新卒大学生向けの就職活動情報サイトに掲載された「底辺職業ランキング」に関する記事が2022年6月下旬以降、インターネット上で大炎上している。該当記事はすでに削除されているが、学生に対して職業差別を助長するかのような内容は、今や海外ニュースでも報じられているほどだ。

「底辺」とされた12の職業

問題になったのは就活情報サイト「就活の教科書」が掲載していた記事で、ランキングで紹介された12の職業は以下の通りである。

・土木・建設作業員
・警備スタッフ
・工場作業員
・倉庫作業員
・コンビニ店員
・清掃スタッフ
・トラック運転手
・ゴミ収集スタッフ
・飲食店スタッフ
・介護士
・保育士
・コールセンタースタッフ

記事はすでに削除されているため、各種報道とスクリーンショット画像を基に、記事の内容を振り返る。

6月29日のJ-CASTニュースの報道によると、ランキングに関する記事は2021年5月までに公開され、編集部員と就活生の対話形式で「世間一般に呼ばれている底辺職業」「底辺職の特徴やデメリット、底辺職を回避する方法」を解説する、という流れだった。

記事の冒頭は「何を底辺職だと思うのかは人それぞれ」であり、「一般的に底辺職と呼ばれている仕事は、社会を下から支えている仕事」と、どこか遠慮した言い回しから始まっていたらしい。記事の冒頭が言い訳じみた記述だったことを考えると、書いた本人も当初から炎上の可能性を視野に入れていたのだろうか。

「職業に貴賎なし」

記事に対する最も多い批判は「職業差別を助長する」というものだ。

Twitter上の反応に加え、俳優の谷原章介さんが出演するテレビ番組で「すごく上からの目線を感じますし、僕は親から職業に貴賎なしと教わったので、あらためてこういうことを考え直して、そういったブルーカラーの皆さんのこと、仕事に感謝をしたい」と発言するに至った。

記事中では「底辺職業」の特徴について、①肉体労働である、②誰でもできる仕事である、③同じことの繰り返しであることが多い、の3点を挙げた。確かに、このランキングには建設工事や介護の現場で体を動かして汗を流す「①肉体労働」が多い。まさに谷原さんが言うところの「ブルーカラー」に分類される仕事だ。

ただ、12の職業には就業に特別な資格や免許が必要な仕事もあれば、アルバイト従業員の比率が高い仕事もある。それゆえ「②誰でもできる」と言い切れるかどうかは判断が分かれるところだろう。

「③同じことの繰り返し」は、保育士や介護士なら子どもや高齢者の行動、トラック運転手なら道路の混雑具合、コールセンタースタッフなら相手の出方など、日々刻刻と変化する状況に対応する必要がある。それぞれマニュアルはあるだろうが、それは12の仕事以外でも同じで「マニュアル」と呼ばれなくても有形無形のルールに従って働くはず。③も全員が納得できるわけでもなさそうだ。

エッセンシャルワーカーが多い

こうした特徴付けとともに「底辺」と呼ばれた12の職業の中には、むしろ社会で欠かせない「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる仕事もある。こうしたことから、俳優の梅沢富美男さんは出演した番組で「失礼だよ。みんな必要なやつ(仕事)じゃないか、見たら。保母さんとか看護師さん、ランクに入ってんだよ。あの人たちがいなかったらどうすんだ?バカヤロー」と怒った。

そもそも、記事冒頭では「社会を下から支えている」と表現しているが、「支える」というのは下方から上方に向かって力を加えることを指す。そこにあえて「下から」と書き足したところに悪意を感じないだろうか。

さて、このランキングを掲載した記事では、12の職業に就くデメリットとして、①平均年収が低い、②結婚のときに苦労する、③体力を消耗する、を挙げた。①は統計的な事実だから揺るがないとしても、②と③には個人差が大きい。結婚に当たっての障害は職業だけではなく、複合的なものだろうし、体力なら営業職もスポーツインストラクターも消耗する。

こうして見ると、記事の筆者が身近なところで聞いた話を基に、デメリット3つと12の職業を選び、その共通点を後付けで考えたようにも思える。今や、この記事は国内やインターネットの枠を超え、海外メディアも取り上げるに至った。

サイト運営者のモラル問われる

この記事が掲載されたのは前述の通り、学生向けに就職活動に関する情報を提供するサイトで、大阪市に本社を置く会社Synergy Careerが運営している。

今回炎上した最も根源的な要因は、本来なら社会人になろうという学生に働くことの意義を伝えてしかるべき立場のサイトや会社が、職業差別を促すような記事を掲載したことにありそうだ。

インターネット上で、サイト運営会社に対して「他人の職業をどうこう言う前に自身の職業倫理、モラルが欠如しているのではないか」という声が上がっているのは皮肉なものである。

文・MONEY TIMES編集部

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