法人の税金対策、今後の主流はアメリカ不動産?

法人節税市場は、年間約3兆円。その中の8割ほどが、航空機オペレーティングリースと保険で行われている。しかし、両者ともに近年、コロナウイルスなどによる航空機業界リスクや、度重なる税制改正により、厳しい状況を強いられている。

例えば、航空機リースの場合、以前は融資を引いた分も償却費として損益通算が認められていたが、税制改正により、現在では現金で入れた部分のみしか通算できない。

また、特に新型コロナウイルスの影響で、この航空機オペレーティングリース業界にも多大なリスクが起きている。実際に、2020年4月末時点でコロナの影響により既に4社の航空会社が倒産している。ヨーロッパ最大級のLLC航空会社フライビーが3月6日に、またオーストラリアの航空第2位のヴァージンオーストラリアも4月21日付けで破産宣告をしている。

航空会社は飛行機の約半分を自社保有、もう半分をリースしている。なので、航空会社の傾きは航空機オペレーティングリースのリース料不払いリスクや、売却時の価格下落リスク、流動性の低下リスクに直結する。過去にはJALの破綻などによる多くの節税対策で、航空機オペレーティングリースをしていた投資家が数百億円単位の損失を被った例もある。

保険の場合は、そもそも保険加入するからといって融資を引くことができないことに加え、いわゆる全損に税制改正が入り、全額損金となるのは「最高解約返戻率が50%以下のもの」のみとなり、解約返礼率が高いものは損金になる部分が段階的に制限されていくこととなってしまった。

そこで現在は節税効果としてはイマイチである「半損」となり、また全従業員を対象とすることが条件となり、実際に利用している法人での節税メリットの希薄化と厳しい条件が重なってしまった。

離職率が高い会社では、短期間で辞める社員については非常に低い返戻金となることで、単純に持ち出しになっているケースもある。また、全員加入なので、役員のみがピンポイントで入る保険に比べると出口対策が難しく、節税より福利厚生的な意味合いが色濃いだろう。

それぞれの商品を比較をしてみよう!

航空機リースの場合

【航空機リース】
・年間利回りはゼロ
・キャピタルゲインは年間0.3%程度
・融資は受けられない
・通常10年間保有(現金塩漬け)

利回りがゼロな理由は、100億円の航空機の場合、50億円は融資、残りの50億円を投資家からエクイティという形で募集するからである。航空機からの利回りは、この融資の返済に全て当てられてしまい、投資家には返ってこない仕組みになっている。

キャピタルゲインは、通常10年間のリースでおよそ2~4%だ。年間にすると、年利はたったの0.3%。キャピタルゲインを狙っていないという方もいるとは思うが、2019年の日本のインフレ率0.99%にも負けてしまう数字なのだ。

10億円投資していた場合、その差額である約0.7%を掛けると、1年につき700万円、10年間で7,000万円も損を出していることになるのだ。節税を目的としているのに10年で税率を7%上げてしまっているようなものである。

節税するためにも、インカムゲイン、キャピタルゲインを総合的に判断しなければ、本来の目的である節税以上の損失を被る場合もある。

航空機リースの場合、買ってから10年間はリース期間として、投資したお金が返ってこない。減価償却ができる期間は2年で、最初の年に約80%、翌年に20%償却する。つまりその後8年間は償却ができないのに現金が塩漬けになってしまうのだ。

また融資に関しても、前途の通り、融資を引いた部分は損益通算できないようになってしまった。なので、現金で出した額部分しか通算できず、レバレッジが効かないので非効率である。

保険の場合

【保険】
・年間利回りはゼロ
・キャピタルゲインは基本マイナス
・融資は受けられず、現金で出した分の半分の額を損金として計上する
・保有期間は半永久退職するまで(現金塩漬け)

保険においては、利益の圧縮希望額が毎年1億円だった場合、半損なので「毎年」2億円入れる必要がある。資金効率が悪く、基本退職するまで現金が塩漬けになってしまう。

もちろん保険として安心、社員への福利厚生効果等もあるとは思うが、節税が目的ならば今一度考え直してみるのも策である。

アメリカ不動産の場合

【アメリカ不動産】

年間ネット利回り5%
キャピタルゲイン年間2~3% = 5年で10~15%
融資可能で、その分も償却費として損益通算可能(節税にもレバレッジが掛けられる)
保有期間4年、4年間償却なので、4年で償却終わったら5年目に売り、そのお金で次の物件を買えば良い(資金効率が高い)

利回りは、エリアにもよるが年利5%ほどである。

よく、「節税というのは、あくまでも税金の繰越ではないか」という人がいる。航空機も保険も基本その通りであるし、法人節税に関してはそうなってしまう。

しかし、アメリカ不動産の場合、毎年家賃収入という利回りが年間約5%ある。例えば、5%で6年間物件を保有していたら30%となり、税金の繰延をしている間に、インカムゲインで繰越した法人税分を稼いでおくことができる。