もはや生活に欠かせないツールとなった「YouTube」で、株式投資に関する動画の配信者が増えている。2020年春のコロナ・ショック後の株価上昇、世界経済の混迷ぶりから投資への関心が高まったことが背景にあり、動画の情報を活用して資産1億円を達成する人も出てきている。

チャンネル登録者、50万人超の配信者も

YouTubeで「#株価」と検索すると、7,065本の動画と579件のチャンネル(2022年6月6日時点)が表示される。チャンネル登録者数は数百人、数千人規模の配信者が多いものの、中には数十万人クラスの人気ユーチューバーもいる。

それらユーチューバーを分類すると、①投資家として自身の分析や行動を個人で配信するタイプ②著名な投資家の発言を、別の個人が動画にまとめて配信するタイプ③アナリストが証券会社のチャンネルの出演者として自身の相場観を披露するタイプの3つがある。

①で有名なのは高橋ダン氏で、2022年6月6日時点のチャンネル登録者数は58万1,000人となる。高橋氏は米国の金融街ウォール街の元トレーダーであり、チャンネルでは国内外の株式から、コモディティ、為替に至るまで幅広い商品の動向や先行きに関する見方を紹介している。

また「株の買い時を考えるチャンネル」(登録者数26万3,000人)では、日本国内の各上場企業による開示情報や決算情報などを基に、現在の株価が「買い」なのか「売り」なのかを考察している。後述するが、視聴者が参加するライブ配信も定期開催している。

元日本経済新聞の記者、後藤達也氏のチャンネル登録者数は13万2,000人を数える。国内外の経済動向について分かりやすく解説している。2022年春に同社を退職してチャンネルを開設したばかりで、登録者数の伸びは目を見張るものがある。

現地の情報を手元に

著名な投資家の発信内容をまとめる②のチャンネルには「ばっちゃまの米国株」(登録者数13万7,000人)がある。このチャンネルは「じっちゃま」の愛称で呼ばれ、外資系金融機関を渡り歩いてきた広瀬隆雄氏が発信した内容を要約して紹介している。

広瀬氏は現在、米国に住んでおり、ばっちゃまの配信内容は米国株が基本となる。米国株はコロナ・ショック後の急回復に伴って各メディアで強さがクローズアップされ、これまで投資に関心のなかった層も注目している。そうした背景からチャンネルが人気を集めている。

同じく米国株に関するチャンネルとして、米国の著名投資家ジム・クレイマー氏による発言をまとめる「Makabeeの米国株【ジム・クレイマー応援ch】」がある。こちらはジム・クレイマー氏が現地のテレビで紹介した内容を紹介しており、「英語は分からないが現地の情報を仕入れたい」というニーズに応える。チャンネル登録者数は6万100人。

③としては、前述の「じっちゃま」や「ハッチ」こと岡元兵八郎氏らが有名である。特にじっちゃまは①のタイプとしても活躍している。

なぜYouTubeの情報収集が人気に?

株式の情報収集の手段としてYouTubeの人気が高まってきたのは、なぜか。

視聴者側のメリットには、多様な情報をタイムラグなく手に入れられる点が挙げられる。YouTubeでは多様な配信者が各得意分野に特化して情報を配信・編集している。静止画や株価チャートの画面に音声を重ねるだけでも動画が成り立つため、作り込む時間が短い。毎日のように更新する配信者もおり、タイムリーに情報を入手できる。

コロナ・ショックの暴落後、強い米国株に集中投資し、資産が1億円を超える「億り人」や、早期リタイア「FIRE」を目指す動きが強くなった。日本の新聞やテレビ、ラジオは国内銘柄が中心であるため、米国株に関する情報をタイムリーで得られるYouTubeが重宝されているとみられる。

配信者側からすると、株式市場は毎日大きく動くので、動画を作る「ネタ」が切れることはない。しかも、最初に動画配信に必要な機材を買ってしまえば、その後は動画を作る度に追加の出費をしなくてもよい。

さらに「株の買い時を考えるチャンネル」のように、視聴者も参加した配信で情報の共有を進めれば、チャンネルのコンテンツに厚みを持たせやすい。

リスナーがコメントを寄せるラジオはともかく、従来の新聞やテレビ、雑誌などは情報の流れが一方通行だった。YouTubeのように視聴者と双方向につながれば、熱心なファンを獲得しやすく、配信者自身の投資活動にもプラスの効果があり得る。

「鵜呑み」は避けるべき

株式投資にとって、いかにYouTubeが便利かを説明してきた。ただ、いくら信頼できそうな配信者であっても、その発言を鵜呑みにはしない方が良いかもしれない。

動画を見るだけでは、配信者がどんな意図を持って情報を出しているのかが分からない。動画の中で特定の商品を不自然に勧めてきたり、あやふやな情報に基づいて投資判断をしたりするシーンがあれば、何らかの悪意から偏った情報を流している可能性もゼロとは言えない。

有用なツールを使いこなす中で、最終的には視聴者自身が調べ、判断する作業が必要なのは間違いないだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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