新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、生活雑貨販売の「無印良品」を展開する会社「良品計画」が経営に打撃を受けている。円安やコスト高の逆風といったことに加え、中国でのコロナ再拡大に伴う都市封鎖が追い打ちに。衣食住に関する業態だけに安定感があっても良さそうだが、一体、何が起こっているのか。

業績予想を下方修正、減益幅が拡大

良品計画は2022年6月30日、2022年8月期(2021年9月~2022年8月)の連結業績予想を下方修正した。売上高に当たる営業収益は4,700億円の見通しを据え置いたが、営業利益は前回予想から31.6%少ない260億円、純利益は25.9%少ない200億円に見直した。もともと増収減益予想だったので、当初の見込みよりも減益幅が拡大する格好だ。

下方修正の理由について、同社は公表資料で、国内では値引き強化、衣服・雑貨の販売苦戦に伴う値下げ処分、急激な円安、物流コスト上昇に伴う物流費の悪化がマイナスに作用したと説明した。6月以降も国内売り上げは厳しく、中国大陸もコロナ再拡大の影響で売り上げの回復を見込めないと説明した。

日本国内では主要都市なら必ずといっていいほど無印良品の店舗がある。2022年5月末時点で、国内の店舗数は490店に上る。ただ、海外の店舗数は同じ5月末時点で565店あり、国内の店舗数を上回っている。特に店が多いのは中国を含む東アジア地区で、海外565店のうち、428店を占める。

国内とほぼ同数の店が東アジアにあることから、2022年に入って中国でロックダウン(都市封鎖)が実行された影響を大きく受けている。上海を中心に、最大で100店ほどが休業や営業時間の短縮を余儀なくされたらしい。

円安や物流コストの上昇は、日本で作った製品を海外に輸出して売る商売にとっては追い風となる。外国から見れば、日本製品が安く見えるからだ。ところが、逆に海外で製品を作って日本へ輸入する企業にとっては逆風になる。無印良品は、後者の色合いが濃い企業というわけだ。

国内で利益率が悪化

その後の7月8日に発表した第3四半期(2021年9月~2022年5月)の連結決算では、営業収益こそ前年同期から7.5%増の3,707億円を確保したものの、営業利益、経常利益、純利益は前年同期から3割前後の減少となった。

このうち、売り上げの3分の1ほどを占める海外事業は、営業収益が12.9%増の1,337億円、営業利益が5.8%増の118億円だった。営業利益率(※営業利益の売上高に対する割合のこと)は8.9%だった。

一方、売り上げの3分の2を占める国内事業は、営業収益が4.6%増の2,370億円だった。しかし、営業利益は45.5%減の129億円となり、営業利益率は5.5%にとどまっている。期間限定セール「無印良品週間」を実施したところ、期間中は売り上げが好調だった。その反動なのか、前後は伸び悩み、利益率が悪化したという。

まとめると、海外は中国のロックダウンの影響を受けて伸びが鈍化してはいるものの、全社的な失速の原因は国内事業にあることだ。実際、第3四半期決算に合わせて公表した資料によれば、下方修正した通期の営業利益予想は、国内で従前の予想値から105億円引き下げた一方、海外は15億円の引き下げ(このうち13億円分が東アジア)にとどまっている。

価格引き下げ効果も頭打ち感

良品計画の過去の業績を見ると、営業収益のピークは2021年8月期の4,536億円だった。つまり、営業収益では今期(2022年8月期)に過去最高を更新する見通しとなっている。一方、今期の純利益予想は過去最高だった2021年8月期と比べて41.0%減の200億円の見込み。営業利益、経常利益も3割台の減少となる。

7月8日の決算説明会では、会社側が現状の課題として「収益構造の確立」を挙げた。当初は商品価格を引き下げ、それに伴って売り上げを増やし、経費効率を高め、利益率を確保する流れを思い描いていた。しかし、現実的には価格の見直しによる売り上げ向上は頭打ち感があり、粗利率は下がって固定経費率が上がったため、収益性が悪化しているらしい。

もちろん、円安などの影響も含まれるだろうが、少なくとも会社側は「価格見直しだけでは、これ以上の顧客創造は難しい」と結論付けている。

その上で、これから経費率を下げて収益性を上げるため、内製化を進める方針だという。具体的には製造現場の都合に応じて物を作ることで生産効率を極限まで高め、コストを最小化するほか、業務提携や工場との直接取引などの施策を繰り出す。システム運用も内製化して費用を削減する方向である。

衣食住に関連する分野は市場が突然なくなることはないが、身近な物を扱うだけに、日常生活の変化に伴ってニーズの種類は移ろう。無印良品の直近の業績からは、コロナ禍での生活変容を前に対応に苦慮している様子がうかがえる。コロナの感染拡大状況の先行きを見通すのは難しいが、すでに良品計画は具体的な対策に動き、時代の変化に対応しようともがき始めている。

文・MONEY TIMES編集部

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