長引く新型コロナウイルス禍で企業業績が悪化し、遊休資産の処分や希望退職の実施により苦境を乗り切る企業が出ている。世の中では人手不足感もあるが、一度離職したら、すぐに希望の職に就けるかは分からない。仮に生活保護を受けることになった場合、どのような点に留意すべきだろうか。

「健康で文化的な最低限度の生活」

厚生労働省の公式サイトによると、生活保護制度の趣旨は「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること」を目的としている。「健康で文化的な最低限度の生活」は、日本国憲法に規定された国民の権利だ。

受給に際しては当然ながらいくつかの要件がある。厚労省の公式サイトでは「(生活保護は)世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提」になるとしている。

もう少し具体的に説明すると、預貯金や生活に利用されていない土地・家屋があれば売却して生活費に充てて、働ける人は能力に応じて働き、年金や各種手当など、生活保護以外の手段で給付を受けられる場合は、それらを優先する。

これら全てが難しい場合、世帯収入と厚労大臣の定める基準で計算される「最低生活費」と比べ、世帯収入のほうが低ければ、その差額分の保護費が支給されることになる。

生活保護で「やってはいけないこと」

生活保護を受ける人は、生活保護法により、年齢や体力に応じて働き、支出を節約して生活の維持に努めなければならない。生活保護を受けると、してはいけないことが出てくる。例えば、ブランド品といったぜいたく品は持てなくなる。では、パチンコはどうだろうか。

栃木県佐野市の公式サイトには、市民からの「生活保護受給者がパチンコをすることを許されているのはおかしい」という投書に対し、2020年7月の回答として「禁止を強制できない」と応じている。回答によると、生活保護は資産や能力をフル活用しても困窮する国民を守る制度だが、生活保護法にはパチンコなどの遊興行為を禁じる直接的な規定はない。

仮に「どうにも生きていけない」として生活保護を受給している人が、パチンコ店で遊んでいても、生活保護を管轄する行政は遊興行為の禁止を強制できないという。制度の趣旨に照らして指導するぐらいが関の山といったところなのだろう。

最低賃金より高いのは「おかしい」?

税金を生活費としてもらっておいて、それでパチンコに行っても「おとがめなし」というのは、納税する労働者の感覚からすれば、納得しがたいところがある。こうした制度的な不備が生活保護受給者に向けられる色眼鏡につながるし、制度自体への風当たりを強くしている面がある。

例えば、生活保護制度を巡り、よく繰り広げられる批判が「生活保護基準が最低賃金や年金よりも高いのはおかしい」というものがある。極論すると「働いていない人が最低賃金で働いた人よりも多くの金を受け取れるのは、ずるい」という主張である。

この点、日本弁護士連合会が作成したパンフレットでは、根本的な問題が生活保護基準の高さではなく、最低賃金の低さにあると論じている。前述のように、生活保護基準は「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するために必要な金額として、1円単位の積み上げで綿密に計算される。

むしろ、最低賃金や年金が、そうした生活を送る上で必要な水準を下回っている事態が問題であり、そちらを解決すべきだという。ちなみに、同じパンフレットでは「手厚い生活保護が国家財政を圧迫しているので縮小すべき」という主張に対しても、日本の生活保護予算はGDP比0.5%に過ぎず、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均額における7分の1の小ささであり、財政への圧迫度は低いと説明している。

制度の改正が待たれる

まとめると、生活保護の水準自体は日本弁護士連合会の言うように「高過ぎる」ことはないのかもしれない。本当に勤労意欲があり、それでも一時的に働けず生活に困る家庭を救うセーフティネットは、あってしかるべきだ。

ただ、ここまで見てきたように、生活保護への否定的な見方を形づくる要因の1つが、生活保護を使ってパチンコで遊んでも注意されない、というような「抜け穴」とも言うべき不備にあると言えそうだ。そうであれば、制度自体が有効に活用され、世間からあたたかい目で見守ってもらえるように、制度内容の一部を変更することも求められよう。

文・MONEY TIMES編集部

【関連記事】
サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
退職金の相場は?会社員は平均いくらもらえるのか
後悔必至...株価「爆上げ」銘柄3選コロナが追い風で15倍に...!?
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!