目次
契約直前にプロジェクトが打ち切られたら?~契約締結上の過失〜
契約を切られにくいフリーランスになる方法
契約直前にプロジェクトが打ち切られたら?~契約締結上の過失〜
ぽな:
ここまで契約がある前提でお話してきましたが、あるある事例として、商談がトントン拍子に進み、「さあ、あとは契約書交わすぞ」という段階になって、クライアント都合でプロジェクトが立ち消えになるというケースもありそうです。
この場合、フリーランス側でも資料を買ったり、他の仕事を断ってスケジュールを空けていたり、ということもあると思うんですが、そういう場合にフリーランス側がクライアントに損害賠償を求めることは可能なのでしょうか。そもそも契約が結ばれていないので、契約の打ち切りとはちょっと違う感じになりそうですが……。
河野:
契約そのものは口約束でも成立しますので、その時のやりとり状況によってはすでに契約が成立している、と考えられるケースもあるでしょうね。
また契約が成立していなかったとしても、契約が成立する前提で相手に投資をさせたような場合には、契約の締結交渉中の相手に信義則上損害を与えてはいけないよね、という考え方もあるんですよ。契約法の世界で「契約締結上の過失」といわれているものです。
ぽな:
契約締結上の過失といいますと、歯医者さんの事例を聞いたことがあります。歯科医院を開業しようとしている歯医者さんがマンション分譲業者といろいろやりとりをしていて。
業者側では歯医者さん側の意向を組んで内装工事をいろいろして準備していたのに、最終的に歯医者さん側が「やっぱり契約やめます」と言い出して裁判沙汰になったという……。で、最終的に歯医者さん側が負けて、業者側に賠償金を支払うことになったんですよね。
河野:
フリーランスの場合、自分の時間とお金を投資して、案件に備えるわけでしょう。だから、その歯医者さんでいう内装工事にあたるのが、スケジュールのやりとりだったり、資料への投資だったりするわけです。
というわけなので、「資料買いました」とか「スケジュールあけました」といったことは、こまめにクライアントに言っておくといいですね。ちゃんとやってるクライアントなら、そう言われて悪い気はしないですから。
ぽな:
むしろ「やる気あるじゃん!」ってプラスの評価になりますよね。で、こうしたやりとりをメールできっちり残しておく、と。
河野:
そういうのが残っていると、意外とあとで役立つんですよね。
契約を切られにくいフリーランスになる方法
ぽな:
これまで契約の打ち切りを中心にいろいろ話してきましたけど、損害賠償してもらうにしても、未払いのギャラを求めるにしても、最後はクライアントと戦わないといけないですよね。
被害額が数十万円、数百万円だったら、弁護士の先生にお願いするのもわかるんです。でも、額がわずかだと、いちいち弁護士さんに依頼するのも……。そもそも、トラブルに巻き込まれないことが理想だと思うんですけど、理不尽な切られ方をしないための対策ってありますか。
河野:
これ、すっごく厳しい話になってしまうと思うんですが……。
たとえば業務を縮小するような場合であっても、クライアント側ではフリーランス全員をいっせいに切るみたいなことはしないと思うんですよ。「○○さんは最後まで残そう」みたいな風に優先順位をつけているはずなんです。
ぽな:
ひええええ! でも、クライアントさんの立場になってみれば、わかる気もします……。
河野:
では、どうやって優先順位付けをするのか。まず、仕事ができる人。これは当然残したい。会社が傾いても、最後まで最優先で残してくれます。
次に、優先順位が高くなるのは……ズバリ「めんどくさい人」です!
ぽな:
契約書めっちゃ読んでいて、きちんと権利主張する人。そういった敵に回したら怖そうな人は切られにくい……ということでしょうか。
河野:
そうですね。きちんと仕事をするのは当然として、そういう自分の権利主張をしっかりできるフリーランスは切られにくいです。相手も人間ですから、面倒な人と戦うのは嫌なんですよ。
ぽな:
なるほど……。ということで、フリーランスのみなさん、聞きましたか。面倒くさがらずに契約書はきちんと読みましょう!