以上、「ノルド・ストリーム2」の操業、「武器の供給」、そして「国防費の拡大」の3点はいずれも難しい課題だ。今回、ショルツ政権が短期間で次々と決定を下すことができたのは、首相自身が言っているように「ロシアのウクライナ侵攻が時代を転換させた」からかもしれない。アンナレーナ・ベアボック外相(緑の党)は、「この紛争では誰も中立であることはできない」と警告している。

ショルツ政権の大変身は、今風にいえば、ウクライナ危機という時代が提示したモメンタムを無視して考えられない。今回の決定は連邦議会で今後、議論を重ねて最終的に決定することになるが、ショルツ政権はドイツの安全・国防政策で新しいかじ取りを始めたことになる。メルケル政権の16年間、保守政党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)が出来なかった戦後の安保・国防政策をSPDと緑の党が入ったショルツ政権が大転換させたのは少々、皮肉ともいえる。いずれにしても、戦後からの平和憲法に固守し、安保・国防意識が失われてきた日本にとってもドイツの大変身は刺激的だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年3月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

文・長谷川 良/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?