目的意識の欠如
ケインズは「『目的意識』とは、自分の行動について、それ自体の質や周囲に与える短期的な影響よりも、はるかな将来に生み出す結果に強い関心をもつこと」とした(同上:216)。
この100年前にいわれた「自分の行動に対する関心を遠い将来へと押し広げていく」(同上:216)重要性は現代日本国民の全体でも共有したいが、その筆頭は政治家にあるというのがこの連載「政治家の基礎力」の趣旨でもある。
孫の世代を見据えた戦略
①に関して日本ではもはや「人口増加」の夢は消えて、残されたのは「少子化する高齢社会」への科学的成果に基づく対応が継続されることにより、「孫の世代の可能性」を膨らませることだけである。
②についてはロシアによるウクライナ侵略戦争に無力だった国連改革こそが、「孫の世代の可能性」を広げる道になる。具体的には、たとえば国連分担金率で常に上位を占めながら「常任理事国」ではない日独伊が、どこまでリーダーシップが発揮できるか。
③は研究・教育成果を出している大学や研究機関の集中的再編を柱として、恒常的研究費と人的資源の再配置の見直しが急務であり、優れた学術研究者輩出のための環境整備こそが政治家の義務でもある。
行動変容ステージモデル
さて、コロナウイルス感染拡大以前から、厚生労働省の「e-ヘルスネット」では行動変容ステージモデルが紹介されてきた(2022年6月1日閲覧)。
公衆衛生学の禁煙研究から得られたこの変容モデルでは、ステージを①無関心期(6か月以内に行動を変えようと思っていない)、②関心期(6か月以内に行動を変えようと思っている)、③準備期(1か月以内に行動を変えようと思っている)、④実行期(行動を変えて6カ月未満である)、⑤維持期(行動を変えて6カ月以上である)に分けて、それぞれの状態が説明されていて、全体像は図1のようになる注2)。