開しており、給料は1〜6級までの等級と、各級に付された号給によって決まる。

例えば、等級が一番高い6級は校長に該当し、6級の25号給は42万9,000円となっている。号給は1年ごとに4号給上がるのが一般的だ。

これに加えて、教職員には各種手当がつく。ボーナスに当たる期末・勤勉手当や、教員特殊業務手当などがある。教員特殊業務手当は、土日の部活指導や修学旅行の引率などに対して支払われる。

総務省の2018年「地方公務員給与実態」調査によると、小・中学校教員の平均給料月額は35万7,441円で、諸手当月額は5万9,767円だった。2つの合計は41万7,208円で、これを基に時給を計算する。

時給に換算すると1,731円

上述の1カ月あたり労働時間に関して、小学校と中学校の平均値をとると、約241時間になる。小・中学校教員の平均月額収入41万7,208円を241時間で割ると、時給は計算上、約1,731円となった。

時給1,731円は、コンビニなどでのアルバイトと比べて、高い水準なのだろうか。

コンビニの平均時給は982円

インターネット上の求人サイトに目を通すと、数多くのコンビニ店舗がアルバイトを募集しているのが見つかる。とある求人サイトの統計データによると、コンビニでのアルバイト・パートの平均時給は982円だ。これが派遣社員となると、平均1,340円まで上昇する。

コンビニバイトは働く時間によって時給に大きな差があり、深夜など時間帯によっては時給が1,500円を超えるものもあった。

教員初任給は時給851円?

こうした数字を勘案すると、教職員の給与がコンビニバイト並みとまでは言えない。数字だけをみれば、教員の時給の方が高いのは明らかだ。

しかし、上述の時給計算で用いた教員の労働時間には、自宅での「持ち帰り仕事」が含まれていない。多くの教職員は学校での勤務だけでなく、仕事を自宅に持ち帰って授業の準備などを行っているとされ、こうした時間を含めれば計算した時給額は減るだろう。

また、上述の教員の時給1,731円は平均値であり、大卒の小・中学校教諭の初任給20万5,100円を時給に換算すると、その額は851円まで減る。

一概に教員の給与はコンビニバイト並みとは言えなくとも、給与水準が平均値には至っていない若い教員の中には、1か月の仕事を時給に換算すると1千円に満たない人もいる可能性がある。

教職員が置かれた労働環境はそれほど厳しいものになっているのだ。

労働環境改善策が急務

教員を取り巻く労働環境が厳しくなっている現実は、教員のなり手不足という新たな課題を引き起こし、ひいては「教育の質の低下」という深刻な事態につながりかねない。早急な対策が求められている。

文・MONEY TIMES編集部

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