税制改正後も「法人は」損益通算が可能
とても短い4年間で減価償却できるアメリカ不動産を個人で保有し、日本の個人所得にぶつけて節税する税制に改正が入ってしまい、大きな物議を醸した(2020年12月31日までは可能)。しかし、法人では未だ可能である。
知らない方のために説明すると、日本の税制で「築22年以上の木造物件」は、とても短い4年間で減価償却することができる。それをアメリカ不動産で適用することで更に大きな減価償却費を出すことができるようになり、それを日本の法人の利益にぶつけるというものだ。
なぜアメリカ不動産のほうが効果が大きいかというと、建物の価値の割合が影響している。
不動産は、土地と建物により構成されており、減価償却ができるのは建物だけだ。不動産価格に対し、建物割合分を4年間で償却する。日本は、狭い面積に多くの人が住んでいることもあり、土地の価格が高く、建物が安い傾向にある。建物比率は20%程度だ。
対してアメリカは、日本の25倍の面積に、日本の2.5倍ほどの人口しか住んでいないため、土地が安く、地域や物件によって異なるが建物比率は80%程度となる。
建物の価値の割合が大きいほど、同じ価格でも、より大きな節税メリットを享受できるのだ。
例えば1億円の物件の場合、日本の場合は20%である2,000万円を4年で償却するため、年間500万円の減価償却費となる。対してアメリカは80%である8,000万円を4年で償却するので、年間2,000万円もの償却費を出すことができる。
2,000万円に法人実効税率の約35%を掛けた700万円を節税することができる。つまり、節税効果だけで年利7%の効果ともいえる(700万円 ÷ 1億円)。それを、定額法により4年間同額分を節税できる。これは、4年間でほぼ確実に28%のリターン(2,800万円)を手にすることができるということだ。
また、日本においては、耐用年数を過ぎた建物の価値がほぼゼロになってしまうこと、融資は基本耐用年数分の期間しか借りることができないことから、実際は、ほぼこのスキームを使うことができない。一方アメリカの場合、不動産の建物比率分は半永久的に残るため、このスキームを使うことができる。
アメリカ不動産は、建物価値が「半永久的に」残る
アメリカでは、建物が古くなっても、物件価値(価格)や家賃が下がることはなく、むしろゆっくり上がってゆく。これには2つ理由がある。
ひとつは人口増加だ。アメリカでは毎年約1%ずつ人口が増加している。総人口が約3億人なので年間約300万人である。大阪市の人口が約270万人なので、アメリカの内に毎年大阪市ができているようなものだ。
東南アジアと聞くと、人口増加が激しく経済成長しているイメージを持つ人が多いだろう。しかし実際のところ、東南アジアの平均人口増加率は、アメリカと同じ約1%だ。
つまり、アメリカは先進国にも関わらず、発展途上国並みに人口が増加し続けている、最強国なのだ。これを国家戦略として不動産価値の安定した増加、GDPの成長のためにコントロールしているのだ。
不動産価値や家賃は、基本的に需給バランスによって決まる。人口が増えれば増えるほど、不動産の需要も上がり価値が上がるのは当然だろう。
逆に、日本は、人口が年間約50万近く減少している。毎年マイナス0.4%だ。総務省のデータでは、2050年には総人口が1億人を下回るともいわれている。また日本の空室率は年々増加しており、総務省が5年に1度発表する「住宅・土地統計調査」の最新版・平成30年のデータでは約20%となっている。
ちなみにアメリカ合衆国商務省国勢調査局のデータによると、アメリカの空室率は2019年6.4%、2018年から0.4%低くなっている。