ブリーダーに必要なスキル
ブリーダーになるには、専門的なスキル以外にコミュニケーション力や営業力があることも重要です。それぞれどんな場面で必要となるのか、詳細を解説します。
1.ブリーダーとしての幅広い知識と技術
ブリーダーに必要な1つ目のスキルは、ブリーダーとしての幅広い知識と技術です。
動物の交配は非常に複雑です。遺伝学・生理学などに基づき、適切な方法で行う必要があります。母犬と父犬の組み合わせによっては遺伝的リスクが発生する可能性もあるため、幅広い専門知識がなければ望ましいタイミングでの交配は行えません。
専門学校で身に付けた知識以上に、実務経験での知識と技術が重要です。
2.コミュニケーション力
ブリーダーに必要な2つ目のスキルは、コミュニケーション力です。
会社員、開業に関係なく、コミュニケーションは必要なスキル。動物を販売する際には、動物の性格や親のこと、必要なしつけや食事内容などを伝えるのがブリーダーの役割です。それらを理解したうえで引き取ってもらうのと、そうではないまま引き取ってもらうのでは、動物の健康状態や寿命に与える影響が大きいからです。
伝えるべきことを伝えるコミュニケーション能力は必須。円滑にやりとりを行うことができれば、業務もスムーズに進みます。
3.営業力
ブリーダーに必要な3つ目のスキルは、営業力です。
1匹の動物を飼育するのには、食事や健康管理、しつけなど膨大なお金がかかります。売れればよいというわけではないものの、職業として成り立たせるためには育てた動物を引き取ってくれるペットショップとの関係性や、個人顧客の新規開拓が必要です。
そのためには、営業力があることも重要。金額の交渉をしたり、長期的な契約を結んだりと、能動的に動くことが求められます。
ブリーダーに必要な資格
ブリーダーになるためには、資格が必要なのか気になる人も多いでしょう。次に、資格について確認していきましょう。
ブリーダーになるためには資格は必須ではない
ブリーダーになるために必須の資格はありません。資格を有していなくてもブリーダーを名乗ることができるので、未経験から始めやすい職業といえます。
ただし、ブリーダーはいぬや猫の命を扱う仕事です。責任感が大きいため、ブリーダーとしての専門的な知識や技術を有している必要があります。独学で学ぶことは難しいので、ブリーダーの多くは専門学校を修了し、民間資格も取得しています。
ブリーダーとして開業するためには「第一種動物取扱業」の登録が必要
ブリーダーとして開業するためには、「第一種動物取扱業」の登録が必要です。登録するには、事業所ごとに常勤職員のなかから動物取扱責任者を配置することが求められます。第一種動物取扱業は自らを動物取扱責任者にすることができるので、まずは動物取扱責任者になることを目指しましょう。
参考:福岡県「第一種動物取扱業を営むには登録が必要です」
動物取扱責任者
「動物取扱責任者」は、「第一種動物取扱業」の登録をする際に必要な要件です。独立開業を目指す際はまず申請を行いましょう。一般的には、第一種動物取扱業者から選任されて「動物取扱責任者」になることができますが、第一種動物取扱業者自らを動物取扱責任者にすることも可能です。
「動物取扱責任者」になるには、以下のいずれかの要件を満たしていることが必須です。
- 獣医師の免許を取得している
- 愛玩動物看護師の免許を取得している
- 指定の実務経験・飼育経験年数を満たし、かつ1年間以上教育する学校を卒業もしくは資格を有している
さらに、上記の条件を満たしたうえで、動物取扱責任者研修を受講することが条件。飼育経験・教育機関については事前に確認、実務経験・資格は認められる種別が多いため、動物愛護相談センター業務担当に問い合わせしてから申請を進めましょう。
参考:東京都動物愛護相談センター「動物取扱責任者等」
JKC愛犬飼育管理士
「JKC愛犬飼育管理士」は、一般社団法人ジャパン ケネル クラブが実施している民間資格です。動物取扱業の登録要件のひとつとして認定されているのが特徴です。
資格を取得するには、まず動物の愛護及び管理に関する法律に基づいて作成したテキストを使用した講習会に参加。その後、筆記試験に合格すれば資格を得られます。
講習会および筆記試験は、満18歳の方であれば参加が可能。大阪・仙台・岡山・京都・札幌・名古屋・沖縄と全国で実施されているため、参加しやすいのも魅力です。合格率は8〜9割と高く、初学者にも向いています。
参考:一般社団法人ジャパン ケネル クラブ「愛犬飼育管理士制度について・講習会・試験情報」
参考:一般社団法人ジャパン ケネル クラブ「愛犬飼育管理士でのよくある質問」
ペット繁殖指導員
「ペット繁殖指導員」は、一般社団法人 日本ペット技能検定協会が実施している民間資格です。動物の命を扱ううえで、専門的な知識と勘を有した指導員の存在は必要不可欠。「ペット繁殖指導員」は、そうした役割を担える人材を育成するための資格です。
同協会指定のカリキュラムを修了することで、受験資格を得られます。年齢制限は設けられていないため、自身のタイミングで受験が可能。試験は筆記のみです。合格後、ライセンス交付申請料として14,000円を支払うことで、「ペット繁殖指導員」として登録されます。
参考:一般社団法人 日本ペット技能検定協会「ペット繁殖指導員」
愛玩動物飼養管理士
「愛玩動物飼養管理士」は、公益社団法人日本愛玩動物協会が実施している資格。「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき、ペットの適切な飼養管理やしつけの知識・技能を有した人材を養成する目的で設置されました。
「愛玩動物飼養管理士」の資格は、動物取扱責任者の資格要件のひとつに当てはまります。過去の受講者は多岐にわたり、さまざまな方が資格を取得。ペット業界をはじめ、介護・福祉業界などで、幅広く資格が活用されています。
満15歳以上の方であれば、誰でも受験が可能。教材をもとにオンライン方式で受講し、認定試験に合格することで資格を得られます。春期・夏期と年に2回試験があり、試験地は全国なので、受験しやすいのも魅力です。
合格率は非常に高く、2021年11月実施の認定試験では、1級の受験者1757名のうち、1426名が合格。2級は9468名の受験者のうち、8293名が合格しています。自宅で自分のペースを守りながら何らかの資格取得を目指したい方にぴったりです。
参考:公益社団法人日本愛玩動物協会「愛玩動物飼養管理士について」
参考:公益社団法人日本愛玩動物協会「2021(令和3)年度 愛玩動物飼養管理士認定試験(11月試験) 結果について」
愛玩動物看護師
「愛玩動物看護師」は、農林水産省が実施する国家資格。適正な獣医療を提供するのを目的に制度が作られました。
受験区分は3つに分けられており、通常ルートに加え、既卒者・在学者ルートと現任者ルートがあります。通常ルートには、愛玩動物看護師を養成する大学や指定の養成所で指定科目を修了し、卒業した方が該当。卒業後すぐに試験を受けられます。
既卒者・在学者ルートと現任者ルートの方は、国家試験の前に講習会の受講が必須。さらに、現任者ルートの場合は講習会後に予備試験を合格する必要があり、その後国家試験を受けられます。講習会の総学習時間はルートによって異なり、既卒者・在学者の場合は26時間、現任者の場合は30時間です。
「愛玩動物看護師」は、令和元年に国家資格になったばかり。そのため、公式が発表している合格率のデータはありません。ただし、国家資格は通常難易度が高いもの。ほかの民間資格に比べて、「愛玩動物看護師」の資格は取得が難しいと覚えておきましょう。
参考:農林水産省「愛玩動物看護師」