野村総合研究所によると、日本の富裕層・超富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円に達するという(2020年12月の発表内容)。そうした富裕層の資産運用の方針や生活における意識について紹介しよう。

日本の富裕層・超富裕層は133万世帯

野村総合研究所では、世帯で保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」をもとに、総世帯を5つの階層に分類。各階層の世帯数と資産保有額を推計したものが次となる。

マーケットの分類 世帯の純金融
資産保有額
世帯数 階層ごとの純金融
保有額資産の合計
超富裕層 5億円以上 8万7,000世帯 97兆円
富裕層 1億円以上~
5億円未満
124万世帯 236兆円
準富裕層 5,000万円~
1億円未満
341万8,000世帯 255兆円
アッパーマス層 3,000万円~
5,000万円未満
712万1,000世帯 310兆円
マス層 3,000万円未満 4,215万7,000世帯 656兆円

結果を見ると、富裕層以上の層の合計では世帯数が約133万、純金融資産保有額の合計は333兆円となっている。富裕層以上の世帯数と純金融資産総額は安倍政権の経済政策「アベノミクス」が始まった2013年以降、ずっと増加を続けており、富裕層にとってはメリットのある政策であったことがうかがえる。

この調査では全世帯数の合計が5,402万3,000世帯となっており、そこから算出すると、同調査における富裕層以上の133万世帯は約2.5%にあたる。

コロナ禍で運用リスク回避傾向が強まる

金融資産を運用(投資)している富裕層にとっては長らく追い風が続いていたが、その状況もコロナ禍によって大きく揺らいでいる。

同調査では、企業のオーナー経営者における富裕層と超富裕層を対象に、「コロナ禍での個人資産の管理・運用の考え方の変化」を質問。結果、「複雑でわかりにくい商品よりも、シンプルでわかりやすい商品を好むようになった」が50%、「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを、以前よりも気にするようになった」が46%となった。

いずれも、金融商品の運用において、リスク回避傾向が強まってきていることを表すものと考えていいだろう。

そのほか、「経済の先行きや、自分が管理・運用する資産に関して、積極的に情報収集や勉強をするようになった」(47%)、「自分の考えだけで資産の管理・運用をするのは限界があると感じた」(46%)、「資産の管理・運用に関するアドバイスをしてもらえる信頼できる専門家が必要だと思った」(42%)といった回答も多かった。

これらの回答から、コロナ禍において激動する経済について、今後の先読みに自身を持てない人が多いことがうかがえる。

富裕層にも広がる節約志向

さらに、同じく企業のオーナー経営者における富裕層と超富裕層に「コロナ禍での消費や生活の変化」について聞いたところ、約3分の2が「健康や体力増進に関する意識が強まった」と回答。さらに、「家族との会話やコミュニケーションが増えた」(51%)、「本を読む時間が増えた」(47%)など、生活における時間の使い方に変化があったという答えも多かった。

また、「高額な商品やサービスの利用を控えるようになった」(39%)という回答も多くあり、富裕層にもまた、消費を控える傾向が現れていることが見てとれる。コロナ禍は庶民だけでなく、富裕層の生活意識も確実に変化させているようだ。

かいま見える「お金持ち」の世界

富裕層・超富裕層にあたる人々は、個人的に縁がなければどういう生活をしているのか想像がつきにくい。野村総合研究所の同調査は、保有金融資産を中心にしたいくつかの切り口で、庶民からは見えにくい「お金持ち」の世界をかいま見せてくれる。

そこから見えてくるのは、やはり富裕層たちも、庶民とは違うレベルとはいえコロナ禍による生活の変化を懸念しているという姿だ。それに対して打てる選択肢が多いという点では庶民とは異なるが、同じ人間であることを実感できる調査結果となっている。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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