<2月26日>
ショルツ首相はウクライナに1000個の対戦車兵器と500個の携行式地対空ミサイル「スティンガー」を供給すると決定した。

ウクライナ政府はNATO加盟国に対し、武器の供給を要請。英国やフランスなどは素早く武器を供給したが、欧州の盟主ドイツはナチス・ドイツ政権での蛮行への反省もあって、紛争地への武器輸出は禁止してきた。そのためウクライナ要請を受け非戦闘用のヘルメット5000個の供給を明らかにした。すると、親独派の元プロボクシング世界チャンピオンのキエフ市長は「がっかりした。ドイツは次は枕でも我々に送ってくるのではないか」と皮肉ったほどだ。

ロシア軍とウクライナ政府軍間の戦いが始まると、戦力的に大きく守勢を強いられているウクライナ政府軍への武器支援は緊急課題となり、米国、英国、ベルギーなどは武器の追加供給を実施。その中で、ドイツへの圧力が高まっていった経緯がある。

<2月27日>
ショルツ首相は連邦議会(下院)の特別会期で、「ドイツ連邦軍特別基金」を通じて軍隊の大幅拡大を発表、この目的のために基本法を変更したいと主張。具体的には、「2022年の連邦予算はこの特別基金に1000億ユーロ(約13兆円)の一時的な金額を提供する」と述べた。同時に、「国防費を国内総生産(GDP)の2%以上に引き上げる」と表明した。

トランプ前米政権下でもドイツに対し、GDP2%以上の国防費を上げるべきだという圧力があったが、メルケル前政権はそれを拒んできた。NATOでは加盟国はGDPに2%を国防費にするという目標を掲げてきたが、米国ら数カ国だけが実現し、ドイツら多くの加盟国は2%以下だった。ショルツ首相は今回の決定を下すことで、「ドイツが米国と共にNATOで主要な役割を果たしていく」というメッセージを内外に向け発したことになる。ショルツ首相は「私たちはターニングポイントを経験している」(Wir erleben eine Zeitenwende)と述べ、ウクライナ危機でドイツの国防意識が目覚めてきたことを暗に示唆している。ドイツの一部メディアは「ドイツ再軍備宣言」と今回の決定を呼んでいる。