アメリカは、国家戦略として不動産価値を上げている
ふたつめはゾーニングである。日本は、「スクラップアンドビルド」といって新しい建物がすぐ建ち、古い物件の価値が下がっていく不動産の文化がある。
一方アメリカの場合、国がゾーニングという法律を厳しく設けており、新しい建物を簡単に建てられないようになっている。新しい建物を建てるだけでなく、2LDKを3LDKに変えるだけでも許可を取るのに数年を要し、また取れないことも多い。
これは「不動産」における、資産価値の下落リスクを起こさせないためだ。不動産に、毎年価値が上がっていくというメリットがなければ、国民は資産として不動産を持たなくなってしまう。
そのためアメリカには築22年どころか、100年を超える物件も多くある。年間の不動産売買件数のうち日本は新築が80%、アメリカは5%というデータもある。
このゾーニングにより、既に建っている建物をメンテナンスしながら住むという文化が国家戦略として根付いている。そのため、新しい建築物のほうが高く、古い建築物が安いという概念がないのだ。
極端な話、全く同じ間取りの、新築と築100年の築古物件が同じエリアで真隣に並んでいたとしても、物件価格や家賃はほぼ変わらない。
アメリカには「夢のマイホーム文化」がない!
またアメリカでは平均して、7年に1度引越しをする文化がある。例えば、77歳まで生きるとなると、人生で10回は引っ越すことになる。
一方、日本には「夢のマイホーム文化」があり、建てた家に生涯住み続けるケースが多い。よって、住宅用の不動産流動性がとても低いのだ。
アメリカでは、結婚したら2LDK、子供が1人できたら3LDK、2人目ができたら4LDK、子供が巣立ったら1LDKと、家族構成によって、どんどん引越しをするのが普通だ。一生のうち10回もマイホームを買うことはできないので、中古の家を転々とする文化となっている。
これら2つの理由から、日本のように古くなっていくことで価値が下落することなく、人口増加やゾーニングによって価値が上昇しつづけるのである。