2022年に入り、1万品目以上の食品が平均13%値上げされた。給料が上がらない中での値上げは、消費者の生活を直撃する。次々と値上げが行われるなか、なぜ給料は上がらないのか。このまま、日本全体が貧しくなってしまうのではないだろうか。

ここでは、値上げラッシュなのに給料が上がらない背景や国の施策について解説する。

2022年は値上げラッシュ 

帝国データバンクの調査によると、2022年5月末までに値上げが実施・計画されている食品は累計1万789品目に及び、価格上昇はは平均13%となる。

このうち、約6割が6月までに値上げされるが、残り4割は7月以降に値上げが行われる。特に8月に予定されている値上げは1,600品目を数え、1ヵ月単位で見ると今年最多となる見込みだ。また、9月以降も1,000品目以上が値上げ予定。

食品の種類別に見ると、値上げ品目がいちばん多いのは加工食品(全体の40%)、次いで酒類・飲料(同21%)、調味料(同20%)となっている。特に値上げする酒類・飲料の8割は、7月以降に値上げが行われる。

物価上昇なのに給料が上がらないのはなぜ?

日本は20年以上、貨幣よりも物価が下がる「デフレ」が続いていたこともあり、値上げに対して抵抗感が強い。デフレ経済が続くとモノが売れず企業の業績が悪化するため、従業員の給料は上がらない。

給料が上がらないので消費者の財布のひもは固くなり、企業は売ろうとして値下げを実施するので物価はさらに下がるという悪循環、いわゆる「デフレ・スパイラル」に陥る。日本経済が停滞している原因は、デフレ・スパイラルに陥っていることだ。

そこで、政府は2010年代に入ると、デフレ・スパイラルから脱却するために「消費者物価指数を前年同月比で2%上昇させること」を目指した。2022年4月、消費者物価指数の総合指数が前年同月比で2.5%上昇し、目標は達成できたかに見えた。

「消費者の購入意欲が上がることで物価の上昇が引き起こされ、給料も上がって経済が活性化される」というのが、政府の描いたシナリオだったが、今回の物価上昇は消費者の購入意欲が上がったからではない。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた、エネルギーの高騰や原材料価格の上昇が引き金となっている。

消費者の需要の増加とは関係ないところで物価上昇が起きているため、今回の物価上昇が給料のアップにはつながらないのである。

「最低賃金全国平均1,000円以上」は実現する?

経済の活性化のためには消費者の需要を喚起する必要があり、そのために労働者の給料アップは不可欠だ。政府は2022年6月7日に閣議決定した「骨太の方針2022」で「最低賃金の全国平均について、できるだけ早期に時給1,000円以上を目指す」とした。

2021年10月1日から適用されている、最低賃金の全国平均は930円。都道府県別では、東京都と神奈川県だけが1,000円を超えている。2020年度から2021年度の引き上げ額は全国平均で28円となっており、この引き上げ幅は過去最大だった。このことから考えると「全国平均の時給1,000円以上」が実現するのは、早くて2~3年後と予想される。

だが、中小企業の中には「製造業の場合、原材料価格が高騰しているうえ、さらに人件費のアップ分を価格に転嫁するのは難しい」と懸念するところもある。小売業やサービス業など非正規雇用の割合が高い中小企業では、給料アップが経営の負担になる可能性が高い。

物価上昇を許容することは給料アップにもつながる?

労働者の給料アップと物価の上昇は「卵が先か、ニワトリが先か」の話とよく似ている。人々の給料が上がれば消費意欲が上がり、需要の増加とともに物価は上昇する。企業はモノをたくさん生産するから、従業員の給料は上がる。つまり、物価上昇を消費者が肯定的に受け入れなければ、給料はなかなか上がらない。

しかし、長いデフレ状態に慣れてしまっている日本人は、物価の上昇に強い抵抗を抱いており、企業はモノやサービスに人件費の上昇分の価格を転嫁しにくい状況にある。物価の上昇が給料アップにつながることを、消費者であり労働者である国民がどこまで理解し、受け入れられるかが試されているのではないだろうか。

文・はせがわあきこ

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