平時には議論があっても煮詰まることはなく、別の用件が出てくればすぐに忘れられる。しかし戦時の場合、議論が十分でなくても決断が下されるものだ、といった印象をドイツのショルツ政権の最近の動きをみて感じる。
ロシア軍のウクライナ侵攻は28日で5日目を迎えた。プーチン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に交渉を呼びかける一方、兵力を増強して首都キエフなどで武力侵攻を進めるなど、硬軟交えた攻勢をかけてきた。ウクライナ政府軍の予想外の抵抗もあって、短期間でウクライナを制覇できると考えてきたプーチン氏は27日、「核戦力の投入」を表明し、ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)加盟国を威嚇し出した。
ウクライナ情勢が刻々変化する中で、欧州の近くで起きた戦争に直面する欧州諸国ではさまざまな動きが出てきているが、その中でもドイツのショルツ政権の変身ぶりに注目が集まっている。
ショルツ首相はロシア軍のウクライナ侵攻前にプーチン大統領と対面会談した最後の欧州首脳となった。同首相は2月15日、プーチン氏にウクライナ侵攻を断念するように説得したが、成果はなく帰国。その数日後の2月24日、プーチン氏はウクライナ侵攻を宣言した。ショルツ首相の調停外交はマクロン仏大統領と同様、メディアの関心は集めたが、それ以上ではなかった。
注目すべき点は、ショルツ首相の「その後」の動きだ。同首相は、プーチン氏が主導したウクライナ危機が突き付けてきた課題を次々と解決するために乗り出してきたのだ。以下、時間の経過に沿って、ドイツ政府の大変身ぶりをまとめる。