新型コロナウイルスの感染拡大に打撃を受けて落ち込んでいた化粧品市場が、回復基調にある。政府によるマスク緩和方針でメイク需要が増えるという期待に加え、オンライン画面での「映え」やマスク対策など、コロナ禍で生まれた新たなニーズが好影響を与えているようだ。

コロナ禍の化粧品市場は?

経済産業省がまとめた生産動態統計(製品ごとの生産・出荷・消費などに関する調査)確報値によると、2022年1〜3月の化粧品販売金額は前年同期比5.1%増の3,267億円となった。化粧品市場はコロナ禍で落ち込んでいたが、上昇の兆しが見られる。

2020〜2021年は低迷、インバウンド需要も減少

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年、化粧品の出荷は前年2019年を大きく下回った。2021年もさらに落ち込み、市場は難航が続いていた。原因の1つは、コロナ禍で訪日外国人が減少したことによるインバウンド需要の激減がある。

1.コロナ禍で新たなニーズも?化粧品市場が回復基調に
(画像=出典:経済産業省)

さらにコロナ禍の影響で国内消費も落ち込んだ。経済産業省がまとめた家計調査では、2020年〜2021年にかけ、家計における仕上げ用化粧品(ファンデーションや口紅などメイクアップ用品)の消費支出額が減少した。一方で化粧水や乳液など基礎化粧品の支出額は横ばいだった。

2.コロナ禍で新たなニーズも?化粧品市場が回復基調に
(画像=出典:経済産業省)

外出自粛、マスク着用で「メイク減少」

背景にあるのは、緊急事態宣言の発令などによる外出自粛と常態化したマスクの着用だ。ファンデーションなどベースメイク用品や、チーク・口紅などポイントメイク用品の需要が特に影響を受けた。

美容やファッションを扱うライフスタイルメディア「ファストレンド」が女性200人に行ったアンケート(2021年8月実施)では、52%がコロナ禍によるマスク着用で「メイク時間が短くなった」と回答している。
(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000044800.html

回答理由では、チークや口紅はマスクに付くため使わないなど「最小限のメイクで済ませるようになったため」という声も多い。また、近所のコンビニに行くだけのような場合については、「マスクをしているのでノーメイクでもいいかなと思う」との回答もあり、ちょっとした外出ではメイクをしない人も増えているようだ。

出典:https://trend-research.jp/fastrend/101364
(運営会社:NEXAR https://www.nexer.co.jp

マスク緩和方針で消費拡大か

政府は2022年5月、屋外などでのマスク着用は必ずしも必要としない緩和方針を発表した。今後マスクを着用する機会が減れば、化粧の必要性も高まり、消費も拡大するだろう。コロナ禍以前に購入したきり、使わずに古くなってしまった化粧品の買い替えなどで需要が高まるチャンスもある。

新しい生活様式で消費者ニーズが変化

上記のように、コロナ禍の影響でメイクアップ用品を中心とする化粧品市場は一時的に打撃を受けた。しかし新型コロナウイルスの流行から2年以上が過ぎ、人々の生活様式や働き方が変わってくる中で、新たなニーズが生まれたようだ。

「落ちない」化粧品の需要高まる、アイメイクにも注目

外出時はマスク着用が当然となった昨今だが、飲食時など必要があってマスクを外すと鼻から下だけメイクが落ちていることがある。気温の高い季節や、仕事などで長時間マスク越しに発言した後などは特に気になってしまう。

多くの女性が抱くそんな悩みから、「落ちない」「付かない」化粧品のニーズが高まっている。「落ちにくい」タイプの商品はもちろん、従来型の基礎化粧品を落ちにくくするパウダー類や、口紅の色落ちを防止するリップコートなどをマスク対策として新たに買う消費者も多いだろう。

また、マスク着用時に唯一見える目元のメイクも重視されている。メーカー各社はカラーアイブロウなどアイメイク用品の種類や色展開のバリエーションを増やし、注力している。

メンズメイクも?オンライン画面の「映え」を重視

テレワークやオンライン授業、オンライン面接などが主流になり、画面上の「映え」も気になるところだ。画面映りの良さを謳った商品も注目される。さらに、スクリーン越しに自分の顔を見る機会が増えたことで、メンズメイクの需要も高まっているという。

メンズメイクのラインナップはBBクリームやコンシーラーに加え、ネイルやリップにも広がっている。販売店ではメンズコスメコーナーを設置したり、メーカーは商品のプロモーションに男女のイメージモデルを起用したりするなど、変化が見られる。

メイクアップ用品以外では、在宅時間の増加やマスク荒れの懸念から、美容パックやクリームなどスキンケア用品も消費が拡大している。

コロナ禍からの回復、今後に期待高まる

消費者にとって、「コロナ禍で化粧品が売れない」というのは当然のイメージだったかもしれない。実際に、自宅の化粧品の減りが少なくなり、季節の変わり目でも新色コスメに手が伸びなかったという人もいるだろう。

しかし、生活様式が変わっても何らかの形で工夫しておしゃれをしたいという人々の意識は変わらないのではないだろうか。2年近くの落ち込みを経験しながらも、新たなニーズやアイデアを発掘し回復基調に入った化粧品業界に期待したい。

文・MONEY TIMES編集部

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