近年、NHKの受信料制度に関する議論が盛んになりつつある。受信料の徴収方法や適正価格だけでなく、「支払拒否」に関しても話題になっているようだ。この記事では今後の受信料のほか、都道府県支払率ランキングを紹介する。

NHKの役目は?受信料は何に使われる?

公共放送であるNHKは「いつでも、どこでも、誰にでも、確かな情報や豊かな文化を分け隔てなく伝える」ことを基本的な目的としており、「特定の勢力や団体の意向に左右されず、また視聴率にとらわれない番組作りを進めている」としている。

そのため、受信設備を有するすべての人に公平に受信料を負担してもらい、財政面の自主性を担保している。2021年度の事業収入7,009億円のうち、受信料は6,801億円。受信料収入は、NHKの収入の約97%を占めている。

支出は、大きい順に国内放送費2,967億円、給与1,114億円、減価償却費838億円、退職手当・厚生費517億円、契約収納費486億円と続く。国内放送費は番組制作や設備の保守などに使用され、番組関係が2,270億円、技術関係が696億円だ。

番組制作費をさらに細かく見ていくと、多い順に「ニュース」945億円(構成比30.8%)、「ライフ・教養」783億円(同25.5%)、「スポーツ」430億円(同14.0%)、「ドラマ」361億円(同11.8%)、「エンターテインメント・音楽」234億円(同7.6%)となっている。

また、東京オリンピック・パラリンピック放送実施関連経費として157億円、北京オリンピック・パラリンピック放送実施関連経費として27億円が計上されている。

都道府県の受信料支払率ランキング

以下の表は、NHKが公表している「2021年度末 受信料の推計世帯支払率(全国・都道府県別)」を参照し、各都道府県の推計世帯支払率をランキング化したものだ。

推計世帯支払率は受信契約の対象世帯のうち、実際に受信料を支払っている世帯数の割合を示す。なお、全国の推計世帯支払率は78.9%だ。

<受信料の推定支払率ランキング>
順位 都道府県名 推計支払率
1位 秋田県 97.9%
2位 新潟県 94.9%
3位 岩手県 94.6%
4位 島根県 94.3%
5位 山形県 93.5%
6位 鳥取県 92.9%
7位 青森県 92.5%
8位 富山県 91.9%
9位 山口県 91.1%
10位 岐阜県 89.4%
11位 福井県 88.5%
12位 福島県 87.6%
13位 長崎県 87.3%
14位 長野県 87.2%
15位 静岡県 86.1%
16位 広島県 86.1%
17位 栃木県 85.7%
18位 三重県 84.9%
19位 石川県 84.8%
20位 岡山県 84.8%
21位 香川県 84.5%
22位 宮城県 84.4%
23位 茨城県 84.3%
24位 佐賀県 84.1%
25位 鹿児島県 84.0%
26位 群馬県 83.8%
27位 徳島県 83.6%
28位 愛媛県 83.4%
29位 山梨県 83.3%
30位 高知県 82.9%
31位 宮城県 82.9%
32位 滋賀県 82.4%
33位 和歌山県 82.0%
34位 愛知県 81.9%
35位 千葉県 81.7%
36位 埼玉県 81.6%
37位 熊本県 81.2%
38位 大分県 79.7%
39位 奈良県 79.4%
40位 神奈川県 78.5%
41位 兵庫県 76.4%
42位 京都府 76.2%
43位 福岡県 73.9%
44位 北海道 70.4%
45位 東京都 67.3%
46位 大阪府 65.2%
47位 沖縄県 49.5%

東北や日本海側の都道府県がランキングの上位を占めていることがわかる。東京や大阪のように、世帯数が多い上に転居も多い大都市を抱える都道府県は低いようだ。

長らく米軍軍政下に置かれていた沖縄では、NHKよりも民放の設立のほうが早かったため、「テレビは無料」という感覚を引きずる県民がいまだに多いのだろう。

NHK受信料の支払率の推移は?

世帯支払率の推移を見ると、NHKが初めて集計した2011年度末は72.5%で、その後徐々に上昇し、2019年度末には81.8%まで伸びている。

2020年度末は80.3%となり、新型コロナウイルスの影響により全都道府県で前年度末値から低下したものの、2021年度は19府県で前年度末値より0.1〜0.8ポイント向上した。

昨今のNHK受信料をめぐる動き

放送法第64条第1項に「NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と定められている。一方で支払い義務については、日本放送協会放送受信規約第5条に「放送受信契約者は放送受信料を支払わなければならない」という内容が記載されているだけだ。

受信設備を有する人は契約義務を負っているものの、法的に支払い義務はないというのが実情だ。「では、支払わなくてもよいのか?」と思うかもしれないが、そう単純ではない。NHKは受信料徴収強化の一環として民事訴訟に踏み切る動きを進めており、最高裁では「受信料の支払い義務を伴う受信契約の締結強制も必要かつ合理的な範囲内であり合憲」と判断されている。

NHK は、2022年3月までに554件の民事訴訟を提起している。このうち、受信契約締結と受信料の支払いに応じたため訴えを取り下げたものと和解したものは393件。132件はNHKの請求を認める判決が確定しており、残る29件は係争中だ。訴えられれば、支払いを逃れることはできないだろう。

対象となる受信設備の範囲はどこまで?

では、対象となる受信設備の範囲はどこまでなのだろうか。日本放送協会放送受信規約によると、「家庭用受信機、携帯用受信機、自動車用受信機、共同受信用受信機等で、NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備」となっている。テレビをはじめ、ワンセグ機能を搭載した携帯電話やカーナビなども対象なのだ。

多くの人が「昨今のスマートフォンはワンセグ機能非搭載のものが多いため一安心」と思っていた矢先、NHKは2020年に地上放送のテレビ番組をインターネット上で同時配信する「NHKプラス」を開始した。インターネットに接続できるスマホであれば、NHKの番組を視聴できるようになったのだ。

「スマホ所有者は受信設備を有することになるのか?」と危惧されたが、NHKの見解としては「インターネット配信は放送ではない」ため、スマホの所有を受信契約に直接結びつける考えはないようだ。

NHKは今後どうなっていくの?

インターネットが普及し、公共放送を取り巻く視聴環境が変化する中、NHKは今後どうなっていくのだろうか。

総務省は2020年度に「公共放送の在り方に関する検討分科会」を設置し、2021年1月18日、「公共放送と受信料制度の在り方に関するとりまとめ」を公表した。

このとりまとめでは、NHKがグループ改革実現のために要望していた中間持株会社制の導入に関して、導入にあたり具体的な効果をNHKが検証して説明責任を果たしていくこと、そして持株会社および傘下の子会社からの配当が適切なものとなるよう、政府もチェック機能を果たすことが追記された。さらに、NHKに対し衛星付加受信料の見直しを速やかに検討するよう求める文言も示された。

公共放送としてのNHKは、「テレビ」の存在意義・価値と命運をともにする存在だ。国民に広く情報を伝達する手段として、確固たる地位を築いてきたテレビだが、近年はインターネットの台頭によってその価値が徐々に減っている印象を受ける。

情報を広く伝達することの重要性はいつの時代も変わらないが、その媒体がテレビである必然性が失われつつあるのだろう。20~30年後、情報を伝達するインフラとしてのテレビの価値がどのようになっているかを想像し、長期的視点で「放送」そのものの在り方を見直していく必要がありそうだ。

文・MONEY TIMES編集部

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