3.ベーシックインカムが注目される理由
なぜ、ベーシックインカムに注目が集まるかというと、色々な背景や文脈がありますが、今の社会保障制度が持っている課題を解決してくれそうな感じするからですね。いくつか課題を挙げてみましょう。
① 支援が必要な人に届かないという問題。
生活保護の申請が大変とか、審査が厳しくて認められない場合があるとか、生活保護受給者おレッテルを貼られるのが嫌だから申請したくないとか、本当は困窮しているのに生活保護を受けていない人もいます。
また、雇用保険(失業保険という名前が分かりやすい人がいるかもしれません)は、解雇されたり、仕事を辞めた時に、次の仕事を探す間の生活を支えるお金がもらえる仕組みですが、雇用されている人が対象なので、自営業やフリーランスのような人は対象外です。また、雇われて働いている人の中でも週20時間以上働いている人が対象なので短時間勤務の人は対象外です。
② 制度の狭間の不公平問題
制度に入れるかどうか、実際にお金をもらえるかどうかについては、決まった条件があるわけですが、その条件にぎりぎり合う人とそうでない人の不公平感の問題です。
例えば、細かいことをいうと週21時間働いている人は雇用保険に入れますが、週19時間の人は入れないという問題。どちらも似たような人だけど不公平ではないかという話ですね。
また、もらえる金額が所得によって変わったり、高齢者の医療の自己負担(医療機関の窓口で自分で払う金額)も所得によって異なりますが、その所得を超えるか超えないかで、かなり損得が変わってくるので不公平ではないかという問題もあります。どこかで線を引く以上こういうことが起こります。
③ 不正受給の問題
生活保護で時々話題になりますが、本当は困っていないのにもらっている人がいるのではないか、制度を悪用している人がいるのではないか、それは不公平だという問題です。
④ 役所の仕事の非効率さの問題
一定の条件の人にお金を配るので、申請に来た人が条件に当てはまるかどうかチェックする仕事が役所に発生します。 ここに、役所のマンパワーが必要になりますし、審査する人によって判断が異なることもありえます。
ベーシックインカムは、無条件で一律のお金を配るので、こうした問題がなくなるように見えます。
そのほか、個人の生き方に対して中立的だとか、働く人がお金にしばられにくくなるのでより好きなことがやりやすいとか、そういう価値があることも指摘されています。
4.ベーシックインカムに必要なお金とは?
さて、ベーシックインカムをもらえるとしたらいくらがよいでしょうか? 働けなくなって収入がなくなった時など、何かあった時に困らない金額となると、あんまり少ないと意味がないですよね。
ここでは、仮に1人当たり年間100万円としてみましょう。 実際に、そういう金額を前提としたベーシックインカムに関する国会質問もありました。 月83,000円、困りごとがあってもなくても常にもらえる計算ですね。
さて、全国民に1人当たり年間100万円配るには、お金はいくらでしょうか?
1億2000万人に配るとすると、120兆円になります。
1人当たり年間100万円ですから、夫婦2人だと年間200万円。
夫婦2人に子ども2人の世帯だと400万円。
ずいぶんと家計が助けられそうな感じがします。