フリーランスにとって一番恐ろしいもの。それは、契約の打ち切り!

期間満了で契約が終わるならまだしも、突然「今月で契約は終わりです」とクライアントさんから切り出されたら……。考えただけでもぞっとします。

契約が打ち切られそうになったとき、我々フリーランスはどうしたらいいのでしょうか。そもそも、突然の契約解除なんてアリなんでしょうか。

というわけで、毎度おなじみの河野冬樹弁護士に、フリーランスの契約打ち切り問題について、あれやこれやと伺ってまいりました。

目次
法律上、クライアントはいつでも契約解除できるってマジですか?
契約解除時の損害を賠償してもらえない場合はどうすればいい?

法律上、クライアントはいつでも契約解除できるってマジですか?

ぽな:
先生、フリーランスっていつ仕事がなくなってもおかしくないと思うんですが、急に契約を打ち切られたらどうしたらいいんでしょうか。「まずは契約書を見ろ」って話かもしれませんが、契約書に細かく書いていない場合はどうしたら……。

河野:
ではまず、「成果物を作って納品する」請負タイプの契約という前提で、クライアントが契約を解除できる場合について確認してみましょう。

契約で特に決めていない場合、民法の規定には、請負人が仕事を完成しない間は、成果物を納品するまでの間、いつでも損害賠償して契約の解除をすることができるという内容があります。

この「損害を賠償して」というのがポイントです。まず損害に含まれるものといえば、ギャラが代表的なところですが……。

ぽな:
ええっと、つまり、途中で解除されても、最低限のギャラはもらえるってことですか? 仕事しなくてお金もらえるってことは、むしろラッキーなのでは……?

河野:
そうなんですよ(笑)。基本的には「損害=仕事の報酬」と考えてもらえばいいんですけど、じつはここでいう損害には、「逸失利益も含まれる」んです。つまり仕事をした際に必要な材料費やギャラだけじゃなくて、「その仕事が続いた場合に得られるはずだった利益」も損害に含まれるということです。

ぽな:
むむ、なるほど……! たとえばイラストレーターさんの場合、仕事のギャラとは別に、ライセンス契約を結んで使用料を取ったりしますよね。その、本来だったら入ってくるはずだった使用料なんかも損害に含まれるということでしょうか。

河野:
そういうことです。「そこまでもらえるんだ!」と喜ぶ人もいるかもしれませんが、逆にライセンス料が入ってくることを見越して、最初の報酬を低めに設定していた場合には問題になりやすいです。この点には注意が必要だと思います。

契約解除時の損害を賠償してもらえない場合はどうすればいい?

ぽな:
うーん……。最低限報酬を払ってもらえれば、途中で契約を解除されても納得できるフリーランスも多いかもしれませんね。

でも、ぶっちゃけた話、損害を賠償してくれないクライアントもいそうじゃないですか。そういう場合はどうすればいいんですか?

河野:
これについては、基本的な考え方として、請負の代金を請求すればいい、というケースが大半だと思います。

ぽな:
と、いいますと?

河野:
損害を賠償すればふつうは解除できるのに、それをしないということはですよ。「解除します」という通告もきちんとやっていないケースが多いのでは?と考えます。

ぽな:
ああああ、なるほど! クライアント側は解除したつもりでも、まともに手続きができていないので、法的には契約が生き残っている状態になるんですね!

河野:
そういうことです。だから、ふつうに「納品しました。報酬払ってください」で終わるのではと。いや、もちろん書面でなくても、理屈としてはメールやチャットでも解除の通告はできるんですよ。

ですが、たとえば解除って言葉を使わずに、「もう結構です」とメールで言ってきたクライアントがいたとします。それが解除の意思表示といえるのかというと……。解釈によっては「今回送ってもらったもので結構です。納品ということでいいです」という読み方もできますから。

ぽな:
た、たしかに! 「結構です」っていろんなニュアンスにも読めますし……! そうですよね、我々としては、ふつうに仕事すればいいんですよね。

でもそうなってくると、「結局お金をどうやって回収するのか」という問題になってきそうですが……。現実問題こういうクライアントさんが素直にギャラを払ってくれるとは思えませんし。

河野:
そうですよね。こうなると、以前やった報酬未払いトラブルの話にかなり近づいてくるのではないかと思います。