家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して受理された場合、財産の相続が放棄できます。受理後は原則的に取り消しができないため、相続放棄をするかどうかは、慎重に検討する必要があるでしょう。相続放棄申述書作成の注意点と書き方を解説します。

目次
相続放棄申述書とは
相続放棄申述書作成のポイント

相続放棄申述書とは

相続放棄申述書を提出すると取り消せない? 注意点と記入のポイント
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

相続を放棄する際は、裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出します。申述には期限があり、期限内に提出できなかった場合は、被相続人の財産を無条件に引き継ぐ「単純承認」を受け入れたものとみなされます。

相続放棄にあたり家庭裁判所に提出する書類

相続放棄申述書とは、相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述する書類です。

相続人になると、被相続人のプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継がなければなりません。そのため、相続人には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択する権利が与えられます。

  • 単純承認:すべての財産を無条件に引き継ぐ
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を清算し、余ったプラスの財産があれば引き継ぐ
  • 相続放棄:すべての財産を放棄する

相続放棄を選択した際は、家庭裁判所に対して相続放棄申述書と必要書類を提出します。

申述の期限

相続放棄の申述ができるのは、「自分への相続の開始があったことを知った時点から3カ月以内」です。被相続人が死亡した日ではなく、自分が相続人になったことを知った日が起点となる点に注意しましょう。

近親者であれば、被相続人の死亡から一両日中に相続についても把握できるかもしれませんが、長年離れて暮らしている人や離婚後に音信不通になったといったケースでは、死亡から数カ月以上経って初めて相続の事実を知るケースもあります。

3カ月間は「熟慮期間」とよばれ、相続放棄または限定承認の選択が可能です。期限を過ぎても申述書が提出されない場合には、単純承認をしたものとみなされます。

提出方法

相続放棄申述書は家庭裁判所の窓口で入手するか、裁判所のウェブサイトからダウンロードします。必要書類をそろえたあと、申述期限内に「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」へ提出しましょう。

提出方法は、「窓口に持参する」「郵送で提出する」の2パターンがあります。郵送で提出する際は、期限内に確実に届くことが前提です。書留やレターパックプラスなど、郵便物の配達状況が追跡できる方法を選ぶのが賢明といえます。

提出して約1~2週間後に、家庭裁判所から「相続放棄の照会書(回答書)」が届くため、回答を記入して返送しましょう(届かないケースもあり)。申述書が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届き、相続放棄が成立するという流れです。

相続放棄申述書作成のポイント

相続放棄申述書を提出すると取り消せない? 注意点と記入のポイント
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

相続放棄申述書には決められた書式があり、記入ミスや不備があると裁判所から訂正を求められる場合があります。相続放棄申述書のポイントを見ていきましょう。

押印は認印でも可

相続放棄申述書には、申述人の記名・押印の欄があります。

印鑑には、実印・認印・ゴム印の3種類がありますが、相続放棄申述書で使えるのは、実印と認印のみです。インクが本体に内蔵されたタイプのゴム印は使えません。

相続放棄の一連の手続きでは、すべて同じ印鑑を使うため、どの印鑑を使ったのか、きちんと覚えておきましょう。

パソコン入力や代筆はできる?

相続放棄申述書は、パソコン入力や代筆が可能です。

記入欄は、黒い太枠の箇所のみなので、手書きでも時間はかからないでしょう。鉛筆やシャープペンシルは使用せず、ボールペンや万年筆を使用します。訂正時は誤字に二重線を引いてその上に訂正印を押し、その脇に書き直すのがルールです。

なお、相続放棄の回答書は原則、本人が記入・押印します。やむを得ない場合は代筆が可能ですが、「被相続人の財産を相続する人」と「その配偶者」を除いた人に依頼しなければなりません。回答書の所定の欄には、以下を記入しましょう。

  • 代筆の理由
  • 代筆者との関係
  • 代筆者の住所
  • 代筆者の署名・押印