待ちに待った「夏のボーナス」がすでに支給された人も多いだろう。ある民間企業が実施した調査では、使途を尋ねる設問(複数回答可)に「預貯金」を挙げた人が64%に上った。新型コロナウイルス禍となり2年が過ぎたが、依然として先行き不安から消費を抑える傾向は根強いようだ。

支給率はコロナ前超えも、金額は低く

キャリアや就職・転職全般に関する研究や各種調査を行う会社「ライボ」の調査 によると、2022年夏のボーナスが「支給される」と答えた比率は70.0%だった。これはコロナ禍前の2019年調査と比べて8.3%多いという。

調査は6月下旬に行われ、社会人の男女734人が協力した。平均支給額は57万8,000円。支給率は2019年を上回った。しかし、金額は2019年の平均値が70万8,000円であったところから見ると、まだまだ回復し切っていない。

金額は低めの状況を反映したと見られるのが、ボーナスの使い道だ。ビフォーコロナであればボーナスが入って最初の土曜は「ボーナスサタデー」と呼ばれ、消費が盛り上がるはずだが、コロナ禍では事情がやや違うらしい。

「ほぼ全額を貯金」の比率は…

2022年夏にボーナスが支給されると答えた人のうち「ほぼ全額を預貯金に回す」と答えた人は35.0%に上った。3人に1人以上が、せっかくのボーナスをほとんど使わないと答えたのだ。

2022年の平均支給額は2019年と比べて2割ほど少ない。この間、誰もが知る企業で人員整理や不動産の処分などが行われてきた。いくら支給率が高まったとはいえ、金額が減っていることも手伝い、大きな消費に対して後ろ向きになってしまう気持ちは多くの人が理解できるだろう。

もちろん、大きな出費を考えている人もいないわけではない 。使い道として「買い物」を挙げたのは38.7%、「旅行」が30.7%、「外食」が11.5%だった。これらは特別感のある、いわゆる「ハレの日」の消費といえる。

この点、興味深いのは32.7%が「投資」と回答している点だ。預貯金と回答した比率の高さも考え合わせると、将来への不安解消や足元の金銭的余裕を増やすことを志向してボーナスを活用する人が多数派ということになる。

日経新聞の調査では支給額が過去最高に

ところが、調査主体や調査対象が変われば、ボーナスに関する実情も違って見えてくる。

2022年7月15日の日本経済新聞の1面に掲載された記事によると 、夏のボーナス支給額(全産業)の平均値は85万3,748円で、3年ぶりに過去最高を更新した。コロナ禍からビジネスの環境が回復し、資源の高騰分を自社製品の価格に転嫁して最高益を出している企業もあったことから、支給額が押し上げられたという。

同じく日経新聞に載った関連記事 によると、業界別の支給額では、鋼材の値上げを進めた鉄鋼が77.72%増と大きな伸びを見せた。医薬品が20.96%増で、鉄道や百貨店などの非製造業も6.67%増と回復したという。

日経新聞の調査による平均支給額「85万円」は、ライボの調査結果と比べて27万円以上も高い。一般に大きな企業ほど待遇が手厚くなるので、日経新聞の調査に協力した会社の規模が大きかったか、ライボの調査に協力したのは給与が低めな若年層の比率が高かったかのいずれかが原因だろう。

ボーナスは一時金の性格を持つ。業績に連動して上下しやすいので、それが消費に回らないのは、もらう側に「今は良いけれど、先のことは分からない」という意識があるからにほかならない。そういう意味で、日経新聞の記事では、消費の底上げを図るにはボーナスの増加だけでなく、賃上げに踏み切れるかどうかがポイントになると主張している。

「モチベーションに影響」88%

さて、ライボの調査ではボーナスが従業員に与える効果に関する設問もあった。

「ボーナスは仕事へのモチベーションに影響しますか?」との問いに対して「影響する」が66.4%、「どちらかというと影響する」が22.2%、合計で88.6%となった。設問は「プラス影響」「マイナス影響」のいずれかに限定していないので、いずれも含むと考えられる。特にコロナ禍では、誰もが知る大企業であってもボーナスがなくなった例があった。支給されること自体に安心感を覚える人もいるようだ。

「もらえるだけで…」

調査では「コロナ禍で生活に不安もある中、ボーナスが支給されるのはありがたい」「良くも悪くもコロナの影響がなく、ボーナスが安定してもらえる会社のありがたさをここ2年で感じた」「コロナの感染爆発真っただ中にはボーナスがカットされたが、今年は支給された」などの声が聞かれたという。

企業も先の状況が見通しにくい中、従業員の間にも「もらえるだけで幸せ」といった意識が芽生えている。つまり、消費の拡大局面に入るためには、もうしばらく時間がかかりそうだともいえる。

文・MONEY TIMES編集部

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