2022年7月2日未明から発生したKDDIの大規模通信障害は、全面復旧までに86時間を要し、最大で3,915万回線に影響が及んだ。今や携帯電話はあらゆる社会・経済活動を支えるインフラになっている。日本で電話が使えなくなった場合、社会生活は維持できるのだろうか。

電話、SMS、インターネット……影響はKDDI以外の事業者にも

KDDIの通信障害は2日午前1時35分ごろから発生した。音声通話がつながりにくくなっただけでなく、SMS(ショートメッセージサービス)が送受信できず、インターネットも利用できなくなった人がいた。

通信障害の影響は個人の利用者にとどまらず、KDDIの回線を利用している楽天モバイルや他の格安スマートフォン会社のサービスにも支障が出た。今回のKDDIの通信障害は、影響を受けた利用者の多さもさることながら、過去の通信障害と比べて全面復旧までに要した時間が長かったことも特徴の1つだ。

そもそもなぜ、このような通信障害が発生したのか。

定期メンテナンスから大規模通信障害に発展

KDDIは2日未明に行っていた定期メンテナンスの中で、機器の交換時に生じた不具合により通信障害が起きたと説明している。このメンテナンスでは、音声通話に関わる「ルーター」という機器を入れ替えていた。

このルーター交換時に生じた不具合が、音声通話に関わる別の交換機へのアクセス集中を引き起こし、さらに加入者の位置情報などを記録するデータベースにもアクセスが集中した。

こうした通信の混雑を輻輳(ふくそう)といい、輻輳は携帯電話事業者が回避すべき重大トラブルの1つだ。KDDIは通話や通信が完全に使えなくなることを避けるため、通信量を制限せざるを得なかった。これが、全国的に電話がつながりにくくなった要因だ。

このような状況下で、通話や通信に必要なデータ処理が追いつかなくなったほか、交換機からデータベースに過剰な通信が発生していることを把握するのも遅れた。滞りなく済むと考えられていた定期メンテナンスは、こうして長期通信障害へと発展していった。

社会インフラが機能停止するリスク

今回のKDDIの通信障害は、モバイル通信ネットワークが個人の利用にとどまらず、社会・経済活動の基盤となっている実態を改めて浮き彫りにし、社会インフラが機能停止するリスクを再認識させた。

アメダスの観測データ、一部消失

気象庁は全国の降水量や気温などを観測する地域気象観測システム「アメダス」を運用している。全国1,284ヵ所に観測所を設置して気象データを収集し、気象災害の防止や軽減に役立てている。

この1,284ヵ所の観測所のうち、898ヵ所がKDDIの通信回線を利用していた。今回の通信障害で一時、気象データを収集できなくなった観測所は計802ヵ所に上り、ピーク時は約550ヵ所で同時に観測データが収集できなくなった。KDDIの通信障害は、日本の気象観測システムにも影響を及ぼしていたのだ。

電話が使えなくなったときの対処法は?

もし、また同じような通信障害が発生した場合、どのように対処すればよいのだろうか。

Wi-Fi
今回の通信障害により、KDDIの利用者は電話や4G回線などが一時使えなくなったが、Wi-Fiの利用は可能だった。電話もネットも使えなくなり、緊急の連絡をしなければならない場合は、無料の公衆Wi-Fiを探すのも選択肢の1つだ。

Wi-Fiスポットが見つかればインターネットに接続でき、LINEなどのアプリを通じて連絡を取れる。KDDIの通信障害をめぐっては、「不幸中のWi-Fi」という言葉がツイッターでトレンド入りしたほどだ。

万が一の場合に備えて、自宅でWi-Fiを利用できる環境を整えておくのも効果的だ。

テザリング
公衆Wi-Fiがすぐに見つからず、別のキャリアのスマートフォンを所持している場合は、「テザリング」によってインターネットに接続できる可能性がある。

テザリングとは、インターネットに接続したスマートフォンがWi-Fiルーターの役割を果たし、通信を中継する機能だ。

例えば、KDDIの通信障害でauのスマートフォンが利用できなくなっても、所持しているドコモのスマートフォンがインターネットに接続できれば、ネット回線をauスマートフォンに飛ばせる仕組みだ。

公衆電話
公衆Wi-Fiが見つからず、テザリングも利用できないときは、公衆電話を利用するのも選択肢の1つだ。特に救急車や消防車を呼ぶ「119」や警察への通報「110」は、緊急通話として無料で利用できる。

公衆電話は携帯電話の普及に伴い台数が減少しているのが難点で、あらかじめどこに公衆電話が設置されているか把握しておくとよいだろう。

通信障害がまた起きる可能性

携帯電話の通信障害は今後起きないとは限らない。次に電話が使えなくなった場合を想定して、今から対処策を考えておくことが危機の回避につながるだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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