イギリス陸上界のスター選手であるサー・モー・ファラー氏をご存じだろうか。彼は英BBCのインタビューに、子どものころに不法にイギリスに連れてこられ、使用人として働かされていたと告白した。本記事では、そのショッキングな内容を紹介する。

「空輸」されたのは9歳の時

ファラー氏は、ロンドン五輪とリオ五輪で計4つの金メダルを獲得。イギリスの国民的英雄となった。そんなファラー氏がイギリスに住んでいる理由は想像を絶する。

騙されてアフリカ東部ジブチから会ったこともない女性によって「空輸」されたのだ。

イギリスへやってきたファラー氏は当時9歳。イギリスにいる自分の親戚の元へ行くと説明を受けたファラー少年は「わくわくした」と当時の心境を語っている。

彼の本名は「フセイン・アブディ・カヒン」。しかし女性はファラー氏に、「モハメド・ファラー」と名乗るように言った。女性は、モハメド・ファラーという名前と彼の写真が添えられた偽の旅行書類を持参していた。

「その瞬間、これはまずいと分かった」

イギリスに到着した直後、ファラー少年をイギリスまで連れて行った女性は、親類の連絡先が書かれていた紙を破り捨てたという。ファラー少年は、子供ながらにその瞬間「これはまずい」と気が付いたが、時すでに遅し。彼はそのまま、見ず知らずの家族の元で、使用人として労働を強いられた。

3年ほどファラー少年は学校にも行かせてもらえなかったが、12歳の頃ようやく学校に行けるようになったという。

学校に通い始めたファラー少年の担任だったサラ・レニー教師は、英語も通じず身だしなみも乱れて世話をされていない様子だと感じていた。ファラー少年の両親を名乗る人は一度も学校へ来なかった、サラ・レニー教師は答える。

走ることで救われたファラー氏

ファラー少年の体育教師だったアラン・ワトキンソンは、ファラー少年が唯一、体育の時間に走る時だけは生き生きしていることに気づく。ファラー少年との交流を続けるうちに、少年は自分の身の上を説明し、アラン・ワトキンソン教師は社会福祉当局に連絡した。

結果、ファラー少年は他のソマリア人家庭で養育されるようになり、陸上選手として活躍するとともに、モハメド・ファラー名義でイギリス国籍を取得した。

「走ることで救われた」と語るファラー氏。自分の経験を話す理由は、人身売買や奴隷制度に対する世間の認識を変えたいと考えたからだという。

勇気を持ったファラー氏の告白

いまだに人身売買が行われている事実を、勇気をもって告白したファラー氏。BBCはファラー氏をロンドンに「空輸」した女性にコメントを求めたが、返事はないそうだ。

文・藤森みすず

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