私たちの生活に欠かせない、衣食住の「住」を担う不動産業界。そのような不動産ビジネスの裏側を描いた漫画『正直不動産』が人気だ。2022年4月にはテレビドラマ化もされ、ますます話題になっている。ストーリーでは不動産業界の「悪しき慣習」が取り上げられているが、その詳細を調べてみた。

『正直不動産』とは?どんなストーリー?

まずは、どのようなジャンルとストーリーの作品なのだろうか。

4年以上続く人気漫画!テレビドラマ化も

『正直不動産』は、小学館のビッグコミックで2017年から現在まで連載されている漫画だ。単行本は、2022年5月現在14巻まで発売されている。原案を夏原武氏、脚本を水野光博氏、作画を大谷アキラ氏が手掛けている。

今年4月には、NHK総合「ドラマ10」で、テレビドラマ版『正直不動産』が始まった。主人公・永瀬財地役を俳優の山下智久が演じ、他に福原遥氏や市原隼人らが出演している。

コメディ?人間ドラマ?社会派な一面も

永瀬は不動産会社のエース営業マンだ。顧客にとって得なことだけを述べ、不利なことは一切言わない「口八丁」なセールストークで売上ナンバーワンを維持していた。ところがあるときに地鎮祭で石碑を壊して以来、うそがつけなくなってしまう。

作品のキャッチフレーズは「不動産営業の本音をさらけ出す痛快皮肉喜劇!!」だ。永瀬は営業で正直すぎる発言をして顧客を怒らせたり、契約が取れなくなったりしてしまう。しかし、正直さが功を奏して結果的に顧客から感謝されるエピソードや、永瀬自身の仕事への思いの変化など、人間ドラマも描かれている。

そして、うそがつけないために不動産業界の「裏常識」を顧客に伝えてしまう永瀬から、私たちも意外な知識を得られる。

不動産業界の「裏事情」何が取り上げられている?

作品内では、「囲い込み」「あんこ業者」「地面師」「共有名義」「欠陥マンション」など、不動産をめぐる多様な話題が取り上げられている。消費者にとっては、一見何が問題なのか分からないようなものもある。

ストーリーでは、人間ドラマとともにこれらのテーマが説明されている。ぜひ注目してほしいが、今回は一部を取り上げてその詳細を調べてみた。

不動産売買に潜むわな、「囲い込み」「両手仲介」

ストーリーでは、所有しているマンションを売りたい顧客に対し「囲い込み」を行い、「両手仲介」をしようとする事例が取り上げられている。これらはどのような慣習で、違法ではないのだろうか。

両手仲介とは
両手仲介とは、1つの物件につき売主と買主の双方の仲介を、同じ不動産会社が担うことだ。一方、売主と買主を別の不動産会社が仲介することを片手仲介という。両手仲介は不動産会社にとっては双方から仲介料を得られるため、片手仲介よりも収入を上げられる。

しかし、本来少しでも高く売却したい売り手と、安く購入したい買い手の双方の利益は相反している。同じ不動産会社が双方の希望を最大限にかなえられない。つまり、両手仲介は顧客にとっては不利になりかねない。

囲い込みとは
両手仲介をするために、売却の依頼を受けた物件を他の不動産に取り扱わせないようにするため、市場に物件情報を出さないことを「囲い込み」と呼ぶ。自社で買い手を見つけることで両手仲介が成功し、消費者を差し置いて不動産会社の収益が上がる仕組みだ。

囲い込みを防ぐための規制も設けられている。宅地建物取引業法では、依頼者が1社の不動産会社としか契約できない「専任媒介契約」の場合、物件情報を7日以内に不動産流通機構(レインズ)に登録して公開しなければならない。

それでも何かと理由をつけて他の不動産会社の問い合わせを拒否する事例が後を断たなかったため、2013年の法改正ではさらに「正当な事由のない紹介拒否行為」が禁じられた。しかし現状でも、「担当者が不在」などと言って問い合わせを門前払いするケースがあるようだ。

離婚時のリスク⁉共有名義・ペアローン

テレビドラマの第3話では、夫婦が共有名義でローンを組み高額マンションを購入する「ペアローン」の話題が取り上げられている。メリットが強調されるペアローンだが、同時に大きなデメリットも抱えているという。

ペアローンとは?どんなメリットがある?

ペアローンとは、夫と妻がそれぞれにローンを組み、住宅ローンを2本借り入れることだ。家の所有権は共同名義になり、お互いの連帯保証人となる。例えば、それぞれが2,000万円のローンを組み、夫婦で4,000万円の家を購入するパターンだ。

メリットは、住宅ローン残高の一定割合が所得税・住民税から控除される「住宅ローン控除」が2人分受けられることから、1人でローンを組むよりも控除額が大きくなる点などにある。1人分の収入額ではローンが組めないような高額物件に手が届くため、夫婦の共働きが珍しくない昨今ではメジャーな選択かもしれない。

デメリットは?
『正直不動産』のストーリーでは、ペアローンの最大のデメリットに触れられている。夫婦の離婚による、共有名義とローン返済の問題だ。

ペアローンで住宅を購入後、離婚し返済が残ったローンは夫婦どちらかに1本化するか、家を売却して夫婦で借金を返していくかなどの選択がある。多額の負債を抱えるリスクが潜んでいる。物件は共有名義のため、売却したい場合は双方の同意が必要だ。実際にはローンの1本化や物件の売却に金融機関が応じないケースも多い。

業界と消費者の情報格差に着目

『正直不動産』でも取り上げられている不動産業界の言葉として「千三つ」がある。1,000の言葉の中に、真実は3つしかないという意味だ。内情を知り尽くした不動産会社側と、素人である消費者の情報格差を表している。

売買や貸し借り、投資など、不動産をめぐる話題は私たちの生活から切っても切り離せない。漫画・テレビドラマを入り口に、不動産業界の知識を学んでみてもいいかもしれない。

文・MONEY TIMES編集部

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