米国のスターバックスで2022年から従業員の賃金が引き上げられ、平均時給が約17ドル(約2,200円)となった。アメリカでは長引くインフレを背景に、スタバの他にも有名企業が賃上げし、最低賃金を引き上げた州も多い。日本の賃金とは差が広がるばかりだ。

米国スタバで賃金10%アップ!

今や誰もが知る世界的コーヒーチェーンのスターバックスが、米国内の従業員の賃金を最大で10%引き上げた。高時給の理由や日本のスタバの時給との比較を見る。

なぜ上昇?日本のスタバは時給いくら?

米スタバの賃金引き上げの背景には、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んでいた景気が回復傾向に転じ、飲食業界などで人手不足が深刻化していることがある。

一方で日本のスタバの時給はいくらぐらいなのだろうか。公式サイトによると、東京都で時給1,090円から、大阪府で1,030円からとなっている。後述する各都府県の最低賃金を40円程度上回るイメージだ。

6月現在、1ドル130円以上の急激な円安が続いている点を考慮しても、日米の時給の差には大きなインパクトがある。

大手有名企業も相次いで賃上げ

米国ではインフレが長引いている。米労働省によると、4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.3%上昇した。賃上げで働き手を確保するため、スタバの他にも日本でもよく知られる有名企業が時給を引き上げている。

例えばアマゾン・ドット・コムは2021年9月、米国内の物流部門などで勤務する従業員の平均最低時給を約15ドルから18ドル(約2,400円)以上に引き上げた。米アップルも、店舗従業員などの時給を最低22ドル(約2,900円)とした。

米国全体で賃金は上がり続けており、アメリカ労働統計局(BLS)のデータでは、2022年4月の全労働者の平均時給は31.85ドル(約4,200円)だった。1年前の30.2ドル(約4,000円)から5.5%増加している。

25州で最低賃金を引き上げ、1ドル上昇も

米国の最低賃金は、「連邦最低基準」の時給7.25ドル(約970円)以上の金額が州ごとに設定される仕組みだ。2022年に最低時給を引き上げた(または引き上げを予定している)州は全米50州のうち半数の25州に及ぶ。

州ごとの最低時給は?最高額は15ドル(約2,000円)

最低賃金が引き上げられた州の例は以下の通りだ。

<主要な州の最低時給と上昇額>
2021年 2022年 上昇額
カリフォルニア州 14.00ドル 15.00ドル 1.00ドル
マサチューセッツ州 13.50ドル 14.25ドル 0.75ドル
ニューヨーク州 12.50ドル 13.20ドル 0.70ドル
イリノイ州 11.00ドル 12.00ドル 1.00ドル

最低時給が最も高くなったカリフォルニア州は、連邦最低基準額の2倍以上となっている。

日本の最低賃金の現状

一方で、日本の最低賃金はどうなっているのだろうか。

2021年に引き上げられたが……

2021年10月から、全国の最低賃金が平均28円引き上げられ、平均930円となった。菅義偉前首相は以前から賃金引き上げの必要性を主張しており、日本商工会議所などの強い反発を受けながらの実施だった。それでも、米国の賃上げの現状を見ると「日本は賃金が上がらない」という印象が強い。

最低時給が高い・低い都道府県はどこ?

最低賃金引き上げで、各都道府県の最低時給はいくらになったのか。金額が高い都道府県は下の通りだ。

<最低賃金の高い都道府県と金額(2021年)>
順位 都道府県名 最低賃金(時給)
1位 東京都 1,041円
2位 神奈川県 1,040円
3位 大阪府 992円
4位 埼玉県 956円
5位 愛知県 955円

また、金額が低い県は以下となっている。

・青森、秋田、山形、大分:822円
・岩手、鳥取、愛媛、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島:821円
・高知、沖縄:820円

米国と日本、何が違う?

米国で賃上げが続いているのは、長引くインフレが影響していると触れた。日本の現状はどうなっているのか。

国内でも深刻化するインフレ

総務省の統計によると、2022年4月の消費者物価指数(CPI)は、総合指数で前年同月比2.1%上昇した。消費増税の影響を除けば、1991年12月以来の高水準となっている。ウクライナ情勢に影響を受けた原油などエネルギー価格の高騰や、急激に進む円安を背景に、日本でもインフレが続いている。

日本で賃金が上がらない理由とは

物価が上がり、インフレに陥っている点は共通しているにも関わらず、なぜ日本では米国のような賃上げが起きないのか。

2020年前半以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、経営状況が悪化している企業が多い。そもそも米国経済のような勢いの成長がなく、コロナ禍からの回復も十分とは言えず、企業側に賃上げをするだけの体力がないとの指摘がある。

前述の「最低賃金増額」が厚生労働省などで議論されていた際、日本商工会議所会頭は経営者側として「大幅な引き上げは廃業を増加させ、雇用に深刻な影響が出る」との趣旨のコメントをした。

また、米国のように人手不足が深刻化していないとも言える。有効求人倍率(求職者数に対する求人数の割合、1を上回るほど人手を探している企業が多いことを意味する)は、2021年度の全国平均で1.16倍だった。コロナ禍以前の2019年度は1.55倍だ。

実質賃金低下、さらなる経済悪化のおそれも

物価の上昇が続いているにも関わらず賃金が上がらなければ、実質賃金の低下をもたらす。労働者にとっては日用品などの商品やサービスに「手が届かない」状況になり、結果として景気が悪化、国内経済全体が停滞しかねない。米国を含む諸外国で賃上げの傾向が強まっている中、日本でも適切な対応を求める声が高まるだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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