2022年初頭以降、米国株の大幅な下落が続いている。世界情勢や米国内のインフレ、金融政策が影響しているが米国市場の今後の動向はどうなっていくのだろうか。なかには、リーマン・ショックを超える危機が起こり得ると指摘する専門家もいる。本稿では、暴落の背景や見通しについて解説していく。

2022年初頭から続く米国株の下落

米国株は、2021年末まで堅調な推移を見せていたが2022年に入って大幅に下落した。米国の主要な株価指数の1つであるS&P500は、深刻な下落を表す「弱気相場」に迫ることもあり、2022年5月27日終了週は7週連続の下落。ナスダック総合指数も7週連続、NYダウは8週連続の下落だった。

「弱気相場」「調整相場」とは

弱気相場とは、株価が直近の高値から20%以上下落している期間を指す。直近の高値からの下落率10~20%の状態を「調整局面」と呼ぶ。弱気相場は、調整局面より長期化する傾向がありS&P500指数で最長の弱気相場は1929年末から始まった世界大恐慌のときで3年弱に及んだという。

FRBによる利上げが株価に影響

今回の暴落の背景には、FRB(米国連邦準備制度理事会)による金利の引き上げ(利上げ)がある。

利上げとは?なぜ行う?

利上げとは、景気が加熱や物価の継続的な上昇(インフレ)が起きた際、FRBや日本銀行など各国の中央銀行がそれらを抑制するために政策金利を引き上げることだ。利上げは、企業に設備投資を控えさせたり個人の消費を弱めたりする狙いがある。

金利が上がると企業が事業拡大などのために借り入れる利息が膨らみコストが増大。企業業績にマイナスの影響があり景気も減退すると予想されるため、一般的に「金利が上がると株価が下がる」と考えられている。

米国では急激なインフレ

米国では、2021年からインフレが加速している。世界的な新型コロナウイルス感染拡大によりサプライチェーンが混乱に陥ったためだ。さらに2022年2月に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻で原油などエネルギー資源が高騰し追い討ちをかけた。

FRBは、インフレに対応するため、2022年3月に0.25ポイント、同年5月には22年ぶりとなる0.5ポイントの利上げを実施。その結果、市場では景気の後退が懸念され株価が暴落した。

リーマン・ショックとの比較

米国株価の暴落というと2008年のリーマン・ショックを思い浮かべる人も多いだろう。そもそもリーマン・ショックとは、どのような現象だったのか、今回の下落との共通点や異なる点はあるのか。

リーマン・ショックとは

リーマン・ショックは、米国の投資銀行大手「リーマン・ブラザーズ」が倒産したことをきっかけに発生した100年に1度といわれた世界的な金融・経済危機だ。背景には「サブプライムローン」の不良債権化による金融危機とインフレによる世界的な消費悪化が重なったことがある。

2000年以降、米国が高金利住宅ローンであるサブプライムローンの融資基準を緩和し住宅市場が活発になった。投資家がサブプライムローンを組み入れた証券商品に投資しバブルも起きていた。しかし2007年以降、借り手の返済が滞り始め金融機関が次々と損失を出す事態となる。

リーマン・ブラザーズの負債総額は、史上最大級の6,000億米ドル超だった。リーマン・ショック時、NYダウは2008年9月から下落を続け2009年3月に底打ちとなる。株式市場が完全に回復したのは2013年だった。

現在の米国株市場との共通点や違いは?

専門家によると2022年現在の米国株市場には、リーマン・ショック直前と共通点がありリーマン・ショックを超える金融・経済危機が起こるとの指摘もある。米国株市場の現状とリーマン・ショックとの共通点としては、以下が挙げられる。

・世界的なインフレ懸念の高まり
・景気先行きの楽観視

リーマン・ショック前と同様に原油などの資源が高騰しインフレが起きている。また米国や日本の景気は、これから回復が見込まれるとして世界の景気先行きに楽観的な見方が広がっているようだ。

しかしリーマン・ショック時のような金融危機が現時点の欧米で起こっているわけではなく、現状はウクライナ問題などによる地政学的なリスクが大きく関与しているという相違点がある。

今後の米国市場はどうなる?

下落の続いていたS&P500、NYダウ、ナスダック総合株価指数は2022年5月末に上昇に転じた。しかし6月に入って反落するなど先の読めない状況だ。インフレの懸念やFRBによる金融引き締めへの警戒などは続いている。リーマン・ショックを超える大暴落や金融危機が起こらないとも言い切れない。

一方で中期的には景気の悪化が続いて株価の下落も想定されるが長期的には米国株の強さは維持されるとの見方もある。ロシアや中国の反応も見据えながら米国株市場の動向を注視したい。

文・MONEY TIMES編集部

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