目次
建築士に必要な資格
建築士の将来性

建築士に必要な資格

建築士は建築士法に定められた建築士資格を保有していなければ、設計や工事監理などの業務を行うことはできません。資格には一級・二級・木造の3種類があり、それぞれ試験難易度や受験要件が異なります。資格取得を検討している方に向けて、各資格の難易度と要件を解説します。

一級建築士

一級建築士の資格は、3種類のなかでも上級資格。建築物の規模にかかわらず設計や工事監理に携わることができるのが特徴です。

例えば、高さが13m又は軒の高さが9mを超える建築物や鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が300㎡を超える建築物は、一級建築士が設計・工事監理を行わなければならないと決められています。

参考:一般社団法人東京建築士会「建築士とは」

一級建築士の難易度

一級建築士の試験は非常に難易度が高いことで知られています。平成29〜令和3年度の合格率は10%前後〜12%前後を記録しており、国家資格のなかでも資格取得が難しいことがわかります。

  • 平成29年度:10.8%
  • 平成30年度:12.5%
  • 令和元年度:12.0%
  • 令和2年度:10.6%
  • 令和3年度:9.9%

試験は一次が学科、二次が製図と分かれており、特に合格率が低いのが一次の学科試験です。平成29〜令和3年度の合格率は15〜22%台と低く、製図が35〜41%台であることを考えるとその難しさがわかります。

参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「試験結果」

一級建築士を取得するための要件

一級建築士を取得するためには、以下の受験要件のうち、ひとつを満たす必要があります。

  • 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
  • 二級建築士
  • 建築設備士
  • その他国土交通大臣が特に認める者

なお、令和2年以前には上記の要件に加え、2年間の実務経験が必要とされていましたが、建築士法の改正により、現在では新しい建築士制度が適用されています。

実務経験は免許登録要件に変更となり、実務経験なしで試験を受けることが可能。試験の前後にかかわらず、免許登録までに2年間の実務経験を積めば、一級建築士の資格を取得できます。

参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」

参考:国土交通省 住宅局建築指導課「建築士試験パンフ」

二級建築士

二級建築士は、一級建築士に比べると試験の難易度がやや低いため、建築士としての登録者の人数も約2倍。令和2年度の時点で一級建築士は約37万人ですが、二級建築士は約77万人が登録しています。

鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が30㎡を超え300㎡以内の建築物を扱う場合に、二級建築士もしくは一級建築士が設計・工事監理を行わなければならないと決められています。

参考:国土交通省「建築士登録状況(令和2年4月1日時点)」

二級建築士の難易度

二級建築士の試験は、一級建築士の試験に比べればやや難易度は低め。試験の合格率は例年20前半を推移しています。また、一級建築士の資格取得のための勉強に約20年分の過去問を解く必要があるのに対し、二級建築士の場合は約10年分程度でも合格は可能といわれています。

参考:総合資格学院「二級建築士 試験の合格率」

参考:1級建築士ネット講座「二級建築士」

二級建築士を取得するための要件

二級建築士の資格を取得するには、以下の要件のどれかひとつを満たす必要があります。

  • 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者
  • 建築設備士
  • その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等)
  • 建築に関する学歴なし

ただし、各要件によって必要とされる実務経験年数が異なるのは注意点。指定科目を修めて卒業した方と建築設備士は経験の有無は問われませんが、建築に関する学歴がない場合、7年以上の実務経験が必要とされます。

そのため、早い段階で二級建築士の資格取得を目指すことを決めた場合は、4年制大学や短期大学などで指定科目を修めるルートを選ぶのがおすすめです。

参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」

木造建築士

木造建築士は、3つの資格のなかでもっとも難易度が低いものの、資格保有者が少ないのが特徴。主に木造建築物のみを扱うため業務の幅が狭くなってしまうため、多くの方は一級もしくは二級建築士の資格を取得することが多いようです。

令和2年時点の登録者数は、約1万8千人。2階建までの木造建築物で延べ面積が100㎡を超え300㎡以内の建築物の設計・工事監理を行う際に、木造建築士の存在が必要となります。

参考:国土交通省「建築士登録状況(令和2年4月1日時点)」

木造建築士の難易度

木造建築士の試験難易度は、一級建築士と二級建築士の試験に比べて大幅に合格率があがります。平成29〜令和3年度の合格率は30〜40%台を推移しており、比較的取得しやすいのが特徴です。

二級建築士の受験要件同様、4年制大学や短期大学で指定科目を修めていれば試験を受けられるため、合格者の属性は学生が大半。近年は木造建築のニーズも高まっているため、まずは木造建築士の資格取得を目指すことも検討してみるとよいでしょう。

参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「試験結果」

参考:国土交通省「木造住宅への国民ニーズが高い」

木造建築士を取得するための要件

木造建築士の資格を取得するための要件は、二級建築士資格と同様です。

  • 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者
  • 建築設備士
  • その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等)
  • 建築に関する学歴なし

上記のいずれかの要件を満たしていれば受験が可能です。

参考:公益財団法人 建築技術教育普及センター「受験資格」

建築士の将来性

建築士は将来性のある職業のひとつです。2020年はコロナによる影響で建築需要が落ち込んでいましたが、2021年には前年比7.5%増。やや上昇傾向にあります。

また、ここ10年の間で一級建築士試験の受験者数が減少していることも、建築士の将来性があるといわれている理由のひとつ。建築事務所に所属する約14万人のうち、全体の約29%が60代となっており、あと10年の間でその約29%の層が現役を引退してしまいます。

30代以下の割合は約1%と非常に少なく、設計士不足が騒がれているのが現状。そのため、現在中核となっている60代が引退したあとには、現在の20〜30代の建築士の需要が高まると考えられているのです。このことから、建築士は将来性のある職業といわれています。

参考:日経XTECH「コロナ禍で二分化する建築需要 22年も「K字形市場」で推移か」

参考:いよいよ始動する「新建築士試験」、規制緩和で受験者数はどれだけ増える?