全国的にガソリンスタンドの廃業が相次いでいる。需要の減少や法改正による採算性の悪化、後継者不足などが背景にあるようだ。地域のインフラとも言える給油所が年々減少し、地方では「SS(サービスステーション)過疎地」の問題も生じている。これからのガソリン事情はどうなるのか。

ピーク時の半数以下!現在のガソリンスタンド数

「久しぶりに田舎へ帰省したら、見慣れたガソリンスタンドが閉店していた」「旅行先で給油しようとしたが、なかなか見つからない」。そんな経験がある人も多いのではないか。近年のガソリンスタンド(給油所)数の推移を見てみる。

10年間で8,700件以上減少

資源エネルギー庁の統計によると、2011年度から2020年度までの10年間で全国の給油所数は8,700店余り減少した。

<給油所数の推移(全国)>
年度 給油所数 前年度からの減少数
2011年度 3万7,743店 1,034店減
2012年度 3万6,349店 1,394店減
2013年度 3万4,706店 1,643店減
2014年度 3万3,510店 1,196店減
2015年度 3万2,333店 1,177店減
2016年度 3万1,467店 866店減
2017年度 3万747店 720店減
2018年度 3万70店 677店減
2019年度 2万9,637店 433店減
2020年度 2万9,005店 632店減

給油所の数は1994年のピーク時には6万店を超えていた。しかしその後減少を続け、15年で半数以下に落ち込んだ。また、ガソリンスタンド経営者など揮発油販売業者の数は2011年度に1万9,140店だったが、2020年度には1万3,314店と7割以下に減っている。

廃業が止まらない背景は?

給油所の閉店・廃業が続く理由は1つではない。エネルギー需要や経営事情、人口構造などの様々な変化が背景にある。

進むSDGs、HV台頭でガソリン需要が減少

まず1つ目の理由は、ハイブリッド車などの増加によってガソリンの需要が減っていることだ。近年は地球環境や資源に対する意識の変化から、自動車メーカーは電気自動車やHV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)などの開発・販売に力を注いでいる。ガソリン車も改良が進み、燃費が良くなっている。

さらに政府は、2030年代半ばまでに新車販売を電気自動車のみとする方針を掲げている。世界的に「SDGs」「脱炭素化」の潮流にあり、ガソリン消費はますます減少する見込みだ。

消防法改正によるコスト増で廃業も

2011年2月に施行された改正消防法も影響している。法改正によって、給油所の地下にある貯蔵タンクが設置から40年以上経過した場合に、ガソリンの漏洩防止対策が義務付けられた。補助金を利用しても事業者の負担が高額になり、廃業に追い込まれたケースも多いという。

過疎・高齢化と後継者不足

特に地方では、人口減少や住民の高齢化によるユーザーの減少も問題となっている。ガソリンスタンドを経営しているのは、「石油元売り」と呼ばれる大手企業から石油製品を仕入れ、特約店などとして販売している中小企業がほとんどだ。上記のような需要減少・コスト増加という課題を抱え経営が難航する中、事業の後継者不足にも悩まされている。

どうなる?これからのガソリンスタンド経営

ガソリンスタンドはもはや存続の危機にあるとも言える。減少によってどのような影響が出ているのか、また今後どうなっていくのか。

「SS過疎地」問題、公営ガソリンスタンドも

資源エネルギー庁は、市町村内にガソリンスタンドが3カ所以下の自治体を「SS過疎地(給油所過疎地)」と定義している。2020年度末には全国の2割の自治体がSS過疎地隣、中には1カ所もない町村もある。

SS過疎地が多い地方では特に、移動手段が自家用車のみであったり、農業用機械や灯油を使用する機会が多かったりと、給油が生活に欠かせないケースも多い。住民にとってガソリンスタンドはインフラの1つと言え、相次ぐ廃業は大きな問題だ。

SS過疎地の課題に対応しようと、自治体が開く給油所「公営ガソリンスタンド」の設置や、地域住民が協力して事業を継続するなどの取り組みが行われている。

石油元売り大手も合併、時代に即した経営目指す

ガソリンの需要減少は石油元売りにも経営悪化などの影響を及ぼしている。ガソリン販売大手のJXホールディングスと東燃ゼネラル石油は2017年に、出光興産と昭和シェル石油は2019年にそれぞれ経営統合し、話題になった。

出光興産は2021年から新ブランド「アポロステーション」を開業している。3年で全国約6,400店の旧出光興産・昭和シェルの給油所をアポロステーションに切り替える方針だ。ガソリンだけではない燃料の供給に加え、地域ビジネスとの連動など、これからの時代に即したスタンド経営を目指しているという。

今後のガソリンスタンド事情は?

SDGsや脱炭素の傾向によりエネルギーの需要は変化し、ガソリンスタンドは従来のままではビジネスとしての成立は難しくなっている。昨今の世界情勢や原油の高騰も影響を及ぼすだろう。

しかしガソリンや給油所は、全国的に見ればまだまだ人々の生活に欠かすことはできないインフラだ。企業・事業者と国や自治体、そして住民・ユーザーが一体となって、これからの時代のガソリンスタンドのあり方が模索されている。

文・MONEY TIMES編集部

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